『恋の骨折り損』
原題:Love's Labor's Lost
作:ウィリアム・シェイクスピア
執筆:1595〜1596年頃
「冗談がのさばるのは聞く人の耳のせい、言う人の舌のせいではありません」


ナヴァールの王様が、自分の配下の貴族三人と共に、三年間女性との関わりを断ち勉学に励む誓いを立てる。
その途端、フランス王女と三人の侍女がナヴァールを訪れ、男たちは完全に恋に落ちる。
気持ちに素直になりたい、でも誓いは破れない…そんな状況に追い込まれ苦しむ男たちと、男たちを軽快にからかう女たち。
ウィットとユーモアに溢れた、男と女の言葉の戦いが始まる…。この、言葉の応酬が鮮やかでおしゃれ。めちゃくちゃ喋る。

そして、突如終わる。本当に「えっ」って終わるのが面白い。デウス・エクス・マキナではないけど、それに形が良く似てる感じ。
タイトル『恋の骨折り損』が鮮やかに回収されてました。骨折り損だ、これは。

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【収録】
『恋の骨折り損』シェイクスピア全集16
作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子
2008年 ちくま文庫
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【ネタバレあらすじメモ】

★第一幕★

第一場 ナヴァール王国、王宮の御苑
ナヴァール王ファーディナンドが貴族ビローン、ロンガヴィル、デュメインを集めて話をしている。勉学に専念したいから、三年間女との関わりを経ち王と暮らすこと、という誓いを立てさせている。ビローンはそんなことは守れない、現にもうすぐフランス王女がやってくるんだからその応対をしなければならないと主張。王もそれは仕方がないと特例を認める。
そこへ警吏のダルが、道化的なコスタードを連行してくる。コスタードは、滞在するスペイン人アーマードーのタレコミで、ジャケネッタという女と一緒にいた罪で連れてこられる。コスタードは粗末な食事のみで暮らすことを命じられる(女と関わらない、が適応されている様子)ビローンは、こんな法は笑いものになるだけだ、と捨て台詞。

第二場 前場に同じ
スペイン人アーマードーと小姓のモスがわちゃわちゃする。アーマードーは恋をしているらしい。
ダルがジャケネッタ、コスタードを連行している。アーマードーの想い人はジャケネッタらしい。
アーマードーは、恋の詩を書くのだと思い立ち去る。


★第二幕★

第一場 王宮の御苑
フランス王女が侍女ロザライン、マライア、キャサリンと貴族のボイエット卿を連れてやってくる。王女はファーディナンド王の女人禁制の法を知っているので、とりあえずボイエットを使者に立てる。
王女は、王と共に誓いを立てた貴族たちの名を問い、ロザライン、マライア、キャサリンがそれぞれロンガヴィル、デュメイン、ビローンの名を挙げる。それぞれ、名を挙げた人物を想っている様子。ボイエットが戻る。
ボイエットが持ってきた返事は、王女一行には庭で野営してもらいたい、というものだった。
続いて王ら男性陣登場。男性陣と女性陣はウィットある言い合いに突入。領土問題の話をした後、王とロンガヴィル、デュメイン退場。
ビローンとロザラインがちょっと口論。続いてデュメインとボイエット。デュメインはボイエットに向かい、キャサリンの名を尋ねて去る。ロンガヴィルはまた別の女性の名を尋ね去る。ビローンはロザラインの名を尋ね去る。
ボイエットは王が王女に恋をしている、と自分の見解を告げる。


★第三幕★

第一場 王宮の御苑
スペイン貴族アーマードとその小姓モス。アーマードはモスに、捕らえた者を解放するよう命じる。
モスがコスタードを連れて来る。アーマードはコスタードに、ジャケネッタへアーマードの書いた手紙を渡すように言いつけて解放、去る。
コスタード一人の所へビローンやってくる。ビローンはロザライン宛の手紙を届けるようにコスタードに頼む。コスタード引き受けて去る。
ビローンはロザラインへの恋を独白。


