『町奉行日記』
著:山本周五郎
新潮文庫【書籍情報はこちら】
「人間は弱いもんだ、気をつけていても、ひょっと隙があれば、自分で呆れるようなまちがいをしでかす」


山本周五郎面白い!となって二冊目。
三年ほど前に買ったきり読んでなかったやつですが、読み始めるとスイスイと。

分かりやすく、染みる人情の物語ばかりで、
「あぁ、善良な世界…」
と胸を打たれます。

主君が死に、「追腹(主君の後を追ってハラキリ)は三年後にしろ、土産を持ってこい」
と告げられた侍の話『土佐の国柱』
特に染みました。

色んな人の失敗をすべて「わたくしです」と引き受ける『わたくしです物語』も、発想の面白さがもうたまらない。


話の多くに、後半
「実は…」というドンデン返しが用意されているのも、構造としてとても面白く…。
人物の成長に伴い、周りも変化していく、あたたかみ。

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【ネタバレあらすじメモ】

『土佐の国柱』
山内一豊に仕えていた高閑斧兵衛は、
主君の死の前に「追い腹を許す。だが三年待つから土産を持ってこい」
と言われる。
主君の死の後、斧兵衛の周りには謀反の噂が立ち上ぼり…
すごく、良い話だったじゃないか!
すごく好きな展開。


『晩秋』
冷徹な藩政改革を断行した進藤主計、
父の敵と彼を狙う都留。
都留はある期間、主計の身の回りの世話をすることとなり、改革の真実を知ることに…


『金五十両』
宿兼料理茶屋・柏屋を訪れた無一文の男は、女中のお滝に心を開き、騙され通しの自分の過去の事を語る。
お滝に情をかけられ宿を出た彼は、通りすがりの侍に五十両を上方まで届けるように頼まれるが…
「こう生きなくちゃあいけないんだ、人間はこう生きなくちゃあ…」


『落ち梅記』
金之助と由利江の恋物語に、父の死、藩の不正の発覚、身を持ち崩した半三郎と様々な要素が絡まり、それぞれの役目に尽くす人間の姿が描かれる。なんてシブい!


『寒橋』
女盛りを迎え、結婚したお孝は、旦那に浮気されたら死ぬとまで思うようになる。
が、夫の不審な動きを目にするようになり、
友人からは決定的な浮気の証言をされる。
女中が妊娠して家から出ていった。夫の浮気と結びつく。
だが、病気の父は死の間際、お孝を呼び出しある事を告げる…。


『わたくしです物語』
イケメンだけどパッとしない主人公と、
彼の両親に恩を感じて、なんとか彼を盛り立てようとする家老。
だが、ある日を境にイケメンは、
様々な不祥事に対して「わたくしです」
「ご沙汰をお待ちしております」
と言い出すようになる。
彼の妻は他の男の子を身籠ったというし、一体どうなる!?と思っていると、
気持ちが洗われて爽やかになる、周五郎ドンデンが鮮やかに決まる!いい話!


『修業綺譚』
乱暴者かつ武芸の達人の小弥太は、
ちょっと頭にくると相手をボコボコにしてしまう。
その癖が治まらない限り婚約した女との結婚は出来ない。
その女はどうにか結婚しようと策を練り…。


『法師川八景』
許嫁がある身でありながら他の男と恋をし、身籠った女。男は事故で死に、男の両親に会いに行くも関係を信じてもらえなかったが…。


『町奉行日記』
藩内の役人と、濠外と呼ばれる無法地帯に癒着があるという。
そこからの金でおおいに私服を肥やす人物がいる。
濠外を掃除するために着任した奉行は、濠外で遊び周り絆を結んでいき…。
誰にも知られぬ大活躍、みたいな粋な話。


『霜柱』
どうも上司が自分に厳しい。
そんな悩みを友人に打ち明けると、
愛ゆえにだと返される。
その上司には昔放蕩な息子がいて…。