『隣の花』
作:岸田國士
1928年4月

「あなたはお隣の花ばかり見てらつしやるのね。」

垣根で隔てられた二軒長屋に住む二組の夫婦が、
庭で交流する話。

_20180914_161108


登場人物は
夫・目木:気配りできる女性が好み。
夫・久慈:若い女が好き。
目木の妻・雛子:若い。
久慈の妻・文子:気配り上手。

お隣同士で、お互いに隣の家の夫・妻を羨む構図で、
それぞれが欲しい要素はお隣の家にある。

ふとした出来事から、
お互いのパートナー交換という
『ママレード・ボーイ』的展開が起きるか?否か?
という所で幕。

庭に出れば、垣根があるが交流可能、
という装置の状況が、もどかしさを引き立てる。

「あなたはお隣の花ばかり見てらつしやるのね。」

という台詞が鮮烈な短編。
上演すると40分くらいだろうか。


【収録】



【ネタバレあらすじメモ】
一
郊外にある二軒長屋の庭。
朝7時、庭で目木、久慈の会話。
お互いの妻について。
目木の妻は若く美しいが、
気配りが不満。
久慈の妻は行き届いた気配り。
久慈は妻に呼ばれ顔を洗いに行き、
入れ替わりに久慈の妻・文子現れる。

目木と文子。
目木は、女と結婚についての持論を展開し、
文子はその論を素敵だと褒める。
自分は間違った結婚をした、と目木は言い、
自分が妻と別れたら、あなたどうします?と、
文子に迫る素振り。
文子は、米が吹き零れるからと引っ込む。
目木の妻雛子、
そんなとこでなにしてんの?と声をかける。


二
舞台同じ。
夕刻。
目木の妻・雛子と、
久慈の妻・文子の会話。
文子は夫が嫉妬深い、時折西洋人みたいになると愚痴。
雛子は逆に、燃え上がるときに燃え上がらない、
と目木を評す。
お互いの花壇の話。
目木は食べ物に文句を言わない、
久慈は口うるさい。

と、久慈が帰って来て、文子引っ込む。
入れ違いに久慈が庭に。
久慈は妻がもう二十九だといい、
若い女に振り回されたいと告げる。
夫・目木が呼ぶ声に、雛子は家の中に。

文子が迎えに現れ、痛烈な一言。
「あなたはお隣の花ばかり見てらつしやるのね。」


三
舞台同じ
数日後の日曜日、午後一時頃

二組の夫婦は一緒に映画に行く模様。
目木はそれより高尾山に行きたいと提案。

支度の遅さと、行き先を巡る口論。
久慈はいらいらしてきて、妻・文子を怒鳴り付ける。
文子泣く。
もう今日は出掛けない、と。

目木は妻・雛子に言いつけられ、買い物に出る。
もうこれで最後だからな、と捨て台詞。

久慈は、妻は一緒には出掛けないと告げるために目木の家へ。
目木はちょうど帰って来て、久慈に出くわす。
とっさに買ってきた足袋を懐にしまう。

目木は仮病を使って、出掛けないことにする。
久慈は目木の妻・雛子と映画に出かけ、
目木は隣の文子が気になって両家を隔てる垣根へと、近づく。

幕