『サラダ記念日』
著:俵万智
1989年/河出文庫
でお馴染みの俵万智さんの短歌集。
朗読講座で短歌を扱ってみよう、という関係で色々短歌に触れよう期間が訪れ、その中で購入した本。
北原白秋とか与謝野晶子とか色々手に取った中で、やはり現代作家の物は抜群に読みやすい。
中でも俵万智さんの短歌は、時折古典短歌風の言い回しを盛り込みつつも現代の感覚が息づいていて面白く読んだ。
一つ一つの歌にも物語があるし、それが連なって連作短篇のごとく、大きな一つの物語になる。
その多くは恋の歌で、恋愛の調子いい時期、悪い時期、過ぎ去った後、新たな恋、といった流れが、感情が、三十一文字(短歌的にはみそひともじ、と読むらしい)に盛り込まれている。
誰もが「分かる」と共感出来そうな感覚が少ない言葉に写し取られていて、短歌は雄弁だなと思った。短い言葉ほど準備時間がかかる、というのは薄田泣菫の『茶話』にあったエピソードだが、じっくりコトコト煮込まれた言葉たちがぎっしり詰まった一冊を愛おしく思う。
与謝野晶子の短歌集も並行して読んだのだけれど、与謝野さんの歌が、こちらも焼かれてしまいそうな情熱や怨念を感じさせるのに対して、俵万智さんの歌は、どこかさっぱりしている。まぁともかく、スニーカーを履いて散歩でもしようか、というような軽やかさが印象に残った。
現代歌人の作で、笹井宏之さん、木下龍也さんの歌も手に取ったが、傾向として
五七五七七
のリズムの間にまたがって言葉が置かれる、リズム通りに声に出すとちょっと変な聞こえ方をする歌があるなぁ、と感じた。
それに対して俵万智さんの歌は、五七五七七で、はっきり声に出して読める物が多いように思う。
言葉使いと合わせて、古典の心を持った現代歌人なのだなと思ったり。
その辺の事は巻末の佐佐木幸綱さんの文章「口語定型の新しさ」で語られている。
たしか教科書で触れたサラダ記念日、だが、とても魅力的な感覚が詰まった一冊で、手を伸ばしてみてよかった。
巻末には俵万智さんの文章で、「これは脚本・演出・主演その他もろもろが俵万智の一人芝居だ」的な事が書いてあって、まさしく!と感じた。この劇場感覚が面白い。
【グッときたもの引用メモなど】
気がつけば君の好める花模様ばかり手にしている試着室
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
江ノ島に遊ぶ一日それぞれの未来があれば写真は撮らず
上り下りのエスカレーターすれ違う一瞬君に会えてよかった
手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛
書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす
待つことの始まり示す色をして今日も直立不動のポスト
今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海
黒板に文字を書く手を休めればほろりと君を思う数秒
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
缶詰のグリンピースが真夜中にあけろあけろと囁いている
思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花
エビフライ 君のしっぽと吾のしっぽ並べて出でて来し洋食屋
愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
跋・佐佐木幸綱
口語定型の新しさ
あとがき
解説・川村二郎

著:俵万智
1989年/河出文庫
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
でお馴染みの俵万智さんの短歌集。
朗読講座で短歌を扱ってみよう、という関係で色々短歌に触れよう期間が訪れ、その中で購入した本。
北原白秋とか与謝野晶子とか色々手に取った中で、やはり現代作家の物は抜群に読みやすい。
中でも俵万智さんの短歌は、時折古典短歌風の言い回しを盛り込みつつも現代の感覚が息づいていて面白く読んだ。
一つ一つの歌にも物語があるし、それが連なって連作短篇のごとく、大きな一つの物語になる。
その多くは恋の歌で、恋愛の調子いい時期、悪い時期、過ぎ去った後、新たな恋、といった流れが、感情が、三十一文字(短歌的にはみそひともじ、と読むらしい)に盛り込まれている。
誰もが「分かる」と共感出来そうな感覚が少ない言葉に写し取られていて、短歌は雄弁だなと思った。短い言葉ほど準備時間がかかる、というのは薄田泣菫の『茶話』にあったエピソードだが、じっくりコトコト煮込まれた言葉たちがぎっしり詰まった一冊を愛おしく思う。
与謝野晶子の短歌集も並行して読んだのだけれど、与謝野さんの歌が、こちらも焼かれてしまいそうな情熱や怨念を感じさせるのに対して、俵万智さんの歌は、どこかさっぱりしている。まぁともかく、スニーカーを履いて散歩でもしようか、というような軽やかさが印象に残った。
現代歌人の作で、笹井宏之さん、木下龍也さんの歌も手に取ったが、傾向として
五七五七七
のリズムの間にまたがって言葉が置かれる、リズム通りに声に出すとちょっと変な聞こえ方をする歌があるなぁ、と感じた。
それに対して俵万智さんの歌は、五七五七七で、はっきり声に出して読める物が多いように思う。
言葉使いと合わせて、古典の心を持った現代歌人なのだなと思ったり。
その辺の事は巻末の佐佐木幸綱さんの文章「口語定型の新しさ」で語られている。
たしか教科書で触れたサラダ記念日、だが、とても魅力的な感覚が詰まった一冊で、手を伸ばしてみてよかった。
巻末には俵万智さんの文章で、「これは脚本・演出・主演その他もろもろが俵万智の一人芝居だ」的な事が書いてあって、まさしく!と感じた。この劇場感覚が面白い。
【グッときたもの引用メモなど】
気がつけば君の好める花模様ばかり手にしている試着室
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
江ノ島に遊ぶ一日それぞれの未来があれば写真は撮らず
上り下りのエスカレーターすれ違う一瞬君に会えてよかった
手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛
書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす
待つことの始まり示す色をして今日も直立不動のポスト
今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海
黒板に文字を書く手を休めればほろりと君を思う数秒
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
缶詰のグリンピースが真夜中にあけろあけろと囁いている
思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花
エビフライ 君のしっぽと吾のしっぽ並べて出でて来し洋食屋
愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
跋・佐佐木幸綱
口語定型の新しさ
あとがき
解説・川村二郎

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