『桔梗の別れ』
作:岸田國士
1930年8月

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30分くらいの短い芝居中、
場が五場ところころ変わる。
車窓から見える景色描写など、
映像の方が映えそうな戯曲。
あるいはリーディング。
テニスコート→列車のプラットフォーム→車内→駅→車内と、上演するとしたらなかなかの場面転換だ。

避暑地に遊びに来てた娘さんに、
二人の男がそれぞれ良いところを見せようとした結果、片方の男が大変な事になる
男2・女2の四人芝居。

ラストシーンは、明確な描写はないが、
おそらく人が一人、転落死して川を流れてきていると察せられる。
同じく川を流れてくる桔梗の花束、
というおそろしうつくしなラストシーン。

『桔梗の別れ』というタイトル、意地が悪い。

【収録】
『岸田國士全集4』1990年 岩波書店

『岸田國士全集(上巻)318作品⇒1冊』岸田國士全集出版委員会




【ネタバレあらすじメモ】

一
避暑地の高原のテニスコートでテニスをし終わった四人。
境笛子と母の杉江。
金津朔郎と酒巻深。
笛子と杉江は明後日帰る様子。

二
避暑地を通る鉄道のプラットフォーム。
母と娘は、良い友達が出来てよかった、と。
娘は、金津には「妹にしたい」酒巻には「嫁にしたい」と言われた事を母に告げる。
と、二人がやってくる。
二人は、乗換駅まで一緒に乗っていくことにしたという。

三
鉄道の二等席。
客は四人だけ。
笛子は窓から見える桔梗を欲しいと言う。
乗換駅で取ってきてあげますと、酒巻。

四
乗換の追分駅。発車までの十分間で、どちらが桔梗を多く取れるか、
二人は競争を始める。
二人の競争癖についての母娘の会話。
と、どこからか金津の、四本取った、の声。
またどこからか酒巻は三本取った、の声。
笛子は酒巻に「三本ぽっちじゃだめ」と告げる。
しばらくして、また声。
金津は桔梗が沢山生えてる所を見つけた。
酒巻は急な崖近くにいるらしい。
「落ちないように気をつけて」と笛子。
電車が到着し、二人は乗り込む。
金津が沢山の桔梗を手にしてやってくるが間に合わなかった。
酒巻はいつまでも戻ってこない。

五
再び電車の中。
鉄橋に差し掛かり下の川を見ると、桔梗の塊が流れてくる。
母は何かを見つけ、「さ、そんなものを見てないで」と娘の視線を窓からそらす。
「母さま、どうなすつたの、そんな恐い顔をして……」
で幕。おそらく桔梗を取る最中に崖から転落した酒巻が流れてきたのだろう。