劇団だるめしあん
『ラブイデオロギーは突然に』
作・演出:坂本鈴

イベント『ガチゲキ!!復活前年祭』
日程:2024年8月8日〜8月18日
料金:3500円
会場:アトリエ春風舎

という、
・くによし組
・劇団だるめしあん
・松森モヘーの小竹向原ボンバーズ
の三団体が参加するイベントの、
劇団だるめしあんの回の演目。

20240817_190340

コロナ禍の中であまり観劇に足を運ばなくなり、「演劇は必要不可欠」から「演劇、観に行かなくても大丈夫だ」に自分のマインドが切り替わってから結構な月日が経つ。
かつて週一くらいで劇場に通っていたのがよくて月一くらいまで落ちている最近。
コロナ禍が過ぎ去ったという事になってからも、特に劇場に向かうペースが回復するわけでもなく、まして観劇の感想を書く、なんて行為は本当に本当に稀になっている、そんな私が久しぶりに感想を書きます。

演劇は本当に好きだけど、おもろない舞台を観るたびに演劇に絶望し、滅びてしまえ!と思ったりする。けど、たまに本当に面白い物に出会うと、やっぱり思っちゃう、演劇、いいなって。そんな風に絶望と希望をさ迷いながら、演劇を憎み、愛し、を繰り返す訳でございますが、
今回の劇団だるめしあん『ラブイデオロギーは突然に』は演劇の希望を見せてくれる作品でした。
最近は良いもの観ても、「感想書くのめんどくせぇな」という思いの方が大きく、短い感想を書くに留まっておりましたが、久しぶりに、あぁ、書き残しておきたい!という気持ちになりました。

このイベント『ガチゲキ!!』は共通のテーマがあり、今回は三団体が「月9」というテーマで作品を作っています。
話がそれますが、皆さん、「月9」は「げつく」「げっく」どちらで読みますか?私は「げつく」に一票。

で、劇団だるめしあんは、かつて流行ったケータイ小説の世界に、原作者とドラマ脚本家の二人の女性が転生する、というなんともおバカなストーリー。
物語冒頭、原作者とドラマ脚本家の確執がやや描かれるんですが、この二人が転生した先でお互い生き抜く為に協力関係になる。
ケータイ小説特有の破天荒な展開の中、やがて破滅を迎える運命にあるキャラクターに転生した二人は、「物語の先を知る者」の強みを活かし、死の運命に抗ってゆく…という、壮大なようでいてとぼけた展開。

すぐにドラッグや売春に足を踏み入れようとする転生先のキャラクターたちを、やや離れた目線でツッコミを入れ、導いていく原作者とドラマ脚本家。40代女性の二人は女子高生に転生していて、でも中身は大人のまま。大人な視点から、刹那的に生きるキャラクターたちを導いていく感じがコメディタッチで描かれていて笑いが絶えない。
ケータイ小説の中の過激なイベント群を冷静な視点で切っていく様が面白い。ケータイ小説の流行が20年前。20年後の世界を知る二人が20年前の世界を見ると、とんでもない事が多い、という点も笑えると同時にグッとくる要素。
20年前は名前のついていなかった現象・問題視されていなかった行動を、「これは問題だよ、よくないよ」と正していく二人を観ていると、人間、少しは前に進んでいるんだなという気持ちになりました。
でも現在が理想的な社会になっているのかというと、決してそうではない。それでも少しずつでも、前に進んでいるじゃないか、と、絶望と希望を両手に抱えて進んでいく感じが、とても良かった。

劇団だるめしあんは、私も過去に出演した事のある劇団なんですが、作風としてポップでおバカな時と、社会問題に切り込む時とあって、最近は社会問題側に力が入っていた印象なんですが、今回はその両方の良さがうまく融合されてた感じでした。
ポップに社会を切る。絶妙なバランス。
ケータイ小説の中に転生する、という設定がまた、このバランスを維持するのに最適なシチュエーションとして機能してるように思いました。社会問題を語りながら、説教臭さが微塵もない。理想的。

運命の人に出会って幸せになりたい。
誰もが夢見る願い、祈りは、同時に人を縛る呪いでもある。
ロマンチック・ラブ・イデオロギーを、物語で、ドラマで強化してきた二人が、
「そこばっかじゃないんだよ」「大切なのは自分なんだよ」
と、呪われた登場人物を解放しようと試みる終盤の展開を見つめながら、演劇を観て、久しぶりにボロボロと涙をこぼす自分に気付きました。
何かに熱中し、渦中にいると、一つの失敗で世界が終わったように感じるもの。
その世界の外からやってきた人物が、世界の選択肢は無限なんだよと説く様は、人間の可能性を見せられているようでグッときました。
とても、良かった。自分軸、という点では映画『バービー』を思い出したりもしました。

この物語が、繰り返し上演されて、やがて「古臭い」「何言ってるのかちょっと分からない」と思われる時代が来る時に向かって放たれた、見た目はポップな、一本の鋭い矢。それがこの作品なんだろうなと思います。
時間の経過で物語が古びていく、という現象についても考えさせられます。

祈りの強さ、呪いの濃さ。祈りと呪いに憧れ、苦悩する人間の背中を、ポンと叩いて前に進ませてくれる、エール。痺れました。良いもの観たなぁ。


ガチゲキ!!公式サイトはこちら


感想を動画にしました。