『コリオレイナス』
原題:The Tragedy of Coriolanus
作:ウィリアム・シェイクスピア
「何でも仕来たりどおりにしなくてはならないなら、
昔からの塵あくたが溜まりたいだけ溜まり、
間違いが山のようにうずたかく積もって
真実を覆い隠してしまう。」
シェイクスピア後期のローマ物。
悲劇として書かれた最後の作品だとか。

戦が強く曲げられない男・コリオレイナスが、政治家になるかならないかで周囲が揺れ動く作品。
独裁者誕生を憂い、彼の活動を言葉で妨害する護民官の二人、
デマに踊らされる民衆、
コリオレイナスを「言葉」で守ろうと奔走する友人メニーニアス、
コリオレイナスを完全にコントロールする母・ヴォラムニア、
そして宿敵オーフィディアスなど、
魅力的な人間がいっぱい出てくる。
デマに踊らされた民衆によってローマを追放されたコリオレイナスが、
宿敵オーフィディアスの元に走り軍門に下る姿はグッとくるものがある。
実力があるだけに高慢に陥りやすい主人公と、
真実よりも信じやすい「言葉」に踊らされる民衆との衝突。
それを裏で眺める護民官。
現代でも何ら色あせない関係性が皮肉。
ちくま文庫版ではあとがきで、
「コリオレイナスはマザコンではない」
と河合祥一郎先生が論を展開。
とても面白かった。
6月12日まで、
イギリスのナショナルシアターによるこの演目の上演がYouTubeで無料公開されてた。
トム・ヒドルストン!
【書籍情報】
『コリオレイナス』【Amazonで購入】
訳:松岡和子
2007年 ちくま文庫シェイクスピア全集14
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シェイクスピアをモデルに、
LINEスタンプ「ぴあじ」というのを作ってます。

【ネタバレあらすじメモ】
:第一幕:
第一場 ローマ、街路
飢饉か何かで、民衆が不満を募らせ蜂起、
将軍マーシアスを打ち倒しに向かう。
道中、メニーニアスの説得に会い、納得しかける。
マーシアス(コリオレイナス)登場。
彼の民衆への態度は高圧的。
マーシアスは、民衆を代表する護民官が五人選ばれた、と不満を漏らす。
そこへ護民官たち、ヴォルサイ人がオーフィディアス(マーシアスの宿敵)を首領に屏を挙げたと告げに来る。
マーシアスは司令官コミニアスの下につき出兵することに。
暴徒たちも戦争に使おうとするが、彼らは逃げていく。
民衆を守る護民官に選ばれたブルータスとシシニアスは、マーシアスへの不満を語る。
あれほど傲慢な男はいない、今度の戦争で奴が権力を握るのは面白くない、と。
第二場 コリオライ、元老院
ローマが動いたという報せを受けたオーフィディアス軍は、自軍にスパイがいる事を警戒するも、
進軍する。
第三場 ローマ、マーシアスの邸
マーシアスの母・ヴォラムニアと妻のヴァージリア。
ヴァージリアは戦いに行った夫の身を心配するが、
ヴォラムニアは戦こそ男の証、死んだら名誉、
という態度。
そこへヴァレリアが、マーシアスの戦勝間違いなしの知らせを運んできて、一緒に外に出るように言うが、
ヴァージリアは気分が落ち込んで断る。
第四場 コリオライ、城門の前
ローマ軍の戦況は芳しくなく、一人城門の中に閉じ込められたマーシアスだったが、
再び城門は開き、援軍が突入する。
第五場 前場に同じ
形勢逆転、マーシアスはオーフィディアスを追い詰めるために突き進む。
第六場 戦場
マーシアスが追い詰められたとの報が司令官コミニアスの元に入る。
だがその後形勢逆転したマーシアスがコミニアスのもとに。
一時退却を視野に入れるコミニアスに、
マーシアスはオーフィディアス軍への突貫を提案。
兵の式は上がり、再突撃へ。
第七場 コリオライの城門の前
守備を固めていたラーシアスの軍も進軍開始。
第八場 ローマ軍の陣営の近く
マーシアスとオーフィディアスの対決。
オーフィディアスに援軍が入るが蹴散らすマーシアス。
第九場 前場に同じ
血まみれで手傷を負って、しかし勝利と共に陣に戻るマーシアス。
全軍彼を褒め称え、コリオライを滅ぼした男に、
コリオレイナスの称号が与えられる。
第十場 ヴォルサイ軍の陣営
敗走するオーフィディアスだが、コリオレイナスへの執念は燃えるばかり。
:第二幕:
第一場 ローマ、広場
護民官シシニアスとブルータスが、
マーシアスのことをこき下ろしている。
メニーニアスは我慢ならず二人を侮辱し去らせる。
そこへヴォラムニア、ヴァージリア、ヴァレリア。
メニーニアスは彼女らから、
マーシアス帰還の知らせを受ける。
凱旋したコリオレイナスらを、喜んで迎える一同。
その場に残ったシシニアスとブルータス。
