『本なら売るほど』
著:児島青
2025年/KADOKAWAハルタコミックス


この漫画、とても良い。
古本屋の青年店主が主人公。
毎話ごとにちょっとクローズアップされる本があって、そこに絡めた物語が展開していく構成。おしゃれ。
へぇ、こんな本があるんだ、と幅広く色んな本の存在を教えてくれる上質なエッセイのような要素もあり、本と人との関わりはこんな形もあるんだなと気付きもあり。
古本屋の本、当然以前の持ち主がいたわけで、その持ち主と本との関わり、未来の持ち主との出会い、棚の一冊一冊にそんな物語があるんだなと思うと感慨深い事この上ない。
時間の堆積。思いが詰まった書棚。古本屋さんの景色がガラッと変わって見える一冊です。
電子書籍は本当に便利で収納も考えなくて済みますけど、本という物体、そこに生じる時間、こればっかりは代え難い魅力があるよなぁと、思ってしまいますね。
私も昔はよく、読んだ漫画を古本屋に持っていく、なんてことがありましたが。その漫画をまた読みたくなって今買い戻してみたり。
色んな人の手に渡り、物語を紡ぎながら、本は旅をしているんですねぇ。
私が売った本たちは、今どんな所にいるんだろうか。
いつか古本屋で「おや、この本はひょっとしてあの時の…」みたいな体験をする日が来ないとも限らないですからね。
そんな事も考えさせられる、ロマンに満ちた漫画です。
今は3巻まで出てます。
一話一話が宝物のように濃いので、じっくりじっくり味わうもよし、夢中で読み進めるもよし。素敵漫画。
思わず古本屋に立ち寄りたくなる一冊でした。


【各話リスト・メモ】

PXL_20260324_074301551~2

1巻

第1話本を葬送る
・亡くなった方の本の買取の話
『やし酒飲み』エイモス・チュツオーラ

第2話コーヒーにこんぺいとう
・買い取った本から出てきた忘れ物を届ける話。好きなものイチゴ珈琲花美人懐手して宇宙見物『寺田寅彦全集』

第3話アヴェ・マリア
・古本屋と淡い恋。
『恋人たちの森』森茉莉

第4話201号室入居者あり
・アパートを本棚でいっぱいにしたい話。見る専門。
『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー

第5話当世着倒気質
・着物の着方警察と本当の粋。
『半七捕物帳』

第6話さよなら、青木まり子
・古本屋のオリジン。
『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ

PXL_20260423_142759169~2

2巻
第7話鷹の目を持つ男
・古本が好きなおじさん視点。
『クシー君の夜の散歩』鴨沢祐仁

第8話生ける人々の輪舞曲
・若い癌患者とその医師。読み終わるまで死ねないと思えるほど面白い本。
『ガダラの豚』中島らも

第9話本の海の漂流者
無数の本に圧倒される古本屋。
『大漢和辞典』
『サラゴサ手稿』ヤン・ポトツキ

第10話丘の上ホテル(前篇)
第11話丘の上ホテル(後篇)
スランプの漫画家がホテルに泊まる。
『一九三四年―乱歩』久世光彦

第12話雲隠
束見本。質屋と通うおじいさんの交流。
不在が存在を知らせる。

PXL_20260517_202847647~2

3巻
第13話猫の威を借る…
『ひげよ、さらば』上野瞭

第14話夜翔ぶ青年
サン・テグジュペリと香水。
『夜間飛行』『星の王子さま』

第15話1トンの塩
『塩一トンの読書』須賀敦子

第16話4人の優しいひとりぼっち
『夜翔ぶ女』中井英夫

第17話春の終わり
『おじいちゃんの封筒:紙の仕事』藤井咲子
バベルの芸大生のその後。ちょっと救われた。

第18話ニュー・シネマ・パラダイス
『愛のコリーダ』大島渚