『冬物語』"The Winter's Tale"
作:ウィリアム・シェイクスピア
1611年

【一度は言いたい名台詞】
「りっぱな行為を一つほめないまま死なせることは、あとに続くりっぱな行為を何千も殺すこと。」
(一幕二場 ハーマイオニ)

「おお、あたたかい!これが魔法なら、魔法も食事同様正当な行為と認めよう。」
(五幕三場 リオンティーズ)

【感想】
『冬物語』は上演を三度くらい観てますが、
まだ本で読んでなかったので。

もう、これ、すごくいい話だな、と毎回思います。
前半の、疑惑・破滅からの
時の語り挟んでの
後半の、赦し・再生。
なんなの、完璧なのシェイクスピア。

と、同時に、死んだ息子可哀想&熊に食われたおっさん可哀想。
という回収されないモヤモヤも残ったりはしますが…。

前半は、シチリアの宮殿での、
『オセロー』さながらの嫉妬に狂う心理劇。
しかも、この物語の王さまリオンティーズは、
イアーゴーに唆される訳でもないのに、
自分で嫉妬に落ちていきます。
友達をもてなしてくれ、って自分で頼んだクセに
「やけにベタベタするな…あれがもてなしなのか?」
と、猜疑心の塊になっていく。
この、嫉妬に狂っていく過程を
「えー!急!」
と思わせないのが、上演の際の必要条件だと思います。
かつてAUNで、吉田鋼太郎さんがやってた時は
「わー!嫉妬に狂いそうこの人!」
と信じられた。

神託を信じない王様、というのもすごい。
ギリシャ悲劇とかでわりと絶対の効力を持ってる感のある神託。
リオンティーズは自分の望まぬ結果が出て、
「神様も間違う事はある」
という暴君ぶりを発揮。
またその直後に、改心する、という
情緒不安定ぶりを見せる、忙しいおじさん。
前半で全てが壊れてからの、
「私は時です」と、擬人化された時の登場、
16年の経過。
始まる後半は、ボヘミアの穏やかな光景、
という、
前半のムードと180度異なる展開。
うーん、面白い。

そして、降り積もったわだかまり、破壊が、
時を経て回復・再生していくこの展開。
冬が過ぎ去り、春が訪れるような、
暖かな雪解けラスト。
好きです、冬物語。

【宣伝】
_20180811_032159
シェイクスピアをモデルに、LINEスタンプを作りました。

【収録】
『冬物語』
訳:小田島雄志
1983年 白水社(白水uブックス)

冬物語 (白水Uブックス (35))

新品価格
¥918から
(2018/9/19 03:28時点)


【ネタバレあらすじメモ】
第一幕

第一場 リオンティーズの宮殿の控えの間
シチリア・リオンティーズ側の側近カミローと、
ボヘミア・ポリクシニーズ側の側近アーキデーマスが話をしている。
二人の王の仲は割きがたく、すごい仲良しなんだよねー、という、
この後関係がズタズタになるのを強調するためのシーン。

第二場 同宮殿の大広間
リオンティーズ、ポリクシニーズ、ハーマイオニ、マミリアス、カミローら。
そろそろ国に帰るというポリクシニーズを引き止めるリオンティーズ。
だが決心は変わらないので、ハーマイオニからも頼むように言う。
ハーマイオニは言葉を尽くし、ポリクシニーズは嫌と言えず。
ここから、嫉妬による疑いの心がリオンティーズに芽生える。
なぜ、俺がいってもダメだったのに。
話す様子を見ればいちゃこいてるように見えてしまう。
一旦友と妻を庭に出し、長台詞。
カミローを呼びつけ、妻の浮気を理由に、
ポリクシニーズ暗殺を命じ、去る。
必ず実行するとは言ったものの、そんなことは出来ないと、
現れたポリクシニーズに現状を告げ、
カミローはポリクシニーズの国へと、
共に逃亡する事を決める。

第二幕

第一場 リオンティーズの宮殿の一室
ハーマイオニとマミリアスが戯れる。
リオンティーズは、カミローとポリクシニーズの逃亡を聞き、浮気と王位を狙う計略を確信、
残ったハーマイオニに罵声の言葉を浴びせる。
ハーマイオニは投獄され、
家臣たちはリオンティーズを止められない。
リオンティーズは強気だ。
アポロンの神殿に、
自分の説を裏付けるため使いも出した。
これで真実が明らかになるだろう、と。

第二場 牢獄
アンティゴナスの妻・ポーリーナが、
ハーマイオニの牢を訪れる。
ハーマイオニは獄中で女の子を出産しており、
ポーリーナはその姫を王に見せ、
心を和らげさせる計画を立てる。

第三場 リオンティーズの宮殿の一室
リオンティーズのもとに、姫を抱いたポーリーナが来て、過ちを正すように説得するが、
まるで聞き入れないリオンティーズ。
彼はアンティゴナスに、姫をどこか国外の荒野に捨ててくるよう命じる。
と、アポロンの神殿への使者が帰還、裁判の準備となる。

