『三人無筆』

葬式の帳付けを請け合った熊さん。
家に帰って夜逃げの準備。
字が書けないのに請け合っちまったから、
恥かくよりは夜逃げした方がいい。

そりゃ駄目だと知恵を絞る奥さん。
他にも帳付けがいるなら、その人にどうにか頼んではどうか、と。
朝早くから行って諸々の準備をし、
他の事は全部やるからどうか字を書くだけはやってくれと頼んでは、と。

そいつはいい、たしか源兵衛さんが一緒に帳付けを請け合った、源兵衛さんに頼もう。

翌朝早く寺に行くと、
既に来て人を待っている者がある。
源兵衛だ。
諸々の準備は済ませた、他にやることは全部やるからどうか字を書くのだけはやってくれ。

源兵衛に先手を打たれた熊さん、
一緒に夜逃げをしようと持ちかける。
いやいや、何か手があるはずだ、
そうだ、帳付けは各々自分でやってくれと言おう、
隠居の遺言だと言えばバレやしない。

かくして参列者は集まってきたが、
参列者の方も字が書けない。
中に易の先生がいて、参列者全員分の代筆を済ませ、一件落着。

と思いきや、遅れてやってきた半公。
こいつもまた字が書けない。

無筆の三人、どうしたもんかと知恵を絞り、
そうだ半公、
おまえさんがここへ来ないつもりにしておこう。


『落語百選 秋』
編:麻生芳伸
1999年 筑摩書房(ちくま文庫)