『憑きもの―くっついて離れぬ歌』
作:シャルル・クロ(1842-1888)

一人芝居。独白劇、と表記してある。
芝居を観に行ったら、
そこで歌われていた歌に魅了され、
生活のリズム全てがその歌のリズムに支配されるようになってしまった男の話。
独白劇。

なにかの拍子に浮かんできてしまうメロディ、
というのは誰にでもあるもので、
それが忌々しいまでに浮かんでくる事もないわけではない。
そんな「メロディ」に付きまとわれた挙げ句、
口から出る言葉、
イビキの音、
電車の動くリズム、
その全てが「メロディ」
として聞こえてくる。

面白かったことのはずが、
それに支配され、気が狂う。
やがては川に飛び込むにいたる、という、
愉快な悲惨さを持った一人芝居。

歌うとこもあるので、
観てて愉快に違いない。

2007年8月に読んだものの再読。


フランス世紀末文学叢書XII
『室内 =世紀末劇集=』
作:モーリス・メーテルランク、アルベール・サマン、シャルル・クロ
訳:倉智恒夫(メーテルランク)、志村信英(サマン)、川口顕弘(クロ)
1984年 国書刊行会
に収録。