『ジュリアス・シーザー』
原題:Julius Caesar
作:ウィリアム・シェイクスピア
1599年

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「だがおれは北極星のように不動だ、天空にあって唯一動かざるあの星のようにな。」
「おまえもか、ブルータス!死ぬほかないぞ、シーザー!」
アントニーの名演説が有名なシェイクスピア作品。
タイトルのジュリアス・シーザーは、三幕半ばで暗殺されるものの、
「偉大なる存在」として物語の中に影響を与え続ける。

シーザーを暗殺したブルータスを支持していた民衆が、アントニーの演説で途端にアントニー側につき、
ブルータスらを狙い始める様が恐ろしい。

暗殺実行者と名前が同じ、という理由で殺される詩人シナのシーンとか、
扇動された民衆の行き着く果てとしてゾッとする。
ブルータスの妻が変死体で発見された、
とかのエピソードも、デビルマンめいていてぞっとする。
正義、という名の下に振るわれる刃がきらめく。

武力で勝ち取られたかに見えた正義がより新たな独裁へと向かっていく歴史の流れが切ない。

ブルータスが討たれ、
話の時間軸として続く
『アントニーとクレオパトラ』でアントニーが討たれ、
オクタヴィアヌス・シーザーによるローマ帝国が動き始める。

遡るとシーザー暗殺で動いちゃった歴史の歯車が、
どんどんと大きく回っていく様がなんとも。



暗殺の主犯格・キャシアスが高潔なブルータスを暗殺計画に引きずり込もうとする一幕二場。
マクベス夫人とか、イアーゴーを連想させる迫力があり。
暗殺とシーザーへの愛とで引き裂かれるブルータスは、
ハムレットの原型になっている、
なんて話もあるらしい。
(白水uブックスあとがき)

何も考えないで動かされる民衆、おそろしや。


【収録】
『ジュリアス・シーザー』
作:シェイクスピア/訳:小田島雄志
1983年 白水uブックス

【宣伝】
シェイクスピアをモデルにLINEスタンプ作ってます。 _20180811_032159




【ネタバレあらすじメモ】

第一幕

第一場 ローマ、街路
シーザーの凱旋にはしゃぐ民衆を、護民官のフレーヴィアスとマララスが黙らせる。
かつて大ポンペイを賞賛した口で、ポンペイを滅ぼした男を讃えるのか、と。

第二場 広場
シーザーが妻のキャルパーニア、アントニーらと話している。
これから行う競争でアントニーに妻が触れば、子が授かるかも。わいわい。
とそこへ、三月十五日に気を付けろと占い師。
シーザー、相手にせずに去る。

ブルータスとキャシアス、二人きりの会話。
キャシアスはシーザーへの不平を述べ、ブルータスを煽る。
君はローマに王はいらないと言っていたよな、と。
ブルータス、よく考えてみると告げる。
会話中、三度の歓声。

シーザー戻ってくる。
シーザーはアントニーに対してキャシアスの悪口を言い、去る。

キャスカに事情を聞くと、
アントニーが冠をシーザーに三度捧げ、三度シーザーは断り、後にてんかんで倒れたという。
キャスカもキャシアスも、このままではローマが危うい、とブルータスに話す。
キャスカ去り、ブルータスもキャシアスと詳しく話すことを約束し、去る。

キャシアス一人。
シーザーはブルータスを愛している。
俺がブルータスなら簡単には甘言に乗せられはしないだろう。そうだ、ローマ市民がいかにブルータスを讃えているかという手紙を作ってあいつの家に放り込もう。
覚悟しろシーザー。

第三場 街路
キャシアスにシセローが物語る。
火の雨など不吉なことばかり起きているように思える。
シセローと入れ替わりにキャシアス。

キャシアスは、この天変地異はシーザーの圧政を許しているからだと解釈、キャスカと共に決意を固める。
そこへシナ、ブルータスは説得できたかとキャシアスに問う。
キャシアスはブルータスへ、市民からと偽った手紙を届けるようシナに告げる。
血なまぐさい企みも、ブルータスの名さえあれば名誉に変わる、と。


第二幕

第一場 ローマ、ブルータスの邸の庭園
ブルータスは、暗殺の他道はない、との思考になる。
そこへキャシアスら。
シーザー暗殺に関する相談。
「神々に捧げる供えもののつもりで彼に剣をふるおう」とブルータス。
マーク・アントニーも殺すべきとの案が出るが、
シーザーがいなければ彼には何も出来ないと、
却下するブルータス。
一同は明日なんとしてもシーザーを外に連れ出すことを約束し去る。

ブルータスの妻ポーシャ、夫の常ならぬ様子を心配して、悩みを打ち明けるよう告げる。
ブルータスが口を開こうとしたとき、来客。
リゲーリアスが暗殺の仲間に加わる。

第二場 シーザーの邸
シーザーの妻・キャルパーニアは出かけようとする夫を引き止める。
不吉なことが起きすぎている、占いの結果も悪い。
そこへ訪れたディーシャス、シーザーを巧みに誘導し気を変えさせる。
ブルータスらも現れ、シーザーは戴冠のために出発する。

