『感化院の太鼓』
作:岸田國士
1928年9月
「誰でもいい、返事のできるものが、返事をしてくれ。一体、良いとか悪いとかいふこた、誰が決めたんだい。どうして良いことつていや面白くなく、悪いつていふことだけが面白いんだい。」
警察の世話になるくらいの不良少年・麦太郎を持て余した母・海老子が、
更生施設らしき所に息子を連れて行く一場、
施設の院長との対話の二場、という作り。
良家に育ったがねじ曲がってしまった麦太郎と、過保護な母の印象が強い。
が、二場後半で急激に漂う不穏な空気。
教師たちが入ってくる所で、
「何れも極めて特色のある風貌を具へ、それが一見、この世の人物とは思はれないほどの奇怪千万な印象を与へなければならない。この印象を極めて効果的にするため、これらの人物はそれぞれ仮面を被つてゐてもいい。」
という異質なト書きが登場し、
太鼓を打つ少年、それを見て泣く家族、
それを見守る異質な教師たち、
というなんとも奇妙な幕切れを迎える。
少年が自分から進んで何かをしているプラスの印象とも取れるが、周りがあまりに不穏で、この先どうなるのよ!?
という気分に。
感化院は現在の児童自立支援施設、とのこと。

【ネタバレあらすじメモ】
第一場 公園の一隅
13〜14歳の麦太郎と、姉・23〜24歳の繭子。
そしてその母・海老子が公園で一休み。
三人は麦太郎を感化院(更生施設のような学校?)に預けに行くところ。
麦太郎はいわゆる不良少年の様子。
麦太郎、木に針金を仕掛け始める。
リスに針金渡りをさせるためだ、というが、
通りがかりのカップルの、男の帽子をひっかけて遊ぶ。
叱る母。
感化院からマーチが聞こえてくる。
第二場 感化院の応接室
院長と話す三人。
麦太郎は何も話さず、質問には全て母が答えてしまう。
が、良いこと・悪いこと、という話題になり話し始める麦太郎。
何かの準備が整ったらしく、院長は麦太郎を連れて出ていく。
海老子は、麦太郎があんなになったのは自分のせいだ、など話す。窃盗的な事で警察の厄介にもなったらしい。
院長が、麦太郎の担当の保母が決まった、教師たちを紹介する、といって何人かを連れてくる。
そのいずれもが異様な風貌、ト書きには「仮面を被っていてもよい」とある程。
保母がやってくる。冷徹な雰囲気とあるらしいが、
麦太郎の事を「素直な良い子」と評し、現に今もほら、ここから見てご覧なさい、と母と妹を案内する。
戸の外から見ると、麦太郎が太鼓を叩いている。
泣き始める二人。
その様子を不気味な顔たちが見守る、という景色で幕。
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