『ちっちゃなエイヨルフ』
原題:LITTLE EYOLF
作:ヘンリック・イプセン(1828-1906)
1894年

【一度は言いたい名台詞】
「わたしたちは例外なの。永遠の例外なの。変化の法則なんて嫌。とっても我慢できない。わたしはあなたをずっとずっと独り占めしておきたいの。」
「胸が突き刺されるような痛みでここに座ってた…ところが、その最中に、今日の昼メシは何だろうなんて考えているんだ。」
「わたしの血は熱いの。魚みたいな冷たい血の、生きてるのか死んでいるかわからないような人間じゃない。一生、後悔の牢獄で泣きの涙で暮らすなんて、真っ平。もう、わたしのものでない男と。」
「喜びは二人で分け合ってこそ、喜びなんです。」
「アルフレッド、あなた一人じゃないじゃない。」
「それにも、どこか、ぞっとするものがある。」
「そうだ、こんなに辛い思いをしてる。でも時は過ぎていくんだ。どんどん。何もなかったみたいに。」
【感想】
イプセンの本、結構ネチネチしてるイメージあったんですが、
これは割とすっきりしますね。
相変わらず、人物たちが抱える「秘密」
みたいなのはあるんですけど、
この戯曲は、
外からの侵入者に秘密を暴かれる形でなくて、
自ら暴いていく形。
内面にずっとモヤモヤひっかかっていた物が、
ある事件をきっかけに目をそらすことの出来ないプレッシャーになり、
夫婦が打ち明け合い、
不器用だけど前に進んでくような印象。
人に暴かれて破綻が訪れるより、
こうやって喧嘩した方が清々しい気がします。
アルメルス、リタの夫妻と、
その子供エイヨルフ。
アルメルスの異母妹のアスタ、
アスタに恋するボルグハイム、
不吉なネズミババアの六人芝居。
子供の出演、という所さえどうにか出来れば、
どんどん上演したい戯曲でした。
冒頭の、一度は言いたい名台詞にもいくつか引用しましたが、
リタが、やばい女。
やばい、というか、情熱の塊みたいな女で、
この役、この台詞、シビれます。
イプセンおじさんは、
こんな過激な女が好みだったんでしょうかね。
また、結構象徴的な要素があるのが面白いです。
要らない子供を迎えに来るという、妖怪みたいなネズミババア。
また、大きな目がずっと私を見ている、
という、
『ロード・オブ・ザ・リング』
みたいな雰囲気。
面白かった。
【収録】
『ちっちゃなエイヨルフ』
笹部博司の演劇コレクション イプセン編02
2008年 星雲社

【ネタバレあらすじメモ】
三幕。
場所:町から数キロの海岸に面したアルメルス邸
第一幕
夏の朝。
留守にしていたアルメルスが予定より二週早く帰って来た。
医者の勧めもあり、かつ、書き物をするために旅に出ていた様子。
その帰りを歓迎する妻のリタ、異母妹のアスタ、息子のエイヨルフ。
と、そこに鼠ばあさんという変な人現れる。
「余計者がいたら引き取り処分します」
という彼女、今は鼠を笛で引き連れ水に沈めるらしいが、
昔は人間を扱っていたとか。
ハーメルンの笛吹き的な。
エイヨルフは興味を示す。
エイヨルフは、小さい頃にテーブルから落ちて障害が残っている。
アスタから、
母親の残した手紙について、アルメルスに話。内容は明かされない。
近くで工事をしていた土木技師ボルグハイムやってくる。
アスタに話があると連れ出し、
夫婦は二人に。
リタはアルメルスへの激しい思いを語り、
子供も妹も邪魔だと言い放つ。
ボルグハイムとアスタ帰ってくる。
なにやら興奮した様子。
そして、子供が溺れているという声。
一同はそれがエイヨルフではないことを祈るが、
松葉杖が浮いている、という言葉が…。
第二幕
海の見える森の中。
アルメルスとアスタ。
エイヨルフが海に沈んで28時間。
悲しみに暮れるアルメルスをアスタが慰める。
・アスタは男に生まれていたらエイヨルフという名だった
・アスタは子供の頃、エイヨルフと呼ばれていた
リタとボルグハイムがやってくる。
そして、リタとアルメルスは二人になる。
アルメルスはリタに、