第三場 議事堂近くの街路
教師アーテミドーラス、「ブルータスたちに気を付けろ」という手紙を準備しシーザーを待つ。

第四場 ブルータスの邸の前の街路
ポーシャは、召し使いルーシャスに議事堂の様子を見に行くよう告げる。
そわそわ。おそらくブルータスの計画を聞いた後。
占い師がやってきて、シーザーに警告をするつもりだと告げる。
ポーシャは、ブルータスの計画の成功を願う。


第三幕

第一場 議事堂の前
アーテミドーラスの警告も占い師の注意も届かず、
シーザーはキャスカの刃を始め、暗殺者たちに刺され、死ぬ。
「おまえもか、ブルータス!死ぬほかないぞ、シーザー!」
アントニーは驚いて家に戻るが、すぐにその使いが議事堂に。
アントニーは、理由さえ説明されればブルータスを支持するとのこと。
そしてアントニーやってくる。
シーザーの死を嘆き、俺を憎むなら今殺せと主張。
ブルータスらは彼を敵にするつもりはないとし、
和解を進める。
アントニーは、
シーザーをなぜ殺したのかの理由を説明すること、
シーザーの死体を自身の手で壇上に運び追悼の言葉をローマ市民に発表させること、
の二点を条件に和解し、去る。
キャシアスはこれが危険であるとブルータスを止めるが、
ブルータスは、アントニーの演説の前にブルータスが演説すれば大丈夫、とする。
ブルータスらは去り、アントニー一人。

裏切り者共の前で良い顔をした許しをシーザーに請い、激情を解放する。
そこへ、シーザーから呼ばれていたオクテーヴィアス・シーザーの使者。
アントニーは彼に、今ローマに入るのは危ない、と伝えさせようとするが、
その前に、演説でこの非道が人々の胸に響くかどうか試してからにしようと言い、シーザーの遺体を二人で運ぶ。

第二場 広場
ブルータスとキャシアス、二手に分かれて演説。
「シーザーを愛さなかったためではない、それ以上にローマを愛したためである」
民衆心を打たれる。
ブルータスは去り、続いてアントニー。
ブルータスらの公明正大さを強調しつつ、
彼らの非道を並べる演説。
ついでシーザーへの愛、シーザーの、民衆への遺言状をちらつかせ関心を引き、
シーザーの傷痕を見せ民衆の心を一気に掴む。
シーザーの遺産はローマ市民に分け与えられることとなり、
市民たちは裏切り者の家に火をつけろと去っていく。

オクテーヴィアスがレピダスと共にローマに入った、ブルータスらは凄まじい早さでローマから逃れた、
と使者。
アントニーはオクテーヴィアスたちに会いに行く。

第三場 街路
裏切り者のシナと同名の詩人のシナ、民衆に襲われる。恐ろしい光景。デビルマンである。


第四幕

第一場 ローマのある邸
アントニー、オクテーヴィアス、レピダスが三人で天下三分の話。
レピダス去ると、アントニーは猛烈に彼をディスり始める。
ローマを囲む裏切り者たちを、掃討する策を練る。

第二場 サーディス近くの陣営、ブルータスのテントの前
ブルータスがキャシアスを疑い始める。
「飾り気のないあるがままの誠実には駆け引きはない」
キャシアスは、ブルータスにバカにされたと憤慨している。

第三場 ブルータスのテント
キャシアスが行った賄賂をとがめるブルータス。
それでは我々がシーザーを殺したのは何のためだったのだ、と。
キャシアス、どんどん卑屈になっていく。
「きみはシーザーをもっとも憎んだときでさえ、キャシアスをもっとも愛したとき以上に愛していたのだ」
仲裁に乱入する詩人。
もう和睦は済んでいて追い出される。

酒を飲む。
ブルータスの妻ポーシャの自害、アントニー&オクテーヴィアス軍の増強の知らせ。
酒を飲む。
作戦会議。こちらから打って出るのが上策。
一同解散、ブルータス、休もうとするとシーザーの亡霊。
フィリパイ(戦いの地)で会おうと言い、すぐ消える。進軍の準備。


第五幕

第一場 フィリパイの平原
ブルータス&キャシアスと、
アントニー&オクテーヴィアスの戦前の会談。
キャシアスは不吉な兆候が気になる。
ブルータスとキャシアス、別れを告げて、いざ開戦。

第二場 戦場
ブルータス、オクテーヴィアス軍を狙う。

第三場 戦場の他の場所
オクテーヴィアスが退却。
キャシアス軍、調子にのってたらアントニー軍に囲まれピンチ。
と思い込んでキャシアス自害。
ブルータスその場に到着。
死を悼むのは後回し、戦いに戻る。

第四場 戦場の他の場所
ルシリアス、ブルータスの名を騙りアントニーに捕まる。

第五場 戦場の他の場所
ブルータス自害。
「ブルータスに勝ちえたものはブルータスお一人です」
アントニー&オクテーヴィアスら到着。
ブルータスを讃える。彼だけが、私心ではなくシーザーを討った。
「これこそは人間であった」
幕。