ラジオドラマ『やまびこ』
作:三好十郎
1947年12月5日 放送

女4人、男2人のラジオドラマ。

ちょうど、放送された1947年頃の日本を舞台にしている。
主人公は、疎開先で親戚に引き取られ暮らす少年。
戦争が残していった爪痕に正面から向き合い、
少年が傷を一つ受け入れる、その日の出来事が描かれている。

30〜40分くらいの作品だろうが、
緻密だ…
これ、聴いてみたい…

まるで複式夢幻能
(旅先で何か妖しげな人に会った旅人が、その人の話を聞くうちに、
妖しげな人は実は何かしら想いを残したまま死を迎えた人で、
旅人に話をする事で成仏する、みたいな展開の能を、
ひっくるめてそう呼んでた気がする。違ってたらごめんなさい、伊藤先生。)
のような、痛みと浄化の物語。

痛く、儚く、美しい。

タイトルの「やまびこ」
から、展開は明らかに予測出来るのだが、
それでも、これが現実であって欲しい、頼むからこのまま終わって、と願わずにはいられない、
なんとも辛い作品である。
それでも前に進んでいく、人間の、美しさ。
人間讃歌です。

放送当時の日本は、どんな気持ちでラジオから流れる物語を聞いていたのだろうか。


『NHK放送劇選集』/1955年 日本放送出版協会

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:あらすじのメモ(ネタバレ):
戦災孤児が多い中、
戦争で父が死に、母が東京大空襲で行方不明になっている少年が、
疎開先で、帰ってくるかもしれない母親を待ち続けている。

疎開先で面倒をみてくれている母の姉にもうまくなじめず、
崖の方に一人行っては、「お母さん!!」と叫び、やまびこと会話をする。

そんなある日、やまびこが返したのは、
「お母さん!!」ではなく、自分の名前を呼ぶ声。
やがて姿を現す母。
そう、生きていたのだ。
姉に会い、今まで息子の面倒をみてくれてありがとうと伝えると、
姉は「てっきり自分の家の子供になるものだと思って、この子の為を思って辛く当たってしまった」
と、本当のところを話す。
母が、息子を東京に連れて帰ると言うと、
荒い気性からは想像もつかぬ落胆ぶり。

母は、息子のたくましく育った姿を見て、涙する。
「お前もここでお百姓になるか?」
そう問いかける母。
やがて二人は、あの、やまびこの場所へ。

「お母さん!」と呼んでみる少年。
息子の名前を呼ぶ母。

しかし、母の声は、母の姉・おとせの声へと変わっている。

そう、少年は、崖で眠りこけて、一時、母の夢を見ていた。
おとせと連れだって家へと帰る少年。
帰り道、少年は、初めておとせの事を「お母さん」と呼ぶ。