『世帯休業』
作:岸田國士
1932年1月

「我々夫婦は左の規約に基き、一週間の間、夫婦関係より生ずる一切の精神的物質的負担を排除す。」

倦怠期の夫婦が考案した、
お互いを夫婦という役割から一定期間解き放つ
「世帯休業」システム。
まずこの仕組みが面白い。

関係性から人を解き放つが、
今までそうだったものはそう簡単には、そうでないものには変化できない。
そのズルズルとした面白さに加えて、
夫婦の家の下宿人が審判としてこのゲームに参加することで滑稽さが増す。

この序盤から、中盤・妻が叔父の莫大な遺産を相続するという段になり、
夫婦は「世帯休業」中であるが、
相談をしたくなる。
元の関係に戻りたくなるが、
こうなると他人の「審判」が邪魔になってくる。
遺産が入れば下宿人を置く必要もなくなるので、
審判の詩人への扱いがどんどん邪険になってくる。

わりと急展開のオチを迎えるけれど、
「世帯休業」という仕掛けが光る短編戯曲。


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【ネタバレあらすじメモ】

:人物:
夫・渋谷八十一
妻
詩人・鳥羽
妻の母
若い女・かも子
夫の友人・茶木
八百や


第一場 全て戸締まりをした家の内部

誰もいない下宿先に詩人の鳥羽が帰ってくる。
その後から、主人の渋谷帰ってくる。
明かりがついていなく暗いので、二人は警戒し合う。ここがちょいおもしろ。
その後二人がそれと気付くと、
鳥羽の帰りが随分早かったこと、
渋谷の妻は鳥羽の帰りに合わせて里へ帰って留守であることが分かる。
渋谷は妻に電報を打ちに出かける。

鳥羽が二階で詩を朗唱していると、
渋谷の妻が帰ってくる。
妻は鳥羽に、今は四度目の倦怠期だから、
お互い鳥羽のいない間、世帯休業をすることにしたのだと告げる。

渋谷が戻ってくる。
鳥羽の面倒をどちらが見るかで問題に。
規約、という言葉が出て、鳥羽はそれに興味を持つ。
規約の読み上げ。面白ポイント。
休業期間中は、お互いを夫婦として取り扱わない旨が述べられる。

鳥羽はこれに興味を持ち、自分を規約の判決人にして欲しいと言い出す。遊びに混ぜて欲しいとでも言うようなノリで。
そして鳥羽も加わり、生活が始まる。
炊事は鳥羽の仕事に。


第二場

夫・妻・鳥羽。
夫婦どちらかが規約に触れそうになると鳥羽がエヘンと咳をするコント。
八百屋がやってくる。
鳥羽、適当に野菜を買う。

妻の母がやってくる。
叔父が亡くなりそうで、その遺産五万円(すごい額)が、妻に遺されるという。
夫も興味を持ち話を聞こうとするが、
鳥羽はエヘンをやり、夫を出掛けさせる。


第三場

夜。夫婦が遺産についてこそこそ話す。
足音が聞こえると夫婦は会話をやめ離れる。

鳥羽が現れる。
火種を借りに奥へ。

夫婦、鳥羽の動向を気にしながら遺産の話。
受け取りが一人では心細いからついてきて、という話。
またエヘンが聞こえる。面白シーン。

詩人、妻に、書いた詩を読んでくれと頼み二階に取りに行く。

夫は小説を音読しながら妻と話す。
夫の主張は、金が入ればちゃんとした世帯休業が出来る。
妻の主張は、金が入れば退屈しないから世帯休業の必要はない。
だが夫は、夫婦という役目から解き放たれる事が大切だと説く。

詩人が詩を持ってくる。
夫は大声で小説を読み出し妨害、
詩人はエヘンをするが、妻もたいして読みたくなかったようで、
詩人のエヘンは退けられる。

若い女・詩人のファン・鴨子やってくる。
鴨子は妻と二人で話がしたいと、詩人を二階へ追いやる。
鴨子は、詩人に迷惑している、訪ねてこないで欲しいし、当分訪ねない、ということを妻から伝えて欲しいという。
詩人顔を出すがすぐ引っ込む。
妻は夫にも相談すると二階からエヘンエヘン。

夫の友人・茶木が訪ねてきて、一同を麻雀に誘う。
妻・鴨子も混ざり麻雀が始まる強引な展開(笑)
詩人のエヘンは聞こえ続け、二階からボロい布団が落ちてくるが一同は麻雀を続ける。

旅姿の鳥羽が降りてくる。
引っ越すの?と夫婦。あぁそうですと鳥羽。
誰も出ていくのを止めない。
出ていく鳥羽。
手紙が来てたと顔を出す。
妻の叔父は気が狂っていて、誰にでも五万円やると言っている、本気にするな、という手紙。
一同それを聞いて唖然。

夫は鳥羽に世帯開業を告げ、
鳥羽は下宿人としての力を取り戻し、二階に帰る。

幕