『ぬけがら』
作:佃典彦
初演:2005年 文学座アトリエの会

僕が文学座の研究所に入って初めて観た演目で、この劇団おもしろい、と思ったやつ。
その後戯曲を買い求め、
今になってようやく読む。
浮気はばれるわ交通事故起こして仕事は駄目になるわ、妻に離婚届のサインを迫られるわ、母は死ぬわ、父は要介護状態だわの、
人生どん底の40代男性。
その父が、突然脱皮を始め、
10歳単位で若くなっていき、
息子と交流する、という戯曲。
脱皮して若くなるという発想がまずすごい。
タイムトラベルとかでない泥臭さで、
今の男と、若かりし父が交流をする。
やがて天国の母も登場してきたりと、
現実と幻想紙一重の物語。
戦時中の父と母の奇跡の出会い、
そこから生まれた息子、
といういかにも泣かせにくる展開に、
観ていてまんまと泣いたのを覚えている。
親のことって、何も知らない。
親にも若い頃があったなんて、なかなか考えない。
そんな、一番近くの見知らぬ人の行動・言動は、
なにより自分の背中を押してくれるものなのかもしれない。
過去と現在の交錯、
戦後の日本を「親父」を通して描き出す、
暖かな名作。
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【ネタバレあらすじメモ】
#1
男の部屋。
沢山の、年齢がバラバラの男が転がっている。
男の妻がやってきて、離婚届を出し、
男は判を押す。
と、一斉に男たちが喋り始める。
#2
女が男の部屋にやってくる。
さっきまでいた男たちはおらず、
男とその父のみ。
女は離婚届を持って離婚を迫るが、男は巧みに?交わす。
母が死んだばかりなのだ。
「お母さん殺したのはあんた」
郵便局の職を失った男に妻は言う。
葬儀屋の女やってくる。
追善供養の説明。
その期間は離婚などもっての他。
葬儀屋も、妻も帰っていく。
認知症の父とのループ会話。
男は全て失ってしまったことを嘆く。
父はお漏らし、トイレに詰め込む。
セミの声が聞こえる。
冷蔵庫から、若い母が登場。
そして、父の脱皮。
60代に若返る。
#3
妻に父の脱皮を説明する男。
父の記憶は60代時点のもので、話が食い違う様が面白い。
離婚届を求めてきた女だったが、帰る。
父と息子。
郵便局をクビになったのは、
浮気相手と車に乗ってた時に、
バックで子供をケガさせ、しかも、
ウィスキーボンボンで酒気帯びになったという話。
「人間が駄目になるのは…一瞬だ…」
父は、離婚したくないという息子のために一肌脱ぐことが、
自分がこうして若返った意味だ、
と考え、使命感に燃える。
#4
父はまた若くなって50代半ばに。
男は状況に困り果て、妻を電話で呼ぶ。
父、腹が痛いという。
男は、父が50代の頃に胃潰瘍をやったことを思い出す。
でも手術はしたんだろ?
あんたの年ではまだだ、という不毛会話が面白い。
やがて、父と息子の語り合い。
子供の頃の思い出など。
「もっとあんたとちゃんと話しておけばよかった」
という男。
そこへ女(浮気相手)やってくる。
きちんとケリをつけろと、父は出ていく。
男は迷惑そう。
女は、「私の生活も壊れた」と主張。
事故ではねた子供は息子の同級生。
奥さんの不妊は治らないのか?
あなたは妊娠させられるから、
などなど。
そこへ妻がやってくる。
妻がシーツをめくると、二体の父のぬけがら。
女はパニックに。
そこへ帰ってくる、さらに若返った父。
#5
40代に若返った父、妻、そして浮気相手。
三人で踊ったりする、さらに色んな父も、母も現れて、永遠の一瞬、
黄金の瞬間のような風景。
浮気相手帰る。
妻は言う。夫婦はじわじわ壊れていくものかと思ったけど、
ダメになるのは一瞬だった。
妊娠出来なかったのも大きかったかも。
物悲しい雰囲気。
妻はヘアピンを落として帰り、入れ違いに男。
男は父が公園に捨ててきた脱け殻を回収していた。
父は言う。
あの二人はお前よりも前に進んでる、お前は一人だ。
奇跡が産んだ子供がお前とは情けない。
と言いヘアピンを見つめる父。
母へ思いを馳せている様子。
#6
男が短い家出から帰ると、
30代に若返った父が、葬儀屋のお姉さんと情事の真っ最中。
父は、養老院の契約をしてやってくれとごねる。
女は帰る。また来ると父と約束して。
父と男の会話。
男は、蝉の脱皮を初めて見たことを話す。
夜の、神秘的な光景。
父は気持ち悪がって隠れる。
で、姿を現すとさらに若い、
戦後間もない20代の父になっている。
と、家に若い頃の姿の母が来る。
「やっと私に追いつきましたね」と。
そして、父と母の出会い、
一本のヘアピンが起こした奇跡と宿命の、
偶然とたまたまの出来事が語られる。
母はそうめんを作り、
今までの脱け殻全てが起きてくる。
一同に会す、20〜80代までの父6人。
彼らは楽しくうるさくそうめんを食べる。
よくこれだけの親父とやってこれたな、
と言う男に母は、
「好き放題やられました。でも、それで十分楽しかった。」
息子は母に、ごめんなと一言。
#7
冒頭と同じシーン。
そこから少し進んで、父親の昇天と、息子の再出発が描かれる。

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