『けむり(ラヂオ物語)』
作:岸田國士

「今日の文化の特色は遠いものを近くすること」だと思うから、
「皆さんを時も場所も遠い所に連れて行こう」

というシャレオツな語り出しから始まる。

芝居で日本人が外国物、となると、
やはり一つ何かを飛び越えなくてはならないが、
こういう語りから始まり、
かつラジオドラマ用の本だから、
その辺りうまいなー。
ラジオドラマ「ならでは」にこだわっていた岸田先生の、
これも「ならでは」の切り口。

一人で演じても複数で演じても面白いでしょうね。

イタリアによるチロル割譲を巡る物語。

岸田國士が書く外国もの。興味ある方はどうぞ。青空文庫で読めちゃいます。



:あらすじメモ:
1920年頃のチロル地方。
第一次大戦後、オーストリアからイタリアへと割譲された地に、
イタリアの軍人たちがやってきて国境がうんたら、という話をしている。

そかに住む、一人の少女。
イタリア人の若い将校と若干心を通わせたりするものの、
やはりイタリア人が憎い、怖い。
自分をオーストリアから切り離したイタリア人が。

ある日、イタリア人大佐(この場の代表者)が車で出かけるという情報を耳にした少女は、
針金を一束持って先回り、
車の通り道に張り巡らし、車が通る瞬間にピンと引く。

『名探偵コナン』の最初の方のジェットコースター殺人事件の如く、
大佐は屍となる。

乗り合わせていて偶然助かった若いイタリア人将校に確保された少女は取り調べを受ける。
自分が「いいな」と思った女性を助ける方法はないかと考えるもかなわず、
彼女の銃殺が決まる。



チロルの民衆からはアッパレよくやったの声があがり、
イギリス・フランスの軍人たちの口には、どちらからともなくジャンヌ・ダルクの名前が上がる。



銃殺の日。
窓から刑場の辺りを、落ち着かぬ心で眺めるイタリア人将校。
そこから、ひとすじの煙があがった。