『友達・棒になった男』
作:安部公房
昭和62年
新潮文庫

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「友達<改訂版>」
「棒になった男」
「榎本武揚」
解説 中野孝次

を収録した文庫本。
文庫で戯曲が読めるって、本当にありがたい。

友達・棒になった男 (新潮文庫)

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どの戯曲もおもろいのですが、
解説が、また面白かった。

安部公房の言葉
「小説は言語の世界であり、言語はあくまでもデジタルな記号だ。
音楽や美術が最終的にアナログな表現をとるのと、完全に対照的である。

つまり小説もその発想の段階では、きわめてアナログ的なのである。
デジタル表記である言語を、アナログ的に処理することで、
最終的にはもういちどアナログ的なイメージに引き返さなければならない。

たしかに小説のなかのデジタル的な要素は説明も出来るし解釈も可能である。
だがアナログ的要素のせいで、解釈しつくすことは不可能だ。」
文庫『死に急ぐ鯨たち』37ページ

という言葉を引用していて、
日頃、言葉、というのが、どうしても、
音楽とかよりも色んな意味に縛られるなぁ、
と考えている私にとって、とても面白い文章だった。

結局は、言葉を用いているけども、
表現したいのは、その裏側にある
「なんかよくわからん塊」なんだなぁ、と、
一人合点したのである。

意味も大事だけど、意味だけでは仕方ない。
感覚も大事だけど、感覚だけでは仕方ない。
のだ。

『死に急ぐ鯨たち』が気になって、
全集で読んでみたのだけど、
該当部分は文庫の37ページなので、
たぶん作品タイトルは違うっぽいですね。

『死に急ぐ鯨たち』は、
核兵器による抑止という世界の微妙なバランスの話とか、
人間もいつ、鯨のように錯覚から集団自殺へ向かうか分からん。
というような話でした。