『プラハの春 不屈のラジオ報道』
原題:Vlny
監督:イジー・マードル
製作:2024年 チェコ/スロバキア
上映時間:131分

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プラハの春。世界史で聞いた言葉だ。
だけど、近現代史が駆け足になりがちな世界史の授業ではあまり深く触れられなかった気がする。
プラハの春とは、1968年にチェコスロバキアで行われ、挫折した民主化運動、とのこと。
共産主義なんだけど自由をもっと楽しんでいこうよ、的な運動が起きたが、ソ連率いるワルシャワ条約機構軍によって武力鎮圧された。
ラジオ局はこの出来事を「平和維持のため」と報道するように圧をかけられたが、「侵攻である」との真実の報道を貫き、軍事侵攻の中も報道を続けた。
という史実に基づく映画だ。


素晴らしかった。時代の空気感が映画全体に漂っていて、何か大きなものの力に抗い続ける人間のエネルギーに満ちていた。

主人公はもとは役人として働いていたのだが、民主化の意気の強いラジオ局に半ばスパイ的な感じで放り込まれる事になる。
ラジオ局の仲間たちと交流するうちに、彼の中で変化するものがあり、とはいえたった一人の弟を守らねばならない、という事情があり、時代に翻弄される人の心が繊細に描かれている。

ラジオ局入社試験のシーン、試験管がいなくなると会場に設置された電話が鳴り響く。皆が筆記試験に没頭する中、主人公は電話を取る。聞こえてきたのは「君は合格だ」という言葉。『ガラスの仮面』か!と観ながら心の中でツッコんだ面白シーンだ。試験って、こういう事なのかもしれない。いかに、動けるか。

映画後半、ワルシャワ条約機構軍の侵攻が始まってからは緊張感が限界突破する。ラジオ局を包囲する軍隊。国民への呼びかけを続けるパーソナリティ。各地の被害を報道し続けながら国歌を流すラジオ局は、ついに軍隊の突入を受ける。
一時報道の休止。別拠点からの放送再開。この抵抗活動と軍隊による蹂躙の緊張感を、音楽が一層高める。

結果的にプラハの春は武力鎮圧され、チェコスロバキアは大きく共産主義保守に傾く。ラジオ局の面々も監視や制裁を受ける物が多かったという。
が、このプラハの春は世界各国の政治運動に大きく影響を与える事になったのだとか。歴史映画とそのパンフレットは、とても勉強になる。この映画によって、世界史のピースが、一つ埋まった思い。

『プラハの春 不屈のラジオ報道』というタイトルの通り、不屈の報道魂を貫いた人々が非常に心に残る。と同時に、守るべきもののために「強くあれない」人々をも丁寧に描いていたのが強く印象に残った。

また、作中に「これは当時の本当の映像なんじゃないか」と思う質感の箇所がチラホラあるが、登場人物たちがそこに混ざってくるので、あぁ、作ってるのか!とびっくりした。が、後でパンフレットを見てみると、最新のAI技術で「記録映像に出演者を無理なく合成している」シーンがあるとのこと。
すごかった。歴史の中に、役者が溶け込んでいた。こういう技も、時代の空気を閉じ込めたような作風に貢献しているなぁ。

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