『夏姫春秋』
著:宮城谷昌光
1995年 講談社文庫
初出:1991年 海越出版社

中島敦の『妖氛録』は、
「夏姫(かき)」という傾国の美女が主人公である。
一度朗読カフェライブで朗読したのだが、
それを観てくれたイリュージョン亭素見が、
「是非読んで!」
と貸してくれたのがこの『夏姫春秋』である。

上巻では、夏姫の少女時代から、
夫の御淑、兄の子夷(鄭の霊帝)を亡くし頼るものがなくなる所まで。

だが、この『夏姫春秋』、上巻においては夏姫の出番があまりない。
夏姫の生国である鄭が、
超大国である晋と楚に挟まれ、右往左往する歴史が描かれる。
スポットライトは夏姫の兄の子夷(この兄は、夏姫のことが大好きで、セックスもしている。)と、楚王に強く当たっている。
そして、夏姫が少女時代に子夷を出し抜いて抱いた子宋・子家。
結局この遺恨がねじれて、王になった子夷が暗殺されるわけである。

本当に、歴史物語として面白い。
簡潔な文体の中に、うずまく各人の思惑が現れていて、シブい!

官僚に支配される王の時代に、
優れた君主が登場するも派閥とうまく折り合えなかったりとか、
食べ物の遺恨が捻れて勝ち戦に大敗する、とか、
腐った宮廷で人心を見抜くために馬鹿な王のふりをしたり、とか。

まぁとにかく読み応えがある。

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『妖氛録』の再読用にと読み始めたが、
まだ『妖氛録』のメイン部分には達していない。下巻が楽しみだ。

上巻で染みたのは、
「人を言葉で殺そうとすれば、
その凶刃は、
かならず己の身にはね返ってくる」
という一文。

あと、羊肉を食い損ねた為に自分の主を、
車で敵将に届けた羊シンのロックさ。

楚王かっこいい。

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