『五月晴れ』
作:岸田國士
1933年6月1日
「女から見れば、男の心理は多少複雑ですよ。僕は、わざゝそうしてるんぢやありません。」
あまりうまくいっていない夫婦のもとを、
仲人が訪れて解決しようと試みる話。
仲人は途中から
「帰るふりをして隠れて二人の様子を窺う」
という、シェイクスピアがよくやりそうな行動に出る。
仲人は小さい子供を連れており、
その子を黙らせるのに苦労したり、
夫婦は彼の悪口を言い出したりと、
台詞はないのだが彼の存在がコミカルに場にある。
そのあたりが面白い。
男と女の言い分の噛み合わなさは、さすが岸田先生である。
夫婦の仲は別居寸前、みたいな所にきていたが、
仲人・児玉の悪口を言ったり、里に預けてきた子供の事を話したりする段階で共通の方向を向いているような描写がある。
微笑を交わし合うまでにはなるが、
根本的な解決にはなっているのやら。
しかし、子供と仲人のおっさんの存在で、ほんわかと終わる。
【収録】
『五月晴れ』青空文庫
『岸田國士全集6』岩波書店

【ネタバレあらすじメモ】
大庭悠吉 三十一
同 空子 二十三
女中かな 二十
児玉的外 五十六
同 初男 十
新聞配達 二十一
五月末の日曜日昼近く
東京郊外のどんづまり
大庭悠吉の住居
大庭家の女中のかなが、御用聞きと話をしている。
妻の空子は、夫の帰りが遅いことに腹をたて、子供を連れて昨夜遅くに出ていったという。
悠吉が帰って来て妻の居所を聞くと、
それとなくはぐらかすかな。
今朝出かけたという小さな嘘。
児玉的外が初男を連れて訪ねてくる。
初男を適当に遊ばせにやって、児玉は話を切り出す。
奥さんから近頃うまくいってないと聞いてやってきた、と。
児玉は二人の仲人だった様子。
児玉は空子からの手紙に書いてあったことが実際にあったことかどうか、確認を始める。
悠吉は、空子が色々嘘を吐くのが気に入らない。
と、空子が帰って来て上に上がっていった様子。
児玉は、空子が顔を出したら自分は帰るから引き留めるな、帰るふりをしてどこかに隠れ、
二人のやり取りを公平に窺うことにする。
と、シェイクスピアみたいなことを言い出す。
空子やってくる。
児玉は彼女に、悠吉は君の言うことを全面的に飲むことにすると言っているから勘弁してやってくれ、と告げ、初男を呼びつけ帰る支度。
初男と共に家を出て、こっそり帰って来て物置の影に隠れる児玉。
大庭は、枯れた植木をどうするか、とか、そこは暖かいか、とかどうでもいいことばかり話す。
児玉は初男をあやしながら、そんな話はよせと合図する。
悠吉、近頃心配事があるんだろうと切り出す。
児玉のお陰で仲直りをする気になったんだ、
と言うと空子は、仲直りなどしたくない、いざという場合に事態が分かりやすいように手紙を出したのだ、と。
いざという場合があるかい?
それはあなた次第。
といった会話。
かな、やってくる。
新聞屋が代金を欲しがっているらしい。
空子は、取るとも言ってないのに入れていったものに代金は払えないと伝えろと言う。
かなが降りていったがなにやらもめる気配。
悠吉、新聞屋と話す。
毅然と追い返す悠吉だが、新聞屋の言により、
妻は昨夜から留守だったことが分かる。
ため息をつき帰ってくる悠吉。
空子は、里へ帰って何もかも話してきたと切り出す。
母は自分の味方だ、父はダメだ、と。
そこから、父と、それから児玉のこととをけなし出す。
悠吉は児玉の存在に気を遣いつつ話をする。
子供の話。
やがて空子は児玉の隠れている物置の方へ近づいてゆく。
悠吉、児玉に危険サインを送るが児玉は気付かず、逆に空子に、
それはなに?と問われる。
ここのごまかし方が面白い。
見つかる児玉。
児玉はさも、いま戻ってきたようなフリをする。
初男は眠っていたが起き、
ケンカ、もう終わっちゃったの?
この人さっきお父ちゃんのことを…
と言いかける。
児玉は子供と無理矢理に相撲を取り出し、黙らせる。
幕。
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