『偽声』
著:藤井清美
2018年 Amazon Publishing

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Kindleで読んだ短編。さくっと読める。

Amazonprimeをうっかり無料体験押しちゃったので試してみた。
Kindleのprimereadingが、
「1ヶ月に同時に10冊まで無料で読める。返却すれば新しいのも可能」
という、図書館みたいなサービスで、
かなり良い気がする。

この小説は、
声優養成所に通う主人公を取り巻く、
「事務所に入れず養成所ジプシー」
という環境を描く珍しげな作品。

年齢も30代に差し掛かり、
仕事にならず、学び続ける。
同年代の仲間たちが次々に辞めていく中、
なんとか踏みとどまる自分。

声優養成所のみならず、
小劇場界にも溢れていそうな「現実」を、
行き場のない思いを描く。
珍しい。夢や希望に溢れていない!

テレビで活躍する友人の声を聴いて抑えられない嫉妬、
なんであんなのがというエグい感想、
辞める友達の気持ちが分かるので安易に止めないシビアさ。

小劇場はまだ、舞台は、極論、誰でも出られる。
そこで喝采を浴びれば継続のモチベーションにもなろう。
仲間と劇団作ってのしあがる道がないでもない。
その分、簡単には出演が決まらない声優界の方が、
状況はよりシビアなのかもしれない。
事務所が決まったとてそれがすなわち仕事に繋がるでもなし。
夢を見続けるには、エネルギーがいる。

夢はおいしいものを食べて色んな場所に行くこと、
という主人公の妹との対比も鮮やかで面白い。
人生には色々ある。

そして、養成所にやってきた舞台俳優の講師との精神的対立。
「先生だってそんなに売れてないでしょ?」
というリアルな声。
その声へのアンサーとしての、
「自分を越えていってほしいから、自分には出来なかった事でも言うようにしている」
というクレバーな答え。

大嫌いな母親との確執と、そこを乗り越えていく姿。

面白い。
主人公が、こりゃ仕事には繋がらなそうだな、という思考パターンから、ようやくスタートラインに立ったともいえる地点に差し掛かる所で物語は終わる。

全日のシビアさをまざまざ見せてくれる、おもしろ短編でした。