8割世界 13年目のその��
劇団員の故郷を巡るツアー公演第1弾 東京⇔愛媛（石田依巳架 編）
『ブリッジしたのはカンガルー』
作・演出：鈴木雄太
日程：2015年9月9〜13日
料金：前売3000円／当日3300円
会場：八幡山ワーサルシアター
大人のラブコメを観ているような感じでした。
売れない作家の旦那と、バリバリのキャリアウーマンの妻。
今は別居中だが、
旦那がある日見た予知夢「妻が賞を取れる作品のアイデアを提供してくれる」
を信じ込み、旦那は妻と再び共同生活を始める。
わかっているのは作品のタイトルだけ。
それを頼りに創作を始める二人。
「授賞すれば離婚」という共同の目的の為に、二人は協力して執筆にあたるうち…。
こんな感じの展開がメインの線。
そこに、お笑いコンビの二人の線が微妙に交錯してくるわけなんですが、
もう、これはしょうがない、
私の笑いの感覚はたぶん大分ひねくれているので、
クスリとも笑えず、公演の半分くらい楽しめず、といった具合。
本線がしっかりしていたので楽しめましたが。
ところで、この夫婦のうち、妻を演じたのが
おぼんろのわかばやしめぐみさん。
以前おぼんろの『パダラマ・ジュグラマ』を観たのもワーサルシアターで、
再び同じ劇場で同じ女優さんを観るのは面白いなぁ、なんて思ったんですが。
おぼんろで拝見した時は素敵な方だなぁと思ったんですが、
今回はやけに芝居が、一人だけ浮いているように思えました。
「コメディ」を演じるがあまり説明的過ぎるというか、
顔の表情やら動き方やら、そういう所が外面からかなり固めてあり、
反面、他の出演者の方はそうでもない感じで、
流派が違う何かを観ているようでした。
演技の質感も、一人抜群にコメディ感溢れ。
ただ、その分、内側どうなってるんだろか、という、
内と外のバランスが若干悪かったような気がするのです、観ていて。
「コメディ」を観ているのではなく、「コメディの型」を観ているような、そんな気分。
全員そういう路線なら割り切って観られるのでしょうが、
今回は、達者な余り浮いてしまってる感が感じられたのでした。
歩き方も、抜群にキレイなんです、わかばやしさん。
足を上げて、着地がつま先から綺麗にすーっと降りる。
そのキレイさのあまり、しばらく足元だけ観てしまう時間が出来た程に。
ただ、キレイはキレイなんですが、
キャリアウーマンが、夫と罵り合いの喧嘩をしながら、そんなにキレイに歩くのか
というのは大きな疑問であり、
その辺も達者なあまり何かおかしい
という私の感想に繋がる一因だったように思います。
おぼんろは一度しか拝見していないですが、
独特のファンタジー感を持った作品で、わかばやしさんはその中では見事な調和というか、
劇世界が求める演技の質感にしっかりと応えていらっしゃった。
その分今回の公演では、「一人異世界の人」感が強かったのが残念でした。
小劇場は特に様々なバックグラウンドを持つ役者が集まるので、
今回に限らずこういう事は起こりがちなのかと思います。
世界の質感というか演技のルールみたいな事が、
もう少し意識されても良いのではないか、という感じがします。
そういう仕事は演出家の仕事ではない、演技トレーナーの仕事だ、みたいな話もチラホラ聞きます。
もちろん、少ない稽古期間の中で、演出家がただの
「演技指導の人」と化してしまうのは公演としてはマイナスはなはだしいでしょう。
かといって演技トレーナーみたいな人を雇う資金力やそれにかける時間があるなら
別の事に使いたい、というのもそうでしょう。
じゃあ、誰がどうすりゃいいんだ、となると、
エコの観点から言えば、役者自身がその辺りの感覚を研ぎ澄ましておく必要があると思うんです。
この芝居の空気感に適した「演劇度」はどこか、とか。
「演劇度」は言い換えれば演劇臭さ、とでも言うんでしょうか。
シェイクスピアが必要なのか、平田オリザが必要なのか。
二者ほど極端であれば違いははっきりしますが、
そうでない作品は沢山ある。
自分がどれくらいの「演劇度」を欲しているのか、わかってなさそうな演出家もたくさんいるような気がする。
そんな時は
やっぱり、役者自身が、敏感にセンサー張るしかないと思うんですよね。
あと、演出家や共演者に、
「それちょっとどうなの？」
と言える勇気。
いや、勇気というか、むしろ言って当たり前の事と僕は思うんですが、
やっぱりまだまだ演出家は先生で俳優は生徒、みたいな暗黙のルール、悪習が、
演劇の現場にははびこっていると感じるわけで。
主催者が誰で、金出してるのが誰で、みたいな事はもちろんあるだろうけど、
意見を出すのは出演者としてはむしろすべきことだと思うんです。
その上で、偉い人が「選択」して「決定」すればいい話で。
思った事を飲みこむ必要はどこにもない、
話をした方が面白いもんが作れるし、
それがお客様に対する責任だろうと思うわけです。
演技の質感の辺りから話が大分それましたが、
『ブリッジしたのはカンガルー』
は大人のラブコメみたいで楽しめました、というお話でした。
劇団員の故郷を巡るツアー公演第1弾 東京⇔愛媛（石田依巳架 編）