第三幕

第一場 シチリアの海港
神殿で神託を受け取ったクリオミニーズとダイオンの二人、帰路を急ぐ。
無論彼らも、王妃の無実を信じている。

第二場 法廷
裁判が行われる。
ハーマイオニを徹底的になじるリオンティーズと、
弁明するハーマイオニ。
裁判中、アポロンの神託が開封され、
ハーマイオニは無実、リオンティーズは暴君、捨てた子供の行方が分からぬうちは、王は後継ぎに恵まれることはない、と出る。
リオンティーズは、「神託は嘘つきだ」
としてそれを認めない。
すると、それと同時に、王子マミリアスが母を思うあまり心を痛めて死んだ、という知らせ。
それを聞いてハーマイオニは気を失う。
リオンティーズは、神の怒りだと、急に改心し懺悔を始める。
だがそこで、ハーマイオニを抱いて退場したポーリーナが再びやってきて、
ハーマイオニの死を告げる。
自分の疑いが招いた結果を悔いる王は、
二人の墓碑に自分の罪によって死んだことを刻み、
毎日祈りを捧げることを誓う。

第三場 ボヘミア、海辺の荒れ地
姫を捨てに来たアンティゴナスは、船でボヘミアにたどり着いていた。
ひどい嵐。
アンティゴナスは夢にハーマイオニが現れるのを見た。
娘の名前は永久に失われたもの、という意味の「パーディタ」としてほしい、と。
その通りにし、彼は持っている限りの金品と共に、その子の素性を記し、
パーディタを捨てる。
と、途端に彼は熊に襲われる。
やってきたのは羊飼い。
パーディタを見つける。
そこに、羊飼いの息子の道化。
彼は熊に食われるアンティゴナスと、沈む船を目撃した。
二人はパーディタと共に金品を発見し浮かれ気分、
パーディタの面倒を見ることにする。

第四幕

第一場
時、が擬人化されて登場し、
16年が経過したこと、ポリクシニーズの息子のフロリゼルの存在、
そしてパーディタが美しく成長したこと、
舞台は美しいボヘミアの地に移ること、を宣言。

第二場 ボヘミア、ポリクシニーズの宮殿
カミローがシチリアに帰るというのを、引き止めるポリクシニーズ。
その前に、息子の様子を変装して探るのを手伝ってくれ、と。
息子のフロリゼルは、羊飼いの家に入り浸っているという。
カミローもそれを承諾。
二人は変装して羊飼いに近づくことに。

第三場 羊飼いの小屋近くの道路
ごろつきのオートリカスがカモを探しているところにやってきた、羊飼いの息子・道化は、
まんまと財布をすられる。

第四場 羊飼いの小屋
フロリゼルとパーディタのいちゃつき、
からの、パーティー開始。
ポリクシニーズとカミローも参加。
オートリカスがあらゆる売り物を売りまくり、
大変な賑わい、歌、踊り。
フロリゼルが、ポリクシニーズを証人にして
パーディタへの愛を誓い出す。
フロリゼルが、父には内緒で結婚しようとしているので、ポリクシニーズは激昂して正体を表し、
絶縁を告げる。
打ち沈むパーディタ。
カミローは二人に、
(自分がシチリアに帰りたいので)
シチリアに、ボヘミア王の使いとして行き、
ポリクシニーズの怒りの冷めるのを待つことを提案。
と、ここへオートリカスがやってくる。
カミローは、オートリカスと王子の服を取り替えることを提案し、
フロリゼルとパーディタは、
人目につかぬよう変装してシチリアに向かう。
カミローはポリクシニーズに、二人のシチリア行きを報告し、
ポリクシニーズと共にシチリアへ向かう腹積もり。
欲望に正直な上に計算高い。
後に残されたオートリカス。
そこへ羊飼いと道化。
羊飼いは、パーディタは自分の本当の娘ではないと王に報告しようとしている。
これを、王子たちの駆け落ちの邪魔になる、と、
いい心を出したオートリカスは、
彼らが王に会いに行かぬよう、
貴族に扮して彼らを脅し、王の許しが欲しいなら自分に任せろ、と告げる。
羊飼いはオートリカスにたんまり金を渡し、王への取り次ぎを頼む。
オートリカスは、こいつらを王子の船に乗せればまだ一儲け出来ると踏んで、
王子とともに、ボヘミアへ旅立つ事となる。
(なんて長い場なんだ)

第五幕

第一場 リオンティーズの宮殿の一室
リオンティーズの後悔ぶり。
ポーリーナは、リオンティーズの再婚を固く禁ずる。
ハーマイオニそっくりの者が現れるまでは、と。
そこへフロリゼル&パーディタ。
さらに、使いがポリクシニーズが二人を捕らえるように言っている、という知らせを持ち登場。
リオンティーズは二人とポリクシニーズの仲を取り持つことにする。

第二場 リオンティーズの宮殿の前
紳士たちが話をしている。
二人の王が再会、
羊飼いの持っていた証拠品により、
パーディタが王女であることが判明したこと、
王たちの喜びよう、
母の死のいきさつの悲しみ、
ポーリーナが製作を頼んでいた、ハーマイオニ像の話、
などなど盛りだくさん。
一同はハーマイオニ像を見に移動した。
オートリカスは、羊飼いを船に乗せたのは自分だから、これも手柄では?と考える。
貴族の身分になった羊飼いと道化が現れ狂喜乱舞。
オートリカスにも優しくしてやる。
この一行も、ハーマイオニ像見物に向かう。

第三場 ポーリーナの家の礼拝堂
皆でハーマイオニの像をみる。
まるで生きてるよう。生きてたー!わー!
めでたい!
ポーリーナ、お前にも夫が必要だ、私が妻を得たんだから、
となり、ポーリーナはカミローと結婚。
さ、めでたい、募る話を、と幕。