『冬の花火』
作:太宰治
1946年

「女には皆、秘密がある。お前は、それを隠さなかっただけだよ。」
終戦間際に津軽に疎開してきて、そのまま住み続けている数枝と娘の睦子。
娘がろくな生き方をしていないと思っている父、
娘想いの継母、
数枝が東京に出るまで数枝に想いを寄せていた清蔵の、人間模様。
一幕は、娘に対しちゃんと生きろと言い続ける父との会話。
二幕は、夜這いしにきた清蔵とのもめ事。
三幕は、寝込んでしまった母との会話。
二幕後半からの流れが鮮やかすぎて、
終幕近くに突然露呈する救いようのない事実、インパクトある。
相変わらず、台詞で語りすぎる感は強いけれど、
とてもグッとくる戯曲。
上演を観てみたい。
【収録】
『グッド・バイ』著:太宰治
新潮文庫
【ネタバレあらすじメモ】
所。津軽地方の或る部落。
時。昭和二十一年一月末頃より二月にかけて。
第一幕 伝兵衛宅の茶の間。
東京から娘の睦子を連れて帰って来た数枝。
父の伝兵衛は話を切り出す。
お前に今、いい男がいるのが本当か。
だとしたら、東京へそのうち行ってしまうだろう、
その時は、妻のあさ(数枝の継母)が睦子を欲しがっているから置いていってくれないか、と。
本気で?もうろくしたんじゃない?
と返す数枝に、伝兵衛は、そう馬鹿にするな、と。
数枝、お母さんを大好き、同性愛的、と感情爆発させる。
伝兵衛は取り合わず、子供をくれるのかと問う。
伝兵衛の口から語られる、数枝のこれまでの行動。
お前はどこまで堕落していくつもりだ、と。
数枝の夫は戦死したらしく、
今の男のスズキとの関係はどうやら怪しげで、
激しい口論になりかけたその時!
あしが睦子を連れて帰ってくる。
睦子の手には、売られていたという、
冬の、線香花火。
食事の支度になり能天気な数枝にキレる伝兵衛。
数枝は睦子を抱いて去る。
「正気にかえるまで殴らなくちゃいけねえ。」
と興奮する伝兵衛を押し止めるあさ。
第二幕 二階の数枝の居間。
窓を開けて入ってくる清蔵。
彼は昔から数枝のことを想っていた。
返事を聞きにきたのだが、うまくいかないと分かると出刃包丁で脅しにかかる。
部屋のなかで線香花火をするシーン。
あさはそれを全部それを聞いていて、いよいよとなったときに助けに来る。
あさが、数枝にはもう決まった人が、と口走りかけると、清蔵は、
ひどい、みんなに言いふらすと言って出ていく。
あさ、清蔵を殺そうとするが逃げられる。
数枝は、自分の思い人は年下だ、うまくいかない、こうするしかなかった、つらい、
とあさに泣きつく。
第三幕 伝兵衛宅の居間
二幕から十日ほど後。
あの騒ぎ以来倒れて寝込んでいるあさ。
看病する数枝は、恋人・木村に宛てた手紙を母に読んで聞かせる。
そこには、母への愛が、そして、東京に帰らず百姓として暮らすかも、ということが綴られている。
数枝は、もう事件のことはきっぱり忘れて生きていく、あさと共に生きていくと告げるが、
あさは、このまま死にたい。
あの男を殺そうとしたのは、お前のためじゃない、
六年前、ちょうどお前のようにしてあの男に騙されたのだ、女は馬鹿だ、と漏らす。
聞いた数枝、青ざめ、
百姓としてまっとうに生きていく決心も崩れ去り、
東京の男のところに行く、
墜ちる所まで墜ちる、と言い出す。
そこへ、至急を知らせる電報。
「いまの日本の誰にだって、いい知らせなんかありっこないんだ」
幕
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