『序文』
作:岸田國士
1931年2月

_20180914_161108

タイトルからして、何かの序文かと思うが戯曲である。
主な登場人物は作家のプルウストと、
画家のグランジュ。
出てくるのは全員外国人だ。

プルウストとグランジュは昔からの付き合いで、
そのグランジュの本の序文を、プルウストが書いた、ということから始まる物語。

プルウストの周りの人間は、
「なぜあんなパッとしない画家の序文を書いたのか。あなたの言葉には今や誰もが注目しているから、気を付けてもらわないと困る」
と言い、
当のグランジュは、
「昔からの付き合いだからと言って、なぜ自分を過大評価するような文書を書いた?」
と憤る。

本人の気持ちは変わらないはずなのに、
名声や現在の地位が、
変わらない気持ちを歪めていく、
物寂しい戯曲。

病室での対話で、二人の関係がどう動いていくのか、ハラハラする戯曲。

人間の脆さを描いているような、そんな一幕物だ。



【ネタバレあらすじメモ】

パリ。プルウストの病室。
プルウストがジャック・グランジュの本の序文を引き受けた件で、モルビエはプルウストに釘を指している。
あなたの言葉の一言一句は、いまや強い影響を与える、不当な高評価に繋がりかねない、と。
苦い顔のプルウスト。

と、グランジュがやってくる。
プルウストはモルビエを帰らせる。

グランジュは怒っている。
プルウストに、「昔の友達付き合いについて序文に書いてくれ」
と頼んだのに、確かにその部分は素晴らしかったが、
私に花を持たせようと「一人前の画家扱い」をされたのが良くない、と。
自分はそんな大層なものじゃないんだ、と。
そこから次第に思い出話に。

グランジュは、プルウストに、自分を持ち上げたような文章を書かれた事が辛い、
またそのことで、プルウストが「美術を見る目がない」と言われることが辛い。

だがともかく、序文は受け取っておく、
次の本でこの序文に対する反論を書くのが友情に報いるせめてもの行動だ、とグランジュ。
彼は、昔は側にいたプルウストが、今や手の届かぬ眩しい存在になってしまったのが辛いのだ、と洩らす。

プルウストは、子供の頃、君の描く絵を、キラキラした目で見ている人がいたことを書くのを忘れた、すまない、と言い、眠りにつく。

グランジュはそっと部屋を出ていく。