東京夜光 MITAKA "Next"Selection21st
『BLACK OUT』
作・演出:川名幸宏
日程:2020年8月21〜30日
料金:一般3000円
会場:三鷹市芸術文化センター 星のホール

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30歳を迎える作家・演出家の真野歩向(=丸山港都)を主人公にした人生劇。

周りの人は就職したりなんだりで、きちんと
「仕事をしてお金をもらう」
環境に身を置く中、
作家・演出家としてはとうてい食って行けずバイトをしながら自分のやりたいことをやる。

そんな中、演出助手なら仕事としてやっていける、という道が見えてきて、そこに進むのかどうかという煩悶が主題になってくる。

一見、演劇の現場、という極めて限定された舞台に見えながら、
誰もが人生で通る「選択」の1ページを鮮やかに描き出しているように思え、グッとくる。

そこに、コロナ禍の演劇の製作現場、
という現在の状況をそのまま描いた事で、
色々な感情が平常時以上に増幅されて刺さってくる。


今年の3月から現在までの状況の移り変わりと共に舞台が進む事で、
今の状況がドキュメンタリー的にも描かれていく。

演劇という活動への、祈りと呪いが混濁して舞台に塊で乗ってる印象。
演劇のワクワクとドロドロ、金と芸術、人生のままならなさ、反発し、呑み下して、暗転を迎える。



稼げないけど好きな事が出来る。
お金になるけど自由がきかない。

選択の岐路に立たされた真野が吐く台詞は、痛々しく若い。
そこに、一歩先のステージにいる、仕事として作家・演出家をしている鬼木飛雄(=東谷英人)が、反抗心を失わない大人として絶妙のバランス感覚で舞台上に存在していた。
好きな事を仕事にする人間の覚悟、みたいなものが漂う。

この二人の関係性が観ていてとても面白い。
多くを語らず、後進を背中で導く大人に、
真野は絶好のタイミングで会えたのだろう。

東京夜光はずっと観ていて、
最近二・三作くらいを
「川名くん、大人になったなぁ」(良い意味で)
と思って観ていたのだけれど、
今回は青さと大人さが違う人物として舞台に立ち上がる、ハイブリッドな作。
青さを失わない大人は、強い。

そういう、若者と大人の曖昧な線を超越した、
ベテラン俳優の飲みに行こうおじさん(=草野
峻平)の立ち位置に和む。

ヒロインを演じるアイドルの東みなみ(=砂田桃子)と、鬼木の劇団の劇団員・佐藤信代(=笹本志穂)が、
典型的な「商業演劇と小劇場の分かりあえなさ」みたいな物を初めての出会いで放つが、
お互い憎しみ合うのでなく、
良い感じの関係性に辿り着けたのが個人的にグッときた。
バックボーンは違えど、舞台の上では人と人。

客席が舞台上と地続きに思えるようなセット、視点で、稽古場のヒリヒリした空気感が伝わってくるのもよかった。


要するに、おもしろかった。