「お前が望む通りになった」と告げる。
リタは、
「エイヨルフはアスタになついていた。アスタはあなたが欲しかったけれど叶わないからエイヨルフを奪ったんだ」
「あなたこそあの子を愛していたの?」と。
本を書くのを諦める口実に、エイヨルフを利用したのでは、と。
そして口論になる二人。
エイヨルフがテーブルから落ちた時、
子守りをしていたアルメルスを、リタが誘った。
抱き合っている間の転落。
その罪悪感に、アルメルスは祈る。
アルメルスはリタに信仰を捨てさせていた。
「私も祈りたい、返してよ」とリタ。
エイヨルフのために死ねるかと問いかける二人。
お互い駄目だ。
ならば全てを忘れようと言うリタに、
アルメルスは愛が冷めたことを伝える。
二人の結婚は、アスタのため、という一面があったと告げるアルメルス。
それを聞いたリタは「ちっちゃなエイヨルフでしょ?」
と告げる。
アスタをエイヨルフと呼んでいたことを、
アルメルスは、エイヨルフが落下した時、
リタを抱きながら告げた。報い。
ボルグハイムとアスタ戻ってくる。
アスタとアルメルス、二人きりに。
アルメルスはアスタに甘える。
アスタは、母親の遺したバッグに何が入っていたかを、
自分達はもう兄妹ではないことを告げる。
第三幕
アルメルス家の庭。
アスタはボルグハイムをふる。
アルメルスとリタは、アスタに
エイヨルフの代わりになってくれるよう頼む。
アスタはその願いを振り切り、
ボルグハイムと共に去る。
アルメルスは、一人でまた山に行きたいと告げる。
リタは、アルメルスの本作りに身を半分捧げてでも、
アルメルスと共にいたいと。
下の方で沸き起こる怒号。
喧嘩だ。
それを聞きリタは、
もしアルメルスが行ってしまったら、
そこの子供たちを引き取ってエイヨルフの代わりに育てるという。
アルメルスは、それを手伝いたくなる。
二人の再出発。
幕。
原題:LITTLE EYOLF
作:ヘンリック・イプセン(1828-1906)
1894年

【一度は言いたい名台詞】
「わたしたちは例外なの。永遠の例外なの。変化の法則なんて嫌。とっても我慢できない。わたしはあなたをずっとずっと独り占めしておきたいの。」
「胸が突き刺されるような痛みでここに座ってた…ところが、その最中に、今日の昼メシは何だろうなんて考えているんだ。」
「わたしの血は熱いの。魚みたいな冷たい血の、生きてるのか死んでいるかわからないような人間じゃない。一生、後悔の牢獄で泣きの涙で暮らすなんて、真っ平。もう、わたしのものでない男と。」
「喜びは二人で分け合ってこそ、喜びなんです。」
「アルフレッド、あなた一人じゃないじゃない。」
「それにも、どこか、ぞっとするものがある。」
「そうだ、こんなに辛い思いをしてる。でも時は過ぎていくんだ。どんどん。何もなかったみたいに。」
【感想】
イプセンの本、結構ネチネチしてるイメージあったんですが、
これは割とすっきりしますね。
相変わらず、人物たちが抱える「秘密」
みたいなのはあるんですけど、
この戯曲は、
外からの侵入者に秘密を暴かれる形でなくて、
自ら暴いていく形。
内面にずっとモヤモヤひっかかっていた物が、
ある事件をきっかけに目をそらすことの出来ないプレッシャーになり、
夫婦が打ち明け合い、
不器用だけど前に進んでくような印象。
人に暴かれて破綻が訪れるより、
こうやって喧嘩した方が清々しい気がします。
アルメルス、リタの夫妻と、
その子供エイヨルフ。
アルメルスの異母妹のアスタ、
アスタに恋するボルグハイム、
不吉なネズミババアの六人芝居。
子供の出演、という所さえどうにか出来れば、
どんどん上演したい戯曲でした。
冒頭の、一度は言いたい名台詞にもいくつか引用しましたが、
リタが、やばい女。
やばい、というか、情熱の塊みたいな女で、
この役、この台詞、シビれます。
イプセンおじさんは、
こんな過激な女が好みだったんでしょうかね。
また、結構象徴的な要素があるのが面白いです。
