『タンバレイン』
作:クリストファー・マーロウ(1564〜1593)
訳:高田茂樹
2012年 水声社
↑動画版感想はこちら↑
クリストファー・マーロウの『タンバレイン』一部と二部がまとめて収録された一冊。
二部構成で、第一部の好評を受けてすぐさま第二部が上演されたという。
一部二部通してタンバレインが領土を拡大していく様が描かれていて、圧倒的な暴力が全てを蹂躙していく展開だ。
第一部では
ペルシャ王を追い落としペルシャを支配、
トルコ王を打ち倒しトルコを支配、
エジプト王を打ち倒しエジプトを支配
という快進撃が描かれる。
エジプト攻略の際には、エジプト王がゼノークラティの父にあたる為、攻めるか否かの葛藤が起こる。
最愛の妻(もちろんこの妻も誘拐したのだが)から父の命を助けてくれと頼まれる。
一方でタンバレインは、自分に剣を向けた相手を徹底的に蹂躙し、殲滅するという生き方を持っている。
愛と信条の決定的な衝突の間で葛藤するタンバレインの姿が第一部の見所だと思った。
逆にここ以外、タンバレインはほぼ人間的な様子を見せず、徹底した絶対殺すマンだ。
自らの行動原理に忠実である、という所が、上演当時は魅力的だったのかしら。
第二部に突入すると、
トルコ王の息子が、タンバレインを良く思わない諸国の王たちと連合し反旗を翻す
↓
トルコと敵対するヨーロッパ諸国の描写
↓
シリアを支配
↓
バビロン攻略
↓
病没
という過程が描かれる。
途中に最愛の妻・ゼノークラティの死去、戦を好まない長男との衝突という出来事が起こる。
自らの行動原理をも揺さぶるほどの愛を注いでいた女性の死、その嘆きはゼノークラティの死去した地を焦土とする程の激しさがあった。
また、戦を好まぬ長男との確執も物凄い。
自分の帝国を継承する存在として、自らのように生きる存在を育てたかった彼の思いは逆効果となり、命令に従わぬ者は殺す、というタンバレインの方程式に見事に合致する人物として息子は育つ。
この衝突もまた見所だ。
一部に比べ二部ではタンバレインの人間的描写がやや多くなる(と言っても、ほぼ戦っている)
病没のくだりは急にやってくるが、宗教に対する軽視が、その原因のようにも描かれている。
亡くなる前タンバレインは、己が征服せぬ土地がまだ地上にあるのだ、と、まだ見ぬ土地への思いを語ってこの世を去る。味わい深いシーンだった。
己の領土を、存在を、拡大していくことのみに走り続けた男が病気で世を去るその間際までも、拡大にこだわり続ける。その姿は、太宰治の『地図』で描かれた、己の領土のちっぽけさ、世界の広さを知り発狂した琉球王とは対照的で味わい深い。
徹底的に己を貫き通す人物の悲劇がここにある。
『地図』の朗読は↑
終始残虐な展開が巻き起こるのだが、殺陣といった実際の戦闘シーンは一切描かれない。
戦闘の前の双方の荒い言葉の応酬、その後は決着がついたシーンから再開する、という描かれ方。
事件は舞台の外で起こる、ギリシャ悲劇からの形式だろうか。
台詞の流れは詩的だが、同時代のシェイクスピアが美しさや人間の葛藤を言葉を尽くして描いたのに対し、このタンバレインでは暴力の代わりとなる「言葉」征服するための「言葉」という印象が強く、美しさよりも野蛮なエネルギー感が際立っていたように思う。

作者のクリストファー・マーロウは政府のスパイ的活動も行っていたらしく、その死に方にも不審な点があるとかで、多くの謎に包まれた人物。
その姿は、シェイクスピア(このおじさんも謎だらけだ)を主人公とした漫画『七人のシェイクスピア』でも、『タンバレイン』の上演エピソードと共に印象的に描かれている。

【ネタバレあらすじメモ】
『タンバレイン・第一部』
作:クリストファー・マーロウ
