『星の王子さま 最後の飛行』
著:ジャン=ピエール・ド・ヴィレル
訳:河野万里子
2003年 竹書房(原語の出版は2000年)
「サン=テックス、あなたは私を飼いならしたのです」
著者がサン=テグジュペリ展に行った時に出会った、
ガイドの話を熱心に聞き涙を流すドイツ人の老人。
声をかけてみると老人は、
胸に抱えてきた重荷を下ろすように、
サン=テグジュペリ撃墜にまつわる体験を語り出す…。

帯に「感動のノンフィクション」と歌ってあったんだけど、これノンフィクションだったら奇跡。
1944年7月31日、
最後の偵察非行に出たサン=テグジュペリは
(オッサンだから回数制限があった)
そのまま帰還することはなかった…
自殺・裏切り・対独レジスタンスへの参加などなど様々な噂が囁かれるなか、
依然謎のままだった真相に迫る。
任務中にサン=テグジュペリに遭遇した、
サン=テグジュペリ大好きドイツパイロットが、
空の上で彼と交わした友情、任務との矛盾、
などなど、熱く張り裂けそうな、行き場のない思いが綴られている。
この作中に登場する、サン=テグジュペリを撃墜したというパイロットは、
いわゆる野蛮な、品性のかけらもないナチ、
として描かれているんだけど、
出版から8年後の2008年には、
マルセイユ沖から引き上げられたサン=テグジュペリの乗機から撃墜したパイロットが特定され、
名乗りを上げているという。
そのパイロットは作中の人物とは名前も異なり、
かつ、
「サン=テグジュペリだと知っていたら撃たなかった」
と証言しているとのこと。
これは、どちらかが何らかの嘘をついている、
あるいはサン=テグジュペリは二人いた、
ということになり、
結局の所謎は謎のままな感がある。
でもそんなことはどうでもよくて、
何が真相にしろ
「サン=テグジュペリを撃ち落としたくない」
という願いが戦争当時の空域に働いていた事は確かなわけで
(実際ドイツ軍には多くのサン=テグジュペリファンがいて、どうか彼の飛行機ではありませんように、と祈りながら戦っていたとか。Wikipedia情報だけど)
その祈りが、こうした物語を生んでいることにもう、フィクションノンフィクション限らず涙腺は崩壊するのだ。
『星の王子さま』は聖書、マルクス資本論に次ぐ世界的ベストセラーだとか。
敵国パイロットにさえ絆を残していった彼は、
いったいどこに行ったのだろうか。
王子さまの星は狭すぎるから、
あの大きなクマさんは住みにくかろうと思いながら、星を見上げる。
この本一人芝居でやったら超絶面白いと思うんですけど、どうですかね。
作者と出会った老人が語る昔話、
という語り口なので、最高だと思うんですけども。
『星の王子さま』読んでることが割と前提で書いてある本なので、
まずは『星の王子さま』を読みましょう。
私も最近朗読で作ったので、よろしければこちらも。
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