『ゆで卵の作り方』
原題:POUR PREPARER UN Œuf DUR
作:ウージューヌ・イヨネスコ
1966年
お出入りの乾物屋で、お卵をお求めくださいませ。
この調子で、
卵を買うところから始まって、
茹でる際の器具の選択、
茹でる時間、
茹で上がった後のお召し上がり方までが丁寧にガイドされているモノローグ。
テキストとしての面白さは全くないに等しいので、
このテキストを、わざわざ舞台に上げる、
という行為の面白さ、
とか、
ゆで卵の作り方を延々話されるという状況の面白さ、
芝居を観に来た、という観劇の姿勢と舞台上で起こる出来事の乖離、みたいな事に面白さを見いだすタイプの戯曲?だろうか。
もしくは、テキストと役者の身体の間で矛盾を引き起こす
(卵を作る話をしながら、まるで別の行動をする)
という楽しみ方だろうか。
とりあえず他に思いつかない。
レシピは芸術たり得るのか。
ゆで卵を買うところ作るための非常に丁寧なレシピなので(こんなこと書かなくてもいいだろうって事まで書いてある)
人間の文明が滅びきった後にこの戯曲を手にした生命体が、
もし言語を読めれば、
ゆで卵の作り方の、非常な参考になることは間違いない。

【収録】
『イヨネスコ戯曲全集4』
1969年 白水社
訳:利光哲夫
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