要らない子供を迎えに来るという、妖怪みたいなネズミババア。
また、大きな目がずっと私を見ている、
という、
『ロード・オブ・ザ・リング』
みたいな雰囲気。
面白かった。
【収録】
『ちっちゃなエイヨルフ』
笹部博司の演劇コレクション イプセン編02
2008年 星雲社
![]() | ちっちゃなエイヨルフ (笹部博司の演劇コレクション―イプセン編) 中古価格 |
【ネタバレあらすじメモ】
三幕。
場所:町から数キロの海岸に面したアルメルス邸
第一幕
夏の朝。
留守にしていたアルメルスが予定より二週早く帰って来た。
医者の勧めもあり、かつ、書き物をするために旅に出ていた様子。
その帰りを歓迎する妻のリタ、異母妹のアスタ、息子のエイヨルフ。
と、そこに鼠ばあさんという変な人現れる。
「余計者がいたら引き取り処分します」
という彼女、今は鼠を笛で引き連れ水に沈めるらしいが、
昔は人間を扱っていたとか。
ハーメルンの笛吹き的な。
エイヨルフは興味を示す。
エイヨルフは、小さい頃にテーブルから落ちて障害が残っている。
アスタから、
母親の残した手紙について、アルメルスに話。内容は明かされない。
近くで工事をしていた土木技師ボルグハイムやってくる。
アスタに話があると連れ出し、
夫婦は二人に。
リタはアルメルスへの激しい思いを語り、
子供も妹も邪魔だと言い放つ。
ボルグハイムとアスタ帰ってくる。
なにやら興奮した様子。
そして、子供が溺れているという声。
一同はそれがエイヨルフではないことを祈るが、
松葉杖が浮いている、という言葉が…。
第二幕
海の見える森の中。
アルメルスとアスタ。
エイヨルフが海に沈んで28時間。
悲しみに暮れるアルメルスをアスタが慰める。
・アスタは男に生まれていたらエイヨルフという名だった
・アスタは子供の頃、エイヨルフと呼ばれていた
リタとボルグハイムがやってくる。
そして、リタとアルメルスは二人になる。
アルメルスはリタに、
「お前が望む通りになった」と告げる。
リタは、
「エイヨルフはアスタになついていた。アスタはあなたが欲しかったけれど叶わないからエイヨルフを奪ったんだ」
「あなたこそあの子を愛していたの?」と。
本を書くのを諦める口実に、エイヨルフを利用したのでは、と。
そして口論になる二人。
エイヨルフがテーブルから落ちた時、
子守りをしていたアルメルスを、リタが誘った。
抱き合っている間の転落。
その罪悪感に、アルメルスは祈る。
アルメルスはリタに信仰を捨てさせていた。
「私も祈りたい、返してよ」とリタ。
エイヨルフのために死ねるかと問いかける二人。
お互い駄目だ。
ならば全てを忘れようと言うリタに、
アルメルスは愛が冷めたことを伝える。
二人の結婚は、アスタのため、という一面があったと告げるアルメルス。
それを聞いたリタは「ちっちゃなエイヨルフでしょ?」
と告げる。
アスタをエイヨルフと呼んでいたことを、
アルメルスは、エイヨルフが落下した時、
リタを抱きながら告げた。報い。
ボルグハイムとアスタ戻ってくる。
アスタとアルメルス、二人きりに。
アルメルスはアスタに甘える。
アスタは、母親の遺したバッグに何が入っていたかを、
自分達はもう兄妹ではないことを告げる。
第三幕
アルメルス家の庭。
アスタはボルグハイムをふる。
アルメルスとリタは、アスタに
エイヨルフの代わりになってくれるよう頼む。
アスタはその願いを振り切り、
ボルグハイムと共に去る。
アルメルスは、一人でまた山に行きたいと告げる。
リタは、アルメルスの本作りに身を半分捧げてでも、
アルメルスと共にいたいと。
下の方で沸き起こる怒号。
喧嘩だ。
それを聞きリタは、
もしアルメルスが行ってしまったら、
そこの子供たちを引き取ってエイヨルフの代わりに育てるという。
アルメルスは、それを手伝いたくなる。
二人の再出発。
幕。

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