『恋愛恐怖病』
作:岸田國士
1926年9月

【名台詞】
「僕は、今迄、恋愛の過程でしかないやうな、さういふ友達づきあいほど、異性間の間柄を月並にするものはないと思つてゐました。」
「人間は誰でも、男でも女でも、真剣になると平凡よ。」
「今迄、自分を愛してゐると口に出して云った男には、その場限り絶交を宣言することにしてゐたんだそうだ。」
【感想】
読む度に、
「こいつらめんどくせぇなぁ」
と思う戯曲。
恋愛関係、というのでない男女の付き合いをモットーとする男と女が、
自身の主義と恋心の狭間でめんどくさく揺れ動く戯曲。
どのようにも読めそうで、遊び幅が大きい。
二場目は解明編的要素が強いものの、
ここで登場する別の男が本当のことを言ってる保証もない。
真実は、人それぞれなのかもしれない。
絶対に恋愛関係に踏み込まない男
VS
告白してきた男と絶交する女
という盾矛対決。
めんどくさい戯曲だなぁ(笑)
男二人
女一人
【ネタバレあらすじメモ】
二場の芝居。
一場は夕方頃、砂丘にいる
「なんでもない同士」の男と女の会話。
なんでもない同士と言いながら、
なんでもなくはない感じの関係性。
やがて女がアタックをかけ始めるが、
男はことごとく交わしていき、
最後は女を残して逃亡。
女の求愛を
すみません、と断る男に対して
「誰にわるいの。」
と女。
男はなにかしらの過去があって、
女もそれを知ってる感じかしら。
じゃないと「誰に」って質問はあんまりしなさそうな気が。
二場は翌日の朝。
昨夜と同じ場所に、男と別の男。会話。
別の男は昨夜この場所で女と会い、
結婚したと言ってる。
「彼女は、人知れず、君に心を傾けてゐたらしいんだ。(略)君に先手をうたれることを恐れてゐたんだ。
なぜなら、彼女は、君の告白を冷かに聞き流す勇気がないことを知つてゐた(略)君の腕から逃れる為に、自ら君の腕に飛び込むと云ふ戦法」
という、別の男の口から語られる話によれば、
女はプライドと恋の間で揺れ動き、
結果、
「勝てる見込みは薄いけれど、決して負けない戦法」
を取ったらしい。
告白されたら、「絶交」を切り出せる自信がない。
↓
戒律破り。負け。恋は実る。
告白して成功。
↓
恋は実るが、可能性は万に一つ。
自戒破らず済む。
告白して男が逃げる
↓
可能性高い。恋は失うが、
自戒は破らず済む。
恋では負けても自戒は破らない、プライド。
「僕の懐は、彼女の病院なんだ。」
↑うるせぇ!
「僕と彼女とは永久に「なんでもない」よ。」
↑ある意味での愛の形だろうか。
女がこうしてプライドを守ったのだから、自分も自戒を守ったことに誇りを持つことで、生きていこう的な。
そして別の男の
「一体僕は、女の云ふことは半分だけ信じることにしてゐるんだ。」
という、プライドの欠如した主張に触れることで男はだんだん、別の思想に触れていく。
「全く騙されないといふことは淋し過ぎるよ。」
と聞くに到って、
プライドを守る守らないではなく、
淋しいか淋しくないかという物差しが登場。
それで測ったら淋しいのかもしれない。
それでも、騙されて背負い投げを喰らうようなことも一種の火いたずら、
と、生き方を変えられない男。
一人になり、女の歌った歌を口ずさむと、
波音に紛れて歌声が聴こえてくる。
恋とプライドと喪失の、
曲げられない男と女の話なんでしょうかね。
しかし、
・男が本当に恋心はないケース
・別の男が言ってることが作り話なケースとしても読めそうな戯曲ではあり、
読む人、観る人によって様々な印象が生まれそうな戯曲でした。
私が演出するなら、
最後の歌が返ってくるとこで、
別の男と女が「ドッキリ」の札を掲げて出てくる、
別の男は、女と共謀して、
男の本心を引き出そうとしていた、
というクソみたいな演出をしてみたいですね。
昨夜の別の男と女の会話、
という1.5場を読んでみたく、作ってみたくなる話。
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