『幸福家族』
作:オルダス・ハックスリー
訳:加藤道夫

翻訳の加藤道夫の、自ら命を絶つ前の最後の仕事の一つ、だという。
解説にも書いてあったが、一見なにがなにやらな戯曲。
人形を持った男女が人形を通して会話し、やがて生身で話し始める。男女にはそれぞれ二人の弟・妹がいて、その様子を見守ったりちょっかいを出したり入れ替わったりする。
なぜそんな事に?と戸惑うものの、どこかのタイミングで、人形こそがいわゆる「人」であり、性格の異なる三人の兄弟姉妹は、その人物の中に存在する「ある一面」なのだという事が分かる。
三人で一人。それぞれ、一人の人物の異なる面、という戯曲だ。
攻めた形式だと思う。さすがは演劇の国・イギリス。

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【収録】
『現代世界戯曲選集5 イギリス篇』
1954年/白水社
訳者代表:内村直也


【ネタバレあらすじメモ】
舞台は温室。
そこに育ちの良さそうなアストン(若い男)とトプシイ(若い女)がやってくる。彼らは自分の腹話術人形を持っている。
二人が腹話術で喋り始めると、アストンの弟で黒人のケインが来る。この家には若干黒人の血が流れていて、ケインにはその血が色濃く出ているのだ。ケインはアストンに絡むが、追い払われる。
アストンとケインが話し始めると今度はケインが3番目の弟・ジャスパアを連れてくる。相手にしないアストンとトプシイを見守る二人。
さらにアストンとトプシイを見ているのはトプシイの妹・ベル、そしてヘンリカ。
アストンとトプシイが話す所に割って入る一同。トプシイは詩を書くらしい。弟たちは前にアストンと交流があったらしいタウラア夫人の名をあげる。アストンは作家。トプシイの書いた詩を見たいと口説き始める。やきもきしつつ、ベルとヘンリカは踊り出す。
温室を歩き始めるアストンとトプシイ。アストンは様々な植物について説明する。一同も付き従っている。トプシイはクロロフォルムの樹の香りを嗅ぎ倒れかける。それを支えるアストン。換気をし、回復するトプシイ。アストンは彼女にキス。ケインもトプシイの唇にキス。びっくりするトプシイ。
ケインとアストンが顔を見合わせる。泣き出すヘンリカ。ケインを押しやりトプシイに謝るアストン。再び二人は人形で話し始め、去る。家族たちも続いて去る。
ベルとヘンリカが残る。ジャスパアが「愉快な晩だった」とつぶやき、幕。た