『ユスリカ』
脚本・演出:川名幸宏
日程:2019年8月28日〜9月1日
料金:前売3000円/当日3500円
会場:下北沢 小劇場楽園


死ぬほど仲が悪くて大嫌いな姉が、
結婚を控えた妹の所にやってくる。
余命宣告受けた、しばらく住ませてくれ、と。
そこから巻き起こっていく、色んな出来事。

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急にやってくる姉・沙知(砂田桃子)は度々衣装が変わり、その艶やかさとプロットから、
なんとなく
テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』
のブランチさんを彷彿とさせる。
では妹の美知(東澤有香)はステラのようかというとまるで違って、
姉と全力のバトルを繰り広げる。

不意にやってきて妹の周囲に溶け込んでいく様は、
ハロルド・ピンターによくある「侵入者・侵略者」のようであり、
その強引さ、豪胆さは
安部公房の『友達』みたいな味わいもある。

誰もあいつの本性を知らない、という孤立した状態が、うまいこと成立してて面白い。

家族、夫婦、姉妹、恋人。
様々な人間関係が進展・破綻・崩壊・新築・逆転を迎え、
姉という波紋がいくつにも増幅され、
劇終盤にはダイナミックさの出血大サービスになる。
考えうる限りの人間関係がもつれ、それでも破綻を感じないで観ていられる本の力、役者の力。

本当に、何で嫌いなのか原因も思い出せないような事から始まって、
人間は戦争まで起こす生き物なのだ、と見せつけられる。
作中に登場する「バタフライ・エフェクト」という言葉が、見事な支配力を放つ。
狂気の伝染・増幅。こわいこわい。
壊れるものは壊れる。壊れないものは壊れない。
母は強し。

人物たちの一生懸命さが、一周してブラックコメディ的な色彩さえ放ち出す終盤まで、目が離せない。
笑っちゃうけど、笑い事じゃないのだ。

東京夜光の川名幸宏の本は、
前回公演の『世界の終わりで目をつむる』から、
それまでとは決定的に作風が進化してる。
何回か川名の本に出てる身としては、
「大人になったなぁ」
と思う次第。偉そうにまぁ。
戯曲の中で、言いたい事を台詞にしなくなった。
これがテーマだぜ、みたいな主張がなくなった。
その分、「舞台」という全体が、
関係性の変化が、出来事が、
雄弁にそれを語るようになった。
ように思う。
きっとこれからもますますの飛躍を見せてくれるんだろう。
たのしみである。

草野峻平&笹本志穂は、
30歳そこそこなのに、「姉妹と大学生の末っ子長男」のいる家庭の父母を演じる。
演劇の嘘を加味しても、ちょっとどうなのよってなりそうなキャスティングだけれど、
見事に親感があった。
草野のとっておきの武器の効果もあると思うが、
それだけではああは見えない。
あっぱれだと思う。

丸山港都は新しい次元を開拓した感がある。
どんどん色んな役をやればいいと思う。

美知の婚約者・五十嵐大志(寺内淳志)の、良い人感、
自分が規定する「良い人」から自分が遠ざかっていくのを肯定しつつ困惑する自己矛盾が、
おもろかった。


『世界の終わりで目をつむる』
以降使われている、転換のちょい身体表現的な感じも面白い。
コーポリアルマイムをちょっとだけかじった身からすると、
もうちょいなんらかの方法論があってもよい気もする。


9月1日まで。是非。