★第四幕★

第一場 王宮の御苑
王女らは狩りに来ている。
そこへコスタードがビローンからロザラインへの手紙だと言って届けた物は、アーマードーからジャケネッタへの手紙だった。一同の前で読み上げられる。手紙は一応ロザラインの手に。王女は去る。
ロザラインとボイエットがなんか歌ったりする。ロザライン去る。続いて一同去る。

第二場 前場に同じ
ホロファニーズ、サー・ナサニエルのとんちき学者コンビとダル警吏が色々話している。
ところへ、ジャケネッタとコスタードが「手紙を読んでくれ」と登場。アーマードーからの手紙だと思っていた手紙はビローンからロザラインに宛てた物だった。手紙の誤配。ホロファニーズは正しい宛先、すなわち王女のもとに届けるように言いつけ、コスタードとジャケネッタは去る。
残された三人もまた何やら喋り、去る。

第三場 前場に同じ
ビローン一人、恋に悩む。
王が王女への手紙らしきものを読みながら悶々とする。ロンガヴィルが来たので王も隠れる。
ロンガヴィルはマライアへのラブレターを推敲する。マライアは女でなく女神だから誓いを破ることにはならない、とかなんとか。
デュメインが来てロンガヴィルも隠れる。デュメインはキャサリンへの愛に悶々とし、皆が恋に落ちてれば誓いを破ることも罪が軽くなるのになぁと煩悶。
皆、次々に姿を表し、自分の恋はばれてないと思って他人の恋を咎めるが、一番はじめからいたビローンが大きな顔をする。
が、コスタードとジャケネッタがビローンのラブレターを届けに来て、結果皆恋に落ちている事が分かる。ジャケネッタとコスタード去る。
男たちは恋愛が掟破りにならないことをこじつけて、恋の道へと向かう。


★第五幕★

第一場 王宮の御苑
ホロファニーズ、ナサニエル、ダルがアーマードーについて話している。
そこへアーマードー、モス、コスタード来る。一同の言葉遊びなコミカルシーン。
その後アーマードから本題。王たちの前で楽しい余興をやることになったので、ホロファニーズらに知恵を借りたいという。ホロファニーズは芝居『九人の英雄』を薦め、上演に向けて皆が動き出す。

第二場 前場に同じ
王女と女たちは恋人からの贈り物に浮かれている。
ボイエットが、恋が武装して攻めてくる、と男たちの到来を告げる。女たちは仮面をつけ、男からの贈り物を交換して身につける事で相手を間違わせようといういたずらを仕掛ける。
口上役のモスらが現れる。派手に口上をしくじりモスは退場。
王はダンスを願い出るが拒まれる。しつこく頼み、王はロザラインと、ビローンは王女と、デュメインはマライアと、キャサリンはロンガヴィルとペアに。
王妃たちは男たちを帰らせる。どの男もペアの女性を見抜けず、間違った相手に求愛した上、言葉でこてんぱんにやられた。
再び男たち変装をといて戻って来る。王妃はつれない態度を取り、先程ロシア人の訪問を受けた、と告げる。男たちは自分たちの変装がバレていたことを知り、正直が一番と、先程の誓いを守り通すことを宣言。
だがさらに種明かしで、男たちは間違った相手に求愛していたことが明らかになり、男らはこてんぱんになる。
そこへコスタード。劇の支度が整ったらしく、ビローンが準備を命ずる。王は恥ずかしいからやめさせろと言うが、王女はそれが面白いのだと観たがる。
アーマードー登場。芝居が始まる。
英雄が沢山登場するお芝居が間抜けた感じで進行する。その中でコスタードがアーマードーに対し、こいつはジャケネッタを孕ませた!と糾弾、あわや決闘に。アーマードーはなんだかんだと言い訳。
使者マーケイドが現れ、王女に彼女の父の訃報を伝える。
王女は国に帰ることにするが、王は愛の誓いを立てる。王女は王に、自分で誓ったことを破った罰として、一年間世捨て人となれば応じるとし、ロザラインはビローンに、一年間、病気の人たちの為に尽くすことを約束させ、キャサリンはデュメインに、髭と健康と誠実な心を求め、マライアはロンガヴィルに一年待つように言いつける。
アーマードーがやってきて、ジャケネッタのために農作業に従事することを誓い、余興が再会。春と冬の歌が歌われ、めでたく幕。