『屋上庭園』
作:岸田國士
発表:1926年11月1日

「貧乏は昔からの貧乏だが、世の中へ出ると、自分のゐるところがはつきりわかつて来るね。」

岸田國士の戯曲の中では心の流れが掴みやすい方?
裕福な夫婦と貧乏な夫婦がデパートの屋上庭園で出会し会話に。
貧乏な引け目、裕福な優しさが互いにすれ違ってこじれる、ヘビーな戯曲。
貧乏な並木が、作家志望生活の中の絶望を吐露するシーンとか、ラストの並木の妻の台詞とか、鋭く辛いものがある。


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【ネタバレあらすじメモ】



デパートの屋上庭園。

金持ちの三輪夫妻と貧乏な並木夫妻が屋上庭園で会話を交わす。
三輪と並木の両婦人は買い物に出る。
しきりに三輪夫婦はひそひそと話をし、お金の心配をしている風情。

三輪と並木。
三輪は並木の現状について色々質問。
並木は、子供は二人目を妊娠中、仕事は…昔は書物をしていたらしいが…
会話に詰まり並木は、屋上庭園から見下ろすと全てがくだらなく見える、という話を始める。
そこから、並木の現職は小さな出版社だと判明。並木は語る、屋上にいると、下の売り場の物品の上に立っているから買わなくても満足だ、妻もそのようだ、と経済状態がほのめかされる。
三輪が並木の妻をシャン(美しい)と褒めるとかなり卑屈になる並木。
話題変わって、三輪はまだ父の所にいるのか、と並木。
近くにはいるが今は違う、今度遊びに来いと三輪が誘うと、並木は「変わってしまった今では行けない」と断る。
今の仕事はどうだ、と三輪が切り出す。
並木は文筆業にくじけた怨念を吐き出し、さらに卑屈な様子を見せると、三輪は貧乏をひけらかすなと一言。
変わらぬ友情を示してきたんだ、今日は一緒に飯を食え、と。
しばらくいたわりあい、並木は三輪に二十円借りたいと申し出る。貸される。
だが並木は金を返す。
三輪は、貸そうとする。細君に何か買ってやりたくて金がちょうど足りないんだろう、ならお互いの細君にプレゼントしあう事にしよう。その二十円で何か僕の妻に買ってやってくれ、と。
なおみじめさの募る並木は、今日の一連を全て謝り、金を返す。五年後にもう一度会おう、少しはましな人間になってるかもしれないから、と。

両婦人が帰ってくる。
三輪の妻は買い物ではしゃいでいるし、並木の妻が一重帯を欲しがった事について「どうして買わなかったの?」と問う。
三輪はなんとか妻の勢いをいなし、食事へ向かおうとするが、並木は用事を思い出した、と断る。
ひきとめようとする三輪夫人を制し、三輪たちは帰る。

並木夫人は、帯を買おうとしたら三輪夫人が高いのを勧めるから困った、と買い物の状況報告。ついで帯、どうにかならないかと切り出すが喧嘩になる。
並木は三輪の悪口を言い始める。
三輪が金持ちをひけらかしたような言い方をする並木。
あいつから金でも借りて帯を買おうか、と切り出すと、あなたにそれが出来る?と。
お前のためなら、と。
妻は、金のために夫の友人関係がギクシャクするのは嫌だ、と気分を変える。
頼むから友人関係を大切にしてくれ、そして仕事をしてくれと。
「だつて、だつて、あなたは、だんだんいいお友達が減つてくぢやないの…。」
と泣き出し、夫の胸に顔を埋める妻。