『クロニック・モノロゲ』
作:岸田國士
1933年

岸田先生、こんなのも書くんだ!
とびっくりした戯曲。
題名の『クロニック・モノロゲ』は、
岸田國士の『序文』(この戯曲を含めて刊行された戯曲集らしい)の前書きによると、
「独白される社会記事」
というような意味らしい。



ほぼ一人芝居。
展開が日本的なオセロー、みたいな印象で、
男の嫉妬と見栄から、
真実が分からなくなっていく感じが面白い。

どこからか聞こえてくる声が、徐々に男の本心を引き出していき…。

これはそのうち、やりたいなぁ。


【ネタバレあらすじメモ】
女が一人、人形を作りながら夫の帰りを待っている。
彼女は病気のようで、
週に一度やってくる医師とはなかなか仲がいいようだ。

ふと、電気が落ち暗くなる。
と、覆面をした男が飛び込んできて彼女に抱きつく。
叫び声と共に動かなくなる彼女。
男は出ていく。

帰ってきた夫。
妻が死んでいるのに気付き、
警察を呼ぼうとするが、
「警察がきたらまず自分が疑われる」
と、さまざまな尋問をシミュレーションし、
それに淀みなく答える練習を始める。

やがて、シミュレーションの尋問者の声は、
明らかに男の声とは異なってきて、
「妻の浮気」
について、男に問いただしていく。
医師と妻の仲がどうも疑わしいことなどを告白した男は、
妻を自分が殺した事を認める。

空間はずっと、犯行が行われた部屋。

男は妻に話しかける。
お前を愛していたのでこうするほかなかった。
すぐにも後を追いたいが、まだ仕事が残っている。医師に一泡ふかせたい。

やってきた医師は状況にびっくり。
男は、浮気という事実があったのかどうかも疑わしくなってきて、
やがて、自殺する。

幕。