『向日葵の咲かない夏』
著：道尾秀介
平成20年 新潮文庫（み−40−1）

なんだか話題の小説ということで手に取ってみた一冊。著者の道尾秀介さんの本はAudibleで『いけない』『いけない�供戮鯆阿い董△修良垈困癖薫狼い縫疋�ドキした記憶が。
この『向日葵の咲かない夏』は道尾さんの代表作とも言われているそうで、期待が高まる。

あらすじ紹介（Amazonより）
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

不穏すぎる。道尾さんの小説に既に触れていて、『いけない』のシリーズは、巻末の写真を見ると物の見方が180度変わる、という仕掛けがあったので、きっとこの作品にも何かが…と警戒心マックスで読み始める。
何もかも怪しい。
何が真実なんだろうか…、これはきっとミスリードに違いない…、そんな事を思いながらも気付けば夢中で僕とSくんによる犯罪捜査を読み進める。
「あるもの」に姿を変えて現れたSくんは、シャーロック・ホームズばりの推理力と洞察力で主人公にヒントをくれるが、なんかそもそもの所で信用が出来ない。
妹の行動やちょっとした描写にも「あれ？今の何？」という違和感がつきまとう。
誰もがみんな怪しい中で、後半、怒涛の種明かし…こうだとは、思わなかった！
これはもうね、映像化不可能！のやつですよね。
小説を読んで読者が想像力を働かせる、その中でしか成立し得ない、読書の醍醐味をぎゅっと味わいました。
もう一度読み直すと全てが違う形で写る作品。
真実は何なのか、みたいな事も考えますが、主人公の少年にとっては書かれてあることこそが真実だった訳で、事実と真実の差、みたいな事を考えさせられました。
もう一度読みたいと二度と読みたくないが交錯する、後味どんよりなサイコホラーサスペンス！夏休み！という言葉の爽やかさからは想像もつかない現実に連れて行かれます。


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