1587年
前口上
★一幕
一場
ペルシャ王マイシティーズが、自領を脅かすタンバレインの討伐をセリダマスに命じる。
弟のコスローエは、メナフォンをアッシリア総督に任命するよう頼む。コスローエはどこか道化じみた態度。
コスローエはメナフォンに、自身がアジアの皇帝につく計画があることを打ち明ける。
オーティジアスらがやってきて、コスローエを戴冠させる。
二場
タンバレインの一行は、エジプトのサルタンの娘・ゼノークラティ一行を捕らえる。タンバレインはゼノークラティを手に入れたいと主張。
兵士から、ペルシャ軍が向かっている事が告げられる。まずは談判を持とうとするタンバレイン。戦力差も大きい。
セリダマスがペルシャ軍を率いてくるが、タンバレインの男ぶりに引かれ、彼の部下となる。ゼノークラティらもタンバレインと同行することを余儀なくされる。
★二幕
一場
コスローエと部下たち。コスローエはタンバレインと合流して兄を討つ計画を立てる。
二場
ペルシャ王・マイシティーズはタンバレインと弟の連合軍に数で負けているが、強気な姿勢。
三場
コスローエとタンバレインが合流。いよいよ戦いが始まる。
四場
戦場にて、マイシティーズは王冠を隠そうとしている。そこへタンバレインが現れるが、マイシティーズをきちんと打ち負かして王冠を奪うべく、ここは見逃す。
五場
コスローエが戴冠して凱旋の路につく。タンバレインは王座が欲しくなり、テチェリースにコスローエを討つよう指示。
六場
タンバレインの謀反を聞きいきりたつコスローエ。
七場
コスローエは恨み言を言いながら死ぬ。タンバレインは戴冠しペルシャ王となる。野望は広がる。
★三幕
一場
トルコ王バジャゼスは、自国を脅かそうとするタンバレインに対し圧力をかけるよう部下に命じる。戦いも辞さない構え。
二場
ゼノークラティは、いつでもタンバレインと一緒にいたいと願い痛切な想い。彼女の側近らは、タンバレインがトルコ軍らに打ち破られる事を期待しているようだが、ゼノークラティにはタンバレインが全て。激しい愛情。
タンバレインが来てゼノークラティを連れて行く。視線は彼を非難していたアガイダスに冷たく向けられている。
その後、短剣を持ったテチェリースとウーサムカサーネが現れる。アガイダスはその意味を悟り、自害する。
三場
タンバレインはトルコ太守相手に、トルコ征服の話をする。
トルコ王バジャゼスがやってきて、タンバレインと罵り合い、双方とも戦いのために去る。
ゼノークラティとトルコ王の妻が互いに罵り合う。その間戦いの声が聞こえてくる。
やがてバジャゼスは敗北しタンバレインに追われて戻る。タンバレインはトルコの王冠をも手にする。
★四幕
一場
エジプトの統治者にしてゼノークラティの父・サルタンはタンバレインの侵攻に会い憤慨している。
二場
タンバレインはバジャゼスを奴隷として檻に入れ踏みつけ、エジプト襲撃に備える。ゼノークラティは故郷の事もあって少しの情を願うが、タンバレインはそれを拒否。
三場
サルタンはアラビア王と共に戦いの準備をする。
四場
タンバレインの陣。ゼノークラティは父らの助命を乞う。大人しく降伏すれば、とだけ応えるタンバレイン。相変わらずトルコ王を酷く扱う。
★五幕
一場
タンバレインに攻められ陥落寸前のダマスカスでは、知事が乙女らをタンバレインへの使いとする事を決定。助命嘆願に向かわせる。
タンバレインは一度決めた事は絶対、と嘆願を受け入れず、部下に命じて乙女らを殺させる。死体はダマスカスの城壁に吊るされた。
タンバレインは自身の武勇を示すことと、愛するゼノークラティの悲しみとの間で揺れる。初めて人間らしい場面か。
出陣の準備。タンバレインはゼノークラティの父の助命を認め、出陣。