彼らはコリオレイナスが執政官になると立場が悪い。
コリオレイナスが辞退するか、
なったとしても長続きしないことを願いつつ、
いざというときには民衆をたきつけてコリオレイナスを失脚させることを企む。
第二場 ローマ、議事堂の中
コリオレイナスを執政官に推す会議。
彼の功績を司令官コミニアスが褒め称えようとすると、
恥ずかしくて聞いていられないと出ていくコリオレイナス。
呼び戻され、執政官に推薦される事になるが、
しきたりでは民衆に傷を見せ投票してもらわなければならない。
コリオレイナスは、傷は恥、そんな物を見せるような習慣は無くなるべきと主張。
シシニアスとブルータスはこの発言を、
「民衆の権利を取り上げようとしている」
という横暴に解釈して彼を失脚させようと企む。
第三場 ローマ、広場
コリオレイナスの事を噂する市民たち。
ボロをまとったコリオレイナスは早速不満たらたら。
彼をなだめるメニーニアス。
民衆たちがコリオレイナスに話しかけ、
彼は精一杯に媚びていく。
民衆も彼への票を約束するが、
コリオレイナスが去った後に、
ブルータス&シシニアスが登場。
あの男はへりくだっても諸君を馬鹿にしているぞと焚き付け、
民衆は投票を撤回する運動を起こす。
:第三幕:
第一場 ローマ、街路
護民官と共にコリオレイナスに反旗を翻した民衆に対し、コリオレイナスはブチ切れて暴言を吐く。
民衆は彼の極刑を求め衝突。
民衆一時退却後、コリオレイナスも退却。
護民官のもとに、メニーニアスは穏便に裁判を行うように告げ、
護民官は広場で待つと主張する。顔を出さなければ力ずくだと。
第二場 ローマ、コリオレイナスの邸
母・ヴォラムニアから、民衆に謝罪しろ、
望む地位を手に入れるため心に嘘を吐くのだと諭され、広場へ向かう決心をするコリオレイナス。
「合言葉は「穏やかに」」
第三場 ローマ、広場
護民官に煽られ、コリオレイナス、すぐさまカッとなり、追放される。
彼は逆に、自分が貴様らを追放するのだ、世界はここだけではない!
と出ていく。
:第四幕:
第一場 ローマ、城門の前
コリオレイナスは、家族やコミニアス、メニーニアスに別れを告げる。
第二場 ローマ、城門近くの街路
追放に成功した事を喜ぶ護民官に、呪いの言葉を投げ掛けるヴォラムニアとヴァージリア。
第三場 ローマとアンシアムのあいだの街道
ヴォルサイ人と、ローマと戦うローマ人ナイケイナー。
ナイケイナーはローマで起こった動乱を告げ、
攻め込むには絶好の機会だと告げる。
第四場 アンシアム、オーフィディアスの邸の前
オーフィディアスに会いに来たコリオレイナス。
第五場 アンシアム、オーフィディアスの邸
コリオレイナスはオーフィディアスに会い、
ローマへの恨みを語り、
ローマを滅ぼすために自分を使うか、
この場で恨みのために殺すかお前の自由、
と迫る。
オーフィディアスはコリオレイナスを歓迎し、
早速進軍を開始する。
第六場 ローマ、広場
ローマに、コリオレイナスの快進撃の知らせが届く。
貴族たちはだから言ったのだと絶望し、
護民官は嘘に決まっていると自分に言い聞かせ、
愚民たちは追放に賛成はしたが気乗りしなかった、と主張しだす。
第七場 ローマに近い陣営
オーフィディアスは、コリオレイナスが増長し傲慢になってきた事に気付く。
いざとなればどちらかが死ぬことになる、と。
良い場面。
「成功するのが当たり前になると、どんな幸せな男も慢心でよごれてくるものだ。」
:第五幕:
第一場 ローマ、広場
コミニアスはコリオレイナスに嘆願に行ったが冷たくあしらわれ帰ってきた。
護民官たちはメニーニアスを嘆願に向かわせる。
コミニアスが言うに、結果は同じ。
今はあの男の母と妻子の働きにかかっている、と。
第二場 ローマ近くのヴォルサイ軍陣営
メニーニアス、コリオレイナスの元に嘆願に来るも、鮮やかにかわされる。
第三場 前場に同じ
コリオレイナスの母・妻・息子が嘆願にやってくる。
コリオレイナスも心を折られ、ヴォルサイに有利な条件で和睦を結ぶことを決める。
オーフィディアスは、コリオレイナスに同情を示すも、腹に一網打尽ある様子。
第四場 ローマ、議事堂近くの街路
メニーニアス、シシニアスの元に、
コリオレイナスが引き上げるとの知らせ。
第五場 ローマ、城門の前
ヴォラムニアの凱旋を迎える人々。
第六場 コリオライ、広場
オーフィディアスは共謀者とともにコリオレイナス抹殺を企む。
彼に暴言を浴びせ、まんまとキレさせ殺した上で、
それでも彼の高潔さを讃えると宣言、
遺体を担ぐ。
幕
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