『顔』
作:岸田國士
1932年5月1日

海浜の寂れたホテルを舞台に展開する、
すれ違うハラハラ劇。

ホテルで働く女中のるいの思い出話に前半のほとんどが費やされ、
新手の一人芝居だろうかと思う瞬間がある。

その思い出話の中に出てくる因縁の男性、
というのがたまたまホテルを訪れている男らしく、
二人はお互いを認識するのか否か、
というヒヤリとした感覚が漂う。
事件が起こりそうで起こらない、
大事な事は舞台の外で起きてるタイプの戯曲。

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【ネタバレあらすじメモ】

ある海浜の寂れたホテル

男と女、ホテルへやってくる。
二人とも知らない場所に来たくてここに来た。
女、化粧をなおしに部屋に戻る。

女中頭の菅沼るい、やってきて男と会話。
男は菅沼が船で働いていた事を看破。

女戻ってきて、男女は食堂へ向かう。

若い男・京野精一やってくる。
精一は養生のため滞在している。
バーに向かう。

夫人・土屋園子来る。
園子とるい、話し始める。
先程の京野は子爵の家柄らしい。
結婚の話になり、るいは自分の昔話を始める。子供時代から。
るいが外人の家の子守になったこと、
その子供を故郷へ見送るために船に乗り、以来船で働くようになったこと。
そしていよいよ、るいのロマンスの話に。
シンガポールの近くの海、
夜風に辺り、星を眺めてくつろいでいると、
男が現れ、襲われた。
語るるいは涙を流し、園子も泣く。
そして続き。
男の顔は分からない。
船員であることは確かだがまるで手がかりがない。はじめは恨みもしたが、
ただ会ってみたいという気持ちに変わっていった。
その後、死にたい気持ち→諦め、
その事を尊い思い出に変換しようという思考。
話は終わり、るいは訪ねる。
男の気持ちについて、奥様はどう思うか、と。
園子は、あなたが思う通りでいい、何も正解はないと答える。
話を聞いてくれてありがとうと、るいは去る。

京野やってくる。
園子が自分の友人の姉ではないか、似ている、と京野。
軽く否定する園子。
あの婆に何か話しかけられたのでは?
面倒ですよ、少し頭にきているという噂だ、
と京野。
それなら嘘なのか?
嘘だったらむしろ面白い、
という会話の後、園子去る。

るいが来て、一方的に京野に話しかける。

始めの男女、戻ってきて、るいを眺める。
京野去り、るいも仕事に戻る。
男はるいに見覚えがある。
確かに自分が、昔船に乗っていた時にいた女だ、だが正体は明かさないでおこう、と。

るい、戻ってきて男に風呂をすすめる。

園子と京野やってきて、庭に出る。
女は去る。
部屋には男とるいの二人。

るいは星空の話をする。
あんな綺麗な空の下で自分を欺くような人間がいるはずがない、と。

園子と京野、戻ってくる。
庭で鳥が死んでいた様子。
明日あの鳥が生き返っていたら自分の勝ちですよ、と京野は言い、二階へ。

園子もるいも去り、男は庭へ。
やがてるい戻ってきて、電気を消し、
庭へ続くドアの鍵を締めようとする。
男に気付き、「あ」と一声。
男は中に入り去っていく。
るいも、暗い部屋の中を見回し、去る。
波音と共に。
幕。