『女体』
作:三好十郎
1948年7月9日 放送

「捨てられた方は、そりゃ一度は参るかも知れない。そいでも、その人にそれだけの力があれば、きっと、そのうちには、起きかえる。……やらして見たらいいんだ。ぬいちゃんの選択の前で、国友さんと信三さんとの男同士としてのつかみ合いを。やらしていて、スッと取るの。これ!と云って。ザンコクな事をしないために、実はあんたは、もっとザンコクな、百倍もザンコクなことをしているんだわ…」

25〜6歳の女性、マキとぬいの二人芝居。

二人の男性に挟まれて迷いの果てに何もわからなくなったぬいを、
マキが力強い言葉で励ます。
『女体』のタイトルが示すように、
場所はぬいが逃げ込んだ山奥の温泉の浴場。

女風呂を覗いている感じ、というと激しく語弊があるが、
女同士の腹割った会話、といった感じで、
マキの遠慮のないキッパリとした台詞が清々しい。

また、マキもマキなりに大変な人生を送った結果、人生は意外と面白い、という事に辿り着いた。
という後半シーンも面白い。

浴場の外では変な音がカッポンカッポン鳴り続けている。

面白い。


『NHK放送劇選集 第三巻』/1955年 日本放送出版協会

NHK放送劇選集〈第3巻〉 (1955年)

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【ネタバレあらすじメモ】

山奥の温泉の浴場。
入浴中のマキとぬい。
マキは、東京から飛び出したぬいを探してここに来た。

ぬいは、かつて信三という男と結婚していたが、
信三が戦死したとの知らせが入り、
信三の親友の国友と結婚した。

戦争が終わり、実は生きていた信三が帰還。
信三も国友も、争うことなくお互いに身を引こうとする。
間に挟まれたぬいは、結局どちらを選ぶこともなく、
そもそもどちらがすきだったのかもわからなくなり、一人姿を消していたのだ。

そんなぬいに、マキは上記の台詞を浴びせる。
アフリカの部族は女が男を選ぶんだ、なんて話を引っ張り出す。
もっと、純粋に本能で選べばいい、と。

ひとしきり言った後、
とは言っても、あんた優しいからそこがいいんだよ。そこが好き。
と。
マキは、ぬいに対して浅からぬ憧れを抱えながら育っていた。
離れていても、一心同体に感じる、と。

マキはマキで、心中未遂をしていた事を告白。
色んな事があるけど、人生はなんだかんだ面白い、と。

東京に帰る、というぬい。
ああそう、とマキ。

相変わらず外では変な音がカッポンカッポン。