『多神教』
作:泉鏡花
昭和2年3月

【声に出して読みたい名台詞】
「石垣を堅めるたむに、人柱と成って、活きながら壁に塗られ、堤を築くのに埋められ、五穀のみのりのために犠牲として、爼に載せられた、私たち、いろいろなお友だちは、高い山、大な池、遠い谷にもいくらもあります。」
男を呪い殺そうとしてた女が、
町の人に見つかっていじめられ、
女神が助けにくる話。
内容としては薄いものの、やはり圧倒的に美しい。
男性登場人物が、見事に俗物しかいない!
女神が出てきてからが本番です。
この女神さま、昔生け贄で捧げられた女性が神になった、とかで、
『夜叉ヶ池』とか『天守物語』とかもそうだったなと思い、
儚くこの世を去った美、
に対する鏡花の祈りみたいなものが、
どの戯曲にもあるなぁ、と。
そして、ノリノリで復讐を手伝う女神の奔放さ。
最後に神様出てきて解決する(デウス・エクス・マキナ)系の戯曲も、
鏡花、多いなと思いました。
神様でないとどうにもならないような、
切迫した何か。
神様来なかったらと思うとぞっとしますね。
この戯曲は今じゃそうそう上演されないんだろうなぁ…。
【収録】
【ネタバレあらすじメモ】
丑の刻参り(五寸釘のやつ)の満願の日までこぎつけた女が、すんでの所で村人に発見され、
司祭などにけちょんけちょんに言われる。
挙げ句、この女の内なる怪を追い出すために、
裸にして市中を引き回せ!
とか、てめぇの欲望混じってないか?な罰を加えられそうになる。
衣服を剥ぎ取られ、あわやの所で神様降臨。
デウス・エクス・マキナ。
丁寧にお参りしてくれたから私はあなたの味方、
と、男を殺し、女を逃がし、
司祭は神が信じられなくなる。
おしまい。

コメント