『短剣を持ちたる女』
作:アルツウル・シュニッツレル
訳:森鷗外

オーストリアの医者・小説家・劇作家のアルトゥル・シュニッツラー(1862〜1931)の作品。
肩書も時代も、チェーホフと同じような方なんだな。
ルックスもどことなくチェーホフ感がある。

Screenshot_20241221-185100~2

さて、この『短剣を持ちたる女』
森鷗外の翻訳で読んだ。やや古めかしいけど難解なほどではない翻訳。

内容がやや幻想的で面白い。
戯曲家の妻・パウリイネと若者レオンハルト。二人はある絵画を見ながら、前世の因縁を思い出す。
そして場面転換が行われて、前世の因縁が描かれる、という形式。
時代がリアリズムになってきてる時期の作品であろうに、前世からの運命的恋を、一枚の絵を媒介にして描き出すファンタジー。面白い。運命。登場人物は三人。
著作権も翻訳著作権も消滅している。


【収録】
『鷗外選集・第十九巻』
1980年 岩波書店


【ネタバレあらすじメモ】

絵画展覧所の一間。短剣を手に握る女の絵がある。

戯曲家の妻・パウリイネと少年レオンハルト。
二人は絵を見る約束をして何度か会っている様子。絵を見ながら、絵の時代の頃に二人は会っていたのかもね、などと戯れる。話は昨夜の観劇の話題に。
昨夜、パウリイネの夫によって書かれた『マリヤ姫の伝記』が上演された際、客席はざわついていた。その内容が、パウリイネを題材にしたものだからだ。レオンハルトはその状況を見かねて彼女を連れ出したかった。なぜなら、と、レオンハルトは彼女への愛を告白。パウリイネも、彼を思う気持ちがあるようで、その為に彼女は夫と共に明日、イタリアへ立つと打ち明ける。それを必死に止めるレオンハルト。
と、パウリイネは突如、絵の短剣を持つ女は自分で、その傍で死んでいるのがレオンハルトだと言い出す。そして彼に向かい「リオナルドオ」と呼び掛ける。

舞台暗くなり、画伯レミジオの画室となる。
少年画工リオナルドオ(レオンハルトの前世)とパオラ(パウリイネの前世)が話している。

リオナルドオもまた、パオラに惹かれて、昨夜関係を持っている。リオナルドオは愛を打ち明けるがパオラは拒む。もう夫も帰ってくるのだ。ならばとリオナルドオは短剣で死のうとする。パオラは罪を夫に自白しようとする。だが、浮気な夫はきっと怒り彼女を殺すであろうことは二人にはよく分かっている。
パオラの夫・レミジオが戻る。パオラは不貞を打ち明ける。レミジオはリオナルドオにただ、出ていくように命じる。必要のない人間だからで、憎いからではない、と。リオナルドオは自分を殺すようにレミジオに迫るが、リオナルドオは彼に興味がない。
しまいにパオラが、リオナルドオを刺殺。その姿を観て、インスピレーションを得たレミジオ。

場は戻る。
どうやらパウリイネは、やや意識を失っていたようだ。レオンハルトの問いかけに目を覚まし、過去を思い出したかと彼に問う。が、彼は気付いていない様子。パウリイネは、今夜だけは共に過ごす決心をする。後は、別れだ。