『火喰鳥を、喰う』
著:原浩
2022年・角川ホラー文庫
Audible版:2024年3月/9時間28分
ナレーター:土池悠介


2025年10月に映画公開予定の話題作。

信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。貞市と共に従軍し戦後復員した藤村の家の消失、日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。さらに日記には、誰も書いた覚えのない文章が出現していた。「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」雄司は妻の夕里子とともに超常現象に造詣のある北斗総一郎に頼ることにするが……。 ミステリ&ホラーが見事に融合した新鋭、衝撃のデビュー作。

さてさて、タイトルにもあるヒクイドリ。
この鳥は非常に強力な爪を持つ、世界一危険な鳥だそうで。時速50キロで走り、襲われた人間が死亡したケースもあるという。
そのヒクイドリを、喰う?

タイトルから私は、絶対モンスター・パニックホラーだと思っていました。
ヒクイドリと激闘・死闘の末に美味しくいただく感じかと。
読んでみて、全然違った!

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現代と太平洋戦争中の二つの時代が描かれる新感覚SFホラー。
ヒクイドリ関連の描写の不気味さが圧巻で、悪夢的シチュエーションが物凄いリアリティ。
また、叙述トリック的な部分もあり、私はAudibleで聴いていた事もあって、この違和感の正体にラストまで気付きませんでした。
終わって、思わず該当箇所を聴き直したなぁ…。


特に魅力的なのが、あらすじにも登場した霊能力者的な立ち位置にいる北斗総一郎。超常現象への対策をバンバン提案してくれて、強い味方感がハンパない。特に、主人公の妻・夕里子への想い、これが、凄かった。

「生きたい」という意志の力、生への執着が巻き起こす凄惨な悲劇。ホラー的な側面もあるけれど、むしろ強いのはSF感。
世界にこうあって欲しい、という願い、そりゃあるよねぇと思いながら、今のこの現実も、誰かの可能性を奪い取って成立している世界線なんだろうな、と思わせられました。
たしかゲームの『メタルギア・ソリッド2』で、生きることは選択の連続だ、みたいなくだりがあったんですが、そんな事も思い出しました。


選ばれなかった可能性。そこに意志が宿るとしたら…生きることは戦いの連続。そう思わせられる、ハードな一冊でした。