檻に残されたバジャゼスは妻のサビーナに水を持ってくるよう頼む。一人になると激しい呪いの言葉を吐き、檻に頭を叩きつけ絶命。水を持って戻ったサビーナもその様子を見て檻に頭を打ち付け絶命。
その様を見たゼノークラティ、おおいに嘆く。
ゼノークラティのかつての許婚・アラビア王が負傷して登場。ゼノークラティに看取られ息絶える。
タンバレインがエジプト王を連れて戻る。王は助命され、タンバレインはゼノークラティにペルシャ王妃の冠を与える。この後二人の盛大な結婚式を!と宣言し、幕。
『タンバレイン・第二部』
前口上
前作好評につき、の前口上。
★一幕
一場
ナトリア王オーカーニースはヨーロッパと交戦中だったが、タンバレインと戦う為にヨーロッパと休戦する。
二場
第一部で落命したバジャゼス王の息子、タンバレインに囚われているキャラパインは、牢番のアルメーダに莫大な褒美を約束し、脱出を決行する。復讐を胸に。
三場
タンバレインとゼノークラティ、そして三人の子供。子供二人は勇猛だが、一人優しく、タンバレインはその子に辛く当たる。
セリダマスらがやってきてそれぞれ武勇を報告。対トルコに向けて士気が上がる。
★二幕
一場
ハンガリー王シギスモンドのもとをブダの領主フレデリックが訪れる。彼らはトルコが対タンバレインに夢中の間に、キリスト教国の威信をかけてトルコを急襲する計画を建てる。
二場
オーカニースはキリスト教国の進撃を聞き激怒。迎え撃つ態勢を取る。
三場
シギスモンド、敗れて死ぬ。オーカニースは祝杯をあげる。
四場
病のゼノークラティがタンバレインらに看取られて死去。タンバレインは世界を、神々を呪う。
★三幕
一場
キャラパインが諸国の王を率いてタンバレイン討伐の演説。
二場
タンバレインはゼノークラティが死んだ街を焼き払う。息子たちに戦のコツを伝授し、血に怯える子に、自らの腕を斬りつけ血を見せる。対キャパインの士気が高まる。
三場
セリダマスらがシリア国境の砦にやってくる。砦の主に降伏を促すが、相手は戦う気構え。
四場
砦の将軍は敗戦し自害。その妻オリンピアは息子を殺し自らも死のうとするが、息子を殺した後で駆けつけたセリダマスに捕らえられる。セリダマスはオリンピアに恋をした様子。
五場
タンバレイン軍とキャラパイン軍が対峙。双方罵り合う。
★四幕
一場
タンバレインの長男キャリファスは戦わずにトランプをしている。そこへタンバレインが敵のオーカニースらを捕らえてやってくる。タンバレインは戦わぬ息子に激怒し、彼を刺し殺す。
二場
オリンピアに求婚するセリダマスだが、オリンピアは死ぬことだけを考えている。一切の武器がないオリンピアは、セリダマスに対して「何でも硬くする膏薬がある。私の喉に塗って効果を示すから喉を刺せ」と告げる。セリダマスは信じて刺し、オリンピアは死ぬ。嘆くセリダマス。
三場
タンバレインは捕らえたオーカニースらを馬のように扱い、その側室らを兵士に与え、略奪。次の侵略目標は、バビロンだ。
★五幕
一場
バビロンも陥落。タンバレインはバビロンの知事を処刑しコーランを焼き捨てる。ペルシャへの凱旋を図ると、突然気分が悪くなる。
二場
キャラパインは全トルコ軍を率いてバビロンにやってくる。マホメットに勝利を祈願し、出陣する。
三場
タンバレインは病に倒れている。王冠は息子のアマイラスに渡される。タンバレインは地図を広げ、まだ征服していない地に思いを馳せる。そして病死。幕。
作:クリストファー・マーロウ(1564〜1593)
訳:高田茂樹
2012年 水声社
「今まで使われたことのない兵器で、
お前たちの町や黄金の宮殿を
征服し略奪し完全に消滅させてやる」
↑動画版感想はこちら↑
