『顔 ―かお―』
英題:The Ugly
監督:ヨン・サンホ
製作:2025年/韓国
上映時間:103分


8月28日公開の韓国映画。
あまり公開規模が広くない印象だけれど、監督は『新感染 ファイナル・エクスプレス』(観てないけど気になってる)のヨン・サンホ。

Screenshot_20260908-184211~2

映画は、盲目の篆刻作家(ハンコとか作る)ヨンギュが、奇跡の人としてテレビ取材を受けている場面から始まる。
彼が男手一つで育て上げた息子のドンファンが傍に付き従い、撮影は進む。
という所から、40年前に失踪した母・ヨンヒの遺体が発見されたと警察から連絡が入り、物語は一気にミステリーの色を帯びる。冒頭5分くらいの出来事にがっちり心を掴まれる。
父からは天涯孤独と聞いていた母の葬儀には母の親族が訪れ、「顔が化け物のように醜かった」と母について語る。家族に疎まれ、姿を消したのだ、と。
様々な違和感が仕掛けられていて、「え?どういうこと?」と次々に気になる事が増えていく。
テレビ番組のプロデューサー、キム・スジンは「絶対に面白い」と嫌な感じの興味を持ち、番組の方向性を変えてヨンヒの死の真相を探り始める。取材に気乗りしない様子を見せながらも、母の死の真相が気になるドンファンも同行し、ヨンヒの過去を知る者たちへインタビューを始める…。

というストーリー。
物語が進む度に「証言1」といった感じで区切りが設けられ、そこから描き出される過去と現在、という構成が芥川龍之介の『藪の中』的で面白い。
醜さから「便所紙」というあだ名で呼ばれていたというヨンヒへの周りの目。職場での事件。
そんな中ヨンヒから出る「悪い人がいい人のふりをしていたらそれはいい人なの?」という言葉。
正しさ・美しさ、汚さ・醜さ。
そんな対立構造が常に描かれる、救いのない感じの映像のタッチ。特に、過去が描かれるシーンでの空気の重さは異常。
美にとりわけ拘る父と、醜いと世間が言う母。美しさとは…とずっしり重たい気持ちになって劇場を出る事になる、私が好きな韓国映画成分がギッチリ詰まった一作でした。最悪に最悪が積み重なっていって出現する闇の塊。
英題の"The Ugly"というのが、ザクッとささる。

シェイクスピアのマクベスの一節
「きれいはきたない、きたないはきれい」を思い起こしました。