『弁論』
脚本・演出・出演:こたけ正義感
日程:2025年12月04日
料金:前売り6000円/当日6500円
会場:有楽町よみうりホール/ホームシアター京都サウスホール
YouTube「こたけ正義感のギルティーチャンネル」にて1月18日まで無料配信中のものを視聴。
昨年に引き続き、新年一発目の配信観劇となった。まぁ厳密にはお笑いライブなんだろうけれど、観劇もお笑いライブも本質的には変わるまい、と思う。
昨年の「弁論」は軽快な法律トークからやがて冤罪事件に切り込んでいく、笑いと問題意識を織り交ぜた素晴らしい物だった。
今年も、「チケット転売で買って来てる人いないですよね?」と絶妙に法律と時事問題と笑いを掛け合わせた話題から始まる。
そこから、子供の頃から法律教育を徹底すべし、という話題、とんでケイドロの違法性。ケイドロを法的に解釈するととんでもない、という話にゲラゲラ笑う。
そして後半に差し掛かる。
去年配信で『弁論』を観た経験から、このまま終わるはずはない、きっと何か来る!
と思っていたら、やはり来た。
今回のテーマは生活保護。生活保護がいかに承認されにくいか、承認がより厳しさを増し、水際作戦と呼ばれた申請者の追い返しがどんな物だったのか。
「おにぎりが食べたいって言ったんです」
と事の深刻さをぎゅっと圧縮した言葉を放つこたけ正義感さんのムードの作り方・モードの変化にぐっと心を掴まれる。すごかったなぁ。
以前、中山七里さんの『護られなかった者たちへ』 という本を読んだ時の事を思い出す。生活保護却下の決定に関わった者が次々に不審な死を遂げる、という社会派ミステリーなのだけれど、そこで描かれていた老人が「ティッシュペーパーを食べていた」という描写が思い出されて、ギュッと心が絞られる思いがする。
だが、この『弁論』はさすがお笑いライブ。同情を誘うような展開には持っていかない。時折深刻さを纏いながらも、ベースは軽妙なトークで、
「生活保護は甘え」という考え方がいかに愚かで馬鹿馬鹿しいものかを説いていく。
中でも印象的だったのが「生活保護はシートベルトだ」という言葉。なんて簡単で納得しやすい言葉だろう。こういう簡潔な、本質を掴んだ言葉が次々に飛び出し、笑いながらも深い学びが得られる。
『護られなかった者たちへ』でも、生活保護を受けて当然の人が「国に迷惑はかけられないから、恥ずかしいから」と頑なに生活保護を拒む場面があった。シートベルトなんだよと言ってあげられる人が側にいたら、また違う結果になったのかもしれない。
生活保護の金額の国による引き下げは違法、という各地で起こった裁判の話にもなる。ドラマティックな展開だが、現実の話だ。話題になった弁護士が実際にYouTubeにコメントしているのもびっくりした。
最後には、生活保護は甘え、という考え方が纏う差別意識にまで迫る。
笑いを交えつつもその主張は鋭い。
今回も配信ありがとうございます。
人は悲しいくらい忘れてゆく生き物なので、こうして定期的に心に楔を打ってくださる活動がいかに尊いか!噛み締めてスタートする正月になりました。
劇作家・井上ひさしさんの言葉に
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」という名言がある。
井上ひさしさんは戦争などの重いテーマをこの精神で描き続けた作家なのだけれど、この精神性、まさに『弁論』にピタリと来るなと感じた。
『弁論』は一人井上ひさし、なのだ。
今さらだけれど、このライブ、舞台にはこたけ正義感さん一人しかいない。一人芸の可能性、スタンダップコメディの可能性を無限に切り拓く素晴らしいライブだった。
そして、昨年12月に行われたライブを無料配信でもう出すという機動力、英断。
すごすぎる。という訳で、グッズ買います。
本当にありがとうございました。今年も良いスタートです。
『弁論』の期間限定無料配信は1月18日まで!皆さん、是非観て!
コメント