クリストファー・マーロウの『タンバレイン』一部と二部がまとめて収録された一冊。
タイトルロールのタンバレインは、チャガタイ・ハン国の軍事指導者・ティムールをモデルとする歴史劇。
二部構成で、第一部の好評を受けてすぐさま第二部が上演されたという。
一部二部通してタンバレインが領土を拡大していく様が描かれていて、圧倒的な暴力が全てを蹂躙していく展開だ。
第一部では
ペルシャ王を追い落としペルシャを支配、
トルコ王を打ち倒しトルコを支配、
エジプト王を打ち倒しエジプトを支配
という快進撃が描かれる。
エジプト攻略の際には、エジプト王がゼノークラティの父にあたる為、攻めるか否かの葛藤が起こる。
最愛の妻(もちろんこの妻も誘拐したのだが)から父の命を助けてくれと頼まれる。
一方でタンバレインは、自分に剣を向けた相手を徹底的に蹂躙し、殲滅するという生き方を持っている。
愛と信条の決定的な衝突の間で葛藤するタンバレインの姿が第一部の見所だと思った。
逆にここ以外、タンバレインはほぼ人間的な様子を見せず、徹底した絶対殺すマンだ。
自らの行動原理に忠実である、という所が、上演当時は魅力的だったのかしら。
第二部に突入すると、
トルコ王の息子が、タンバレインを良く思わない諸国の王たちと連合し反旗を翻す
↓
トルコと敵対するヨーロッパ諸国の描写
↓
シリアを支配
↓
バビロン攻略
↓
病没
という過程が描かれる。
途中に最愛の妻・ゼノークラティの死去、戦を好まない長男との衝突という出来事が起こる。
自らの行動原理をも揺さぶるほどの愛を注いでいた女性の死、その嘆きはゼノークラティの死去した地を焦土とする程の激しさがあった。
また、戦を好まぬ長男との確執も物凄い。
自分の帝国を継承する存在として、自らのように生きる存在を育てたかった彼の思いは逆効果となり、命令に従わぬ者は殺す、というタンバレインの方程式に見事に合致する人物として息子は育つ。
この衝突もまた見所だ。
一部に比べ二部ではタンバレインの人間的描写がやや多くなる(と言っても、ほぼ戦っている)
病没のくだりは急にやってくるが、宗教に対する軽視が、その原因のようにも描かれている。
亡くなる前タンバレインは、己が征服せぬ土地がまだ地上にあるのだ、と、まだ見ぬ土地への思いを語ってこの世を去る。味わい深いシーンだった。
己の領土を、存在を、拡大していくことのみに走り続けた男が病気で世を去るその間際までも、拡大にこだわり続ける。その姿は、太宰治の『地図』で描かれた、己の領土のちっぽけさ、世界の広さを知り発狂した琉球王とは対照的で味わい深い。
徹底的に己を貫き通す人物の悲劇がここにある。
『地図』の朗読は↑
終始残虐な展開が巻き起こるのだが、殺陣といった実際の戦闘シーンは一切描かれない。
戦闘の前の双方の荒い言葉の応酬、その後は決着がついたシーンから再開する、という描かれ方。
事件は舞台の外で起こる、ギリシャ悲劇からの形式だろうか。
台詞の流れは詩的だが、同時代のシェイクスピアが美しさや人間の葛藤を言葉を尽くして描いたのに対し、このタンバレインでは暴力の代わりとなる「言葉」征服するための「言葉」という印象が強く、美しさよりも野蛮なエネルギー感が際立っていたように思う。

作者のクリストファー・マーロウは政府のスパイ的活動も行っていたらしく、その死に方にも不審な点があるとかで、多くの謎に包まれた人物。
その姿は、シェイクスピア(このおじさんも謎だらけだ)を主人公とした漫画『七人のシェイクスピア』でも、『タンバレイン』の上演エピソードと共に印象的に描かれている。

【ネタバレあらすじメモ】
『タンバレイン・第一部』
作:クリストファー・マーロウ
1587年