『ブリッジしたのはカンガルー』
作・演出：鈴木雄太
日程：2015年9月9〜13日
料金：前売3000円／当日3300円
会場：八幡山ワーサルシアター
大人のラブコメを観ているような感じでした。
売れない作家の旦那と、バリバリのキャリアウーマンの妻。
今は別居中だが、
旦那がある日見た予知夢「妻が賞を取れる作品のアイデアを提供してくれる」
を信じ込み、旦那は妻と再び共同生活を始める。
わかっているのは作品のタイトルだけ。
それを頼りに創作を始める二人。
「授賞すれば離婚」という共同の目的の為に、二人は協力して執筆にあたるうち…。
こんな感じの展開がメインの線。
そこに、お笑いコンビの二人の線が微妙に交錯してくるわけなんですが、
もう、これはしょうがない、
私の笑いの感覚はたぶん大分ひねくれているので、
クスリとも笑えず、公演の半分くらい楽しめず、といった具合。
本線がしっかりしていたので楽しめましたが。
ところで、この夫婦のうち、妻を演じたのが
おぼんろのわかばやしめぐみさん。
以前おぼんろの『パダラマ・ジュグラマ』を観たのもワーサルシアターで、
再び同じ劇場で同じ女優さんを観るのは面白いなぁ、なんて思ったんですが。
おぼんろで拝見した時は素敵な方だなぁと思ったんですが、
今回はやけに芝居が、一人だけ浮いているように思えました。
「コメディ」を演じるがあまり説明的過ぎるというか、
顔の表情やら動き方やら、そういう所が外面からかなり固めてあり、
反面、他の出演者の方はそうでもない感じで、
流派が違う何かを観ているようでした。
演技の質感も、一人抜群にコメディ感溢れ。
ただ、その分、内側どうなってるんだろか、という、
内と外のバランスが若干悪かったような気がするのです、観ていて。
「コメディ」を観ているのではなく、「コメディの型」を観ているような、そんな気分。
全員そういう路線なら割り切って観られるのでしょうが、
今回は、達者な余り浮いてしまってる感が感じられたのでした。
歩き方も、抜群にキレイなんです、わかばやしさん。
足を上げて、着地がつま先から綺麗にすーっと降りる。
そのキレイさのあまり、しばらく足元だけ観てしまう時間が出来た程に。
ただ、キレイはキレイなんですが、
キャリアウーマンが、夫と罵り合いの喧嘩をしながら、そんなにキレイに歩くのか
というのは大きな疑問であり、
その辺も達者なあまり何かおかしい
という私の感想に繋がる一因だったように思います。
おぼんろは一度しか拝見していないですが、
独特のファンタジー感を持った作品で、わかばやしさんはその中では見事な調和というか、
劇世界が求める演技の質感にしっかりと応えていらっしゃった。
その分今回の公演では、「一人異世界の人」感が強かったのが残念でした。
小劇場は特に様々なバックグラウンドを持つ役者が集まるので、
今回に限らずこういう事は起こりがちなのかと思います。
世界の質感というか演技のルールみたいな事が、
もう少し意識されても良いのではないか、という感じがします。
そういう仕事は演出家の仕事ではない、演技トレーナーの仕事だ、みたいな話もチラホラ聞きます。
もちろん、少ない稽古期間の中で、演出家がただの
「演技指導の人」と化してしまうのは公演としてはマイナスはなはだしいでしょう。
かといって演技トレーナーみたいな人を雇う資金力やそれにかける時間があるなら
別の事に使いたい、というのもそうでしょう。
じゃあ、誰がどうすりゃいいんだ、となると、
エコの観点から言えば、役者自身がその辺りの感覚を研ぎ澄ましておく必要があると思うんです。
この芝居の空気感に適した「演劇度」はどこか、とか。
「演劇度」は言い換えれば演劇臭さ、とでも言うんでしょうか。
シェイクスピアが必要なのか、平田オリザが必要なのか。
二者ほど極端であれば違いははっきりしますが、
そうでない作品は沢山ある。
自分がどれくらいの「演劇度」を欲しているのか、わかってなさそうな演出家もたくさんいるような気がする。
そんな時は
やっぱり、役者自身が、敏感にセンサー張るしかないと思うんですよね。
あと、演出家や共演者に、
「それちょっとどうなの？」
と言える勇気。
いや、勇気というか、むしろ言って当たり前の事と僕は思うんですが、
やっぱりまだまだ演出家は先生で俳優は生徒、みたいな暗黙のルール、悪習が、
演劇の現場にははびこっていると感じるわけで。
主催者が誰で、金出してるのが誰で、みたいな事はもちろんあるだろうけど、
意見を出すのは出演者としてはむしろすべきことだと思うんです。
その上で、偉い人が「選択」して「決定」すればいい話で。
思った事を飲みこむ必要はどこにもない、
話をした方が面白いもんが作れるし、
それがお客様に対する責任だろうと思うわけです。
演技の質感の辺りから話が大分それましたが、
『ブリッジしたのはカンガルー』
は大人のラブコメみたいで楽しめました、というお話でした。
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