『殉教』
著:三島由紀夫
昭和57年 新潮文庫
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「嫉妬は透視する力だ」ー『獅子』
三島由紀夫の短編を集めた一冊。
あとがきによると「貴種流離譚」の形を持つ物語が集められているとか。
なかなか読んで噛み砕くのにカロリーを使う読書だったけれど、面白い。
堂々と不倫する夫に対する妻の復讐劇『獅子』、映画スターの心の孤独を描く『スタア』、恋愛と無縁に見える潔癖症な先生の唯一の恋?『三熊野詣』が印象に残る。

【あらすじのメモ】
『軽王子と衣通姫』
歴史物。思い合う王子と姫、政権のクーデター。姫に再会した途端にクーデター計画にやる気をなくしてしまう王子。腹心は姫にあることを頼む。
『殉教』
寄宿舎を支配する魔王こと畠山と、いじめられがちな亘理。衝突したりくっついたりする二人だが、ある日ノリから、亘理を木に吊るすことになり…。
独特の閉鎖感と美しさ漂う短編。
☆『獅子』
夫の堂々たる浮気を知り激しい復讐心に駆られる妻は「夫を限りなく苦しめる」事を生きる力とするようになり…恐ろしい短篇。ラストの畳み掛けるような展開に息を呑む。
『毒薬の社会的効用について』
人に、時代に馴染めず、動物園のみに居場所を感じる男は、ある日動物たちを毒殺しようとするが、毒薬を所持したことで「人は毒殺されたがっている」という事に気付く。
『急停車』
戦争が終わり、電気スタンドの傘を作って暮らしている若い男は、どこかでまた戦争が起きることを待っている。
つまらない、良心的な生活から解放される日を…。
外国人からの注文に合格が出ず鬱屈とする中「急停車」が起き…。
☆『スタア』
人気映画スターの水野豊は「自分にふさわしくない」と世間が考えるだろう付き人の加代と秘密の交際をしつつ世間を欺く事を楽しんでいる。撮影現場での虚実、本当に「見られる」事とは、新人女優の自殺未遂を考えながらやがて現実の輪郭がぼやけていき…。
☆『三熊野詣』
和歌の先生の身の回りの世話をずっとしている常子。恋心など懐いてはいけないと思い過ごしてきたが、人生も終わりに近づき、先生から旅行に誘われる…。旅行中の先生は女物の櫛を土中に埋め始め…。
『孔雀』
かつて美少年だった男は今は見る影もない。そんな彼に、動物園の孔雀を大量に殺した疑いがかかる。
男は「孔雀は殺されてこそ輝く」と考えはじめ…最後の数行で一気に異世界に連れて行かれる短篇。
『仲間』
父と煙草を吸う少年というコンビが出会った人の家に寄生し、カーテンやらなにやらをタバコにして吸ってしまう。
「今夜から私たちは三人になるんだよ、坊や」
安部公房の『友達』を彷彿とさせる、怪しげな雰囲気を持つ童話調の短篇。
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