「この悲劇の鏡の中では、タンバレインの姿だけをご覧ください」
前口上
★一幕
一場
ペルシャ王マイシティーズが、自領を脅かすタンバレインの討伐をセリダマスに命じる。
弟のコスローエは、メナフォンをアッシリア総督に任命するよう頼む。コスローエはどこか道化じみた態度。
コスローエはメナフォンに、自身がアジアの皇帝につく計画があることを打ち明ける。
オーティジアスらがやってきて、コスローエを戴冠させる。
二場
タンバレインの一行は、エジプトのサルタンの娘・ゼノークラティ一行を捕らえる。タンバレインはゼノークラティを手に入れたいと主張。
兵士から、ペルシャ軍が向かっている事が告げられる。まずは談判を持とうとするタンバレイン。戦力差も大きい。
セリダマスがペルシャ軍を率いてくるが、タンバレインの男ぶりに引かれ、彼の部下となる。ゼノークラティらもタンバレインと同行することを余儀なくされる。
★二幕
一場
コスローエと部下たち。コスローエはタンバレインと合流して兄を討つ計画を立てる。
二場
ペルシャ王・マイシティーズはタンバレインと弟の連合軍に数で負けているが、強気な姿勢。
三場
コスローエとタンバレインが合流。いよいよ戦いが始まる。
四場
戦場にて、マイシティーズは王冠を隠そうとしている。そこへタンバレインが現れるが、マイシティーズをきちんと打ち負かして王冠を奪うべく、ここは見逃す。
五場
コスローエが戴冠して凱旋の路につく。タンバレインは王座が欲しくなり、テチェリースにコスローエを討つよう指示。
六場
タンバレインの謀反を聞きいきりたつコスローエ。
七場
コスローエは恨み言を言いながら死ぬ。タンバレインは戴冠しペルシャ王となる。野望は広がる。
★三幕
一場
トルコ王バジャゼスは、自国を脅かそうとするタンバレインに対し圧力をかけるよう部下に命じる。戦いも辞さない構え。
二場
ゼノークラティは、いつでもタンバレインと一緒にいたいと願い痛切な想い。彼女の側近らは、タンバレインがトルコ軍らに打ち破られる事を期待しているようだが、ゼノークラティにはタンバレインが全て。激しい愛情。
タンバレインが来てゼノークラティを連れて行く。視線は彼を非難していたアガイダスに冷たく向けられている。
その後、短剣を持ったテチェリースとウーサムカサーネが現れる。アガイダスはその意味を悟り、自害する。
三場
タンバレインはトルコ太守相手に、トルコ征服の話をする。
トルコ王バジャゼスがやってきて、タンバレインと罵り合い、双方とも戦いのために去る。
ゼノークラティとトルコ王の妻が互いに罵り合う。その間戦いの声が聞こえてくる。
やがてバジャゼスは敗北しタンバレインに追われて戻る。タンバレインはトルコの王冠をも手にする。
★四幕
一場
エジプトの統治者にしてゼノークラティの父・サルタンはタンバレインの侵攻に会い憤慨している。
二場
タンバレインはバジャゼスを奴隷として檻に入れ踏みつけ、エジプト襲撃に備える。ゼノークラティは故郷の事もあって少しの情を願うが、タンバレインはそれを拒否。
三場
サルタンはアラビア王と共に戦いの準備をする。
四場
タンバレインの陣。ゼノークラティは父らの助命を乞う。大人しく降伏すれば、とだけ応えるタンバレイン。相変わらずトルコ王を酷く扱う。
★五幕
一場
タンバレインに攻められ陥落寸前のダマスカスでは、知事が乙女らをタンバレインへの使いとする事を決定。助命嘆願に向かわせる。
タンバレインは一度決めた事は絶対、と嘆願を受け入れず、部下に命じて乙女らを殺させる。死体はダマスカスの城壁に吊るされた。
タンバレインは自身の武勇を示すことと、愛するゼノークラティの悲しみとの間で揺れる。初めて人間らしい場面か。
出陣の準備。タンバレインはゼノークラティの父の助命を認め、出陣。
