『可児君の面会日』
作:岸田國士
初出:1927年3月

「お前は女に似合はず、ドオデモイイニストだね。」
(ドオデモイイニストという言葉センス!)

作家の可児が、面会日を決めた。
月に一回一時間。
自分の誕生日にちなんで毎月十二日。
しかも初めての面会日は彼の誕生日。

客が次々に押し寄せ、それぞれの用事に応対する暇もなく人ばかりが空間に溜まっていき、
何もしてないのに忙しさばかりが高まる、
というおもしろ戯曲。
来客の多くが何か悩みを抱えていることをほのめかすが、それに深くは触れられない。
それがおもろい。
岸田戯曲としては分かりやすく親しみやすい部類。

へとへとに疲れ、じゃあ君は明日、君は明後日、
と、面会日の意味もなく先延ばしにしていき、
最後には一番空気の読めないめんどくさそうな客が
「ゆっくりしていっていいね?」
という幕切れ。

こんなに人がいる所ではちょっと、と皆が可児を廊下に呼び出して話すなど、
「面会日」という機能がまるで活かされない所が面白い、賑やかなドタバタ戯曲。

時折、珈琲をすするだけとかの長い静寂が訪れるのも面白い。

【収録】

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【ネタバレあらすじメモ】

:人物:
可児君(作家)
可児夫人
女中
織部(劇作家・男)
木暮妙(作家志望・若い女)
鳥居冬(木暮の女友達)
駒井(セールスマン)
毛利(大学生・男)
泊(可児の旧友・男)
斎田(編集者)

:所:
一月十二日午後。
極めて平凡な客間兼書斎。

可児君が月に一度、一時間と決めた面会日。
この日は初めてのそれである。
月に一度は少なすぎる、など言う妻に、面会日はこうに限る、と力説する可児。
妻は、夫だけが高い地位に行くようで寂しい。

女中が来客を知らせ、織部が来る。
彼は一番心安い友人で、妻も親しげに応対する。

妻が去ると織部は「ちょっと頼みが」と切り出すが、また来客。織部、話を引っ込める。

やってきたのは作家志望の若い娘・木暮。
鳥居という友人の女性を連れている。
可児は二人に織部を紹介するが知らない様子。
ここで、織部は劇作家で、と説明が入る。
可児は織部に花を持たせようとするが、滑る。

また来客。
名刺を見て、可児は面会日で客がいるから帰ってもらえと伝えるように言う。

妻が来て、名刺の関東土地株式会社の人がどうしても会いたいと言っている、とのこと。
可児は応対に出ていく。
関東土地株式会社の駒井を連れて入ってくる可児。
駒井の用件は、可児の作品中に、売り出し中の武蔵境の土地を登場させてくれ、というものだった。
可児は、作家の行きたいところに主人公も行きたがるとは限らない、と断るが、
織部は食い付き、ストーリーまで披露する。
お礼には土地をくれ、と。
駒井、その積極性に引く。

また来客。
今度は毛利という客。
木暮と鳥居は帰ろうとするが引き留める可児。
織部は女性二人と仲良くなろうとする。

やってきたのは大学生の毛利。
織部を紹介するが微妙な反応。
何か問題を抱えているらしいが…

また来客。
佐伯夫人。
可児は「きっとあの件だろうから、今度こちらから訪ねる」という旨を伝えに出ていく。
織部、客が多すぎるのは月に一度が少なすぎるから、そして十二日という月半ばの数字だから、
と言い始める。
ここから可児は十二という数字が好きだから、という話になり、可児も戻ってきて、
一同で好きな数字を言い合うというどうでもいい会話。おもしろポイント。

また来客。
泊六郎やってきて、可児と間違えて織部に挨拶。
久しぶりらしい。
泊は、可児の今度の小説が自分をモデルにして好意的に書いてくれている、
あんなことをした自分をどうして、
そして君は僕の家内と前に…
と話し出し、
場にそぐわぬ話をしていることに気付く。
編集者がきたようだが、原稿なら今度、と帰す。
可児は泊に皆に挨拶するように言うが、
泊は自分の話しかしない。
編集者、是非会って話したいと言っているそうだ。
可児、やけっぱちでなら上がれと伝える。
毛利や織部が帰ろうとするが引き留め、
木暮と鳥居も引き留め、
帰ろうとする駒井は引き留めない。
逆に駒井に廊下に呼び出される可児。
さっきの件、どうぞよろしく、となり、
その件は明日、と返す。
トイレに入る駒井。
しばらく駒井を待つが、皆のところへ帰る可児。

すると新しい客が既にいる。
亜細亜文学の斎田。
珍しい名字の人にインタビューしにきたと話を進めようとする斎田に、半ギレ気味に「そんなの知らない」と応対する可児。
用件を一つずつ片付けようと、木暮に用件を聞く。
新しく書いた「冬は橇に乗って」というパクりっぽいタイトルの作品を読んで欲しいと渡す。
ではこれでと立ち上がる木暮と鳥居だが、
木暮は廊下に可児を呼び出す。

廊下で話を始めようとすると駒井トイレから出て来て、帰る。
木暮は一身上の重大問題に接していて、可児の意見を聞きたい、詳しくは小説に書いてある、という。
可児はでは明後日、とし、
木暮と鳥居を帰し座敷へ戻る。

毛利の用件はというと、ここではちょっと話せないというので、では織部。
織部もここではちょっと、となり、
では玄関で話そうと移動。

泊、毛利に君は独身か、と訪ね出す。
やってきた可児夫人に、聞かれもしないのに自分の過去を話し出す泊。
昔、可児の金を盗んだが可児はとがめなかった、とかなんとか。
夫人は、今の関係が良好ならそんな話はどうでもいい、とややめんどくさそう。
さっきそこで、子供が馬車にひかれた、と言い出す泊。

玄関から可児の声。
織部の用事は明明後日に聞くことに。
戻ってくる可児。
斎田の用件(珍しい名字インタビュー)はくだらないとはねつける。
毛利の用事は明明後日の次の日に。
あまりの目まぐるしさに疲れ、一同ゆっくり珈琲をすする。

斎田と毛利は帰り、
泊と可児は二人きり。
泊「今日はもう暇なんだろ、ゆっくりしていっていいか」
可児「いいとも」

一番めんどくさそうな客が残った所で、幕。