檻に残されたバジャゼスは妻のサビーナに水を持ってくるよう頼む。一人になると激しい呪いの言葉を吐き、檻に頭を叩きつけ絶命。水を持って戻ったサビーナもその様子を見て檻に頭を打ち付け絶命。
その様を見たゼノークラティ、おおいに嘆く。
ゼノークラティのかつての許婚・アラビア王が負傷して登場。ゼノークラティに看取られ息絶える。
タンバレインがエジプト王を連れて戻る。王は助命され、タンバレインはゼノークラティにペルシャ王妃の冠を与える。この後二人の盛大な結婚式を!と宣言し、幕。
『タンバレイン・第二部』
「今まで使われたことのない兵器で、
お前たちの町や黄金の宮殿を
征服し略奪し完全に消滅させてやる」
前口上
前作好評につき、の前口上。
★一幕
一場
ナトリア王オーカーニースはヨーロッパと交戦中だったが、タンバレインと戦う為にヨーロッパと休戦する。
二場
第一部で落命したバジャゼス王の息子、タンバレインに囚われているキャラパインは、牢番のアルメーダに莫大な褒美を約束し、脱出を決行する。復讐を胸に。
三場
タンバレインとゼノークラティ、そして三人の子供。子供二人は勇猛だが、一人優しく、タンバレインはその子に辛く当たる。
セリダマスらがやってきてそれぞれ武勇を報告。対トルコに向けて士気が上がる。
★二幕
一場
ハンガリー王シギスモンドのもとをブダの領主フレデリックが訪れる。彼らはトルコが対タンバレインに夢中の間に、キリスト教国の威信をかけてトルコを急襲する計画を建てる。
二場
オーカニースはキリスト教国の進撃を聞き激怒。迎え撃つ態勢を取る。
三場
シギスモンド、敗れて死ぬ。オーカニースは祝杯をあげる。
四場
病のゼノークラティがタンバレインらに看取られて死去。タンバレインは世界を、神々を呪う。
★三幕
一場
キャラパインが諸国の王を率いてタンバレイン討伐の演説。
二場
タンバレインはゼノークラティが死んだ街を焼き払う。息子たちに戦のコツを伝授し、血に怯える子に、自らの腕を斬りつけ血を見せる。対キャパインの士気が高まる。
三場
セリダマスらがシリア国境の砦にやってくる。砦の主に降伏を促すが、相手は戦う気構え。
四場
砦の将軍は敗戦し自害。その妻オリンピアは息子を殺し自らも死のうとするが、息子を殺した後で駆けつけたセリダマスに捕らえられる。セリダマスはオリンピアに恋をした様子。
五場
タンバレイン軍とキャラパイン軍が対峙。双方罵り合う。
★四幕
一場
タンバレインの長男キャリファスは戦わずにトランプをしている。そこへタンバレインが敵のオーカニースらを捕らえてやってくる。タンバレインは戦わぬ息子に激怒し、彼を刺し殺す。
二場
オリンピアに求婚するセリダマスだが、オリンピアは死ぬことだけを考えている。一切の武器がないオリンピアは、セリダマスに対して「何でも硬くする膏薬がある。私の喉に塗って効果を示すから喉を刺せ」と告げる。セリダマスは信じて刺し、オリンピアは死ぬ。嘆くセリダマス。
三場
タンバレインは捕らえたオーカニースらを馬のように扱い、その側室らを兵士に与え、略奪。次の侵略目標は、バビロンだ。
★五幕
一場
バビロンも陥落。タンバレインはバビロンの知事を処刑しコーランを焼き捨てる。ペルシャへの凱旋を図ると、突然気分が悪くなる。
二場
キャラパインは全トルコ軍を率いてバビロンにやってくる。マホメットに勝利を祈願し、出陣する。
三場
タンバレインは病に倒れている。王冠は息子のアマイラスに渡される。タンバレインは地図を広げ、まだ征服していない地に思いを馳せる。そして病死。幕。
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