文学座創立75周年記念
文学座5・6月アトリエの会
『ナシャ・クラサ 私たちは共に学んだ -歴史の授業・全14課-』
作:タデウシュ・スウォボジャネク
訳:久山宏一、中山夏織
演出:高瀬久男
期間:2012年5月18日〜6月1日
料金:前売4000円/当日4300円
会場:信濃町 文学座アトリエ
 
タイトルの「ナシャ・クラサ」は「同級生、共に学んだ仲間たち」を指す。
 
ポーランドのある町を舞台に、1920年代から2003年までの年月の出来事を描く。
 
共に学校で学ぶポーランド人とユダヤ人。
ソ連、ナチスドイツと、強者の影響下に置かれ、クラスメートたちは人種の壁に引き裂かれていく。
 
語りを用いる事で劇中の時間はどんどんぶっとび、パワーバランスがあっという間に入れ換わるのが印象的。
それだけ、歴史というものは強者に左右されてきたのだと改めて思わされる。
 
ユダヤ人虐殺が語られるシーンは圧巻。
言葉で生み出される想像力が、客席を震わせた。
素晴らしい台本。
大胆で、スタイリッシュで、骨太。やってみたい。
 
芝居全体も、真摯で良かった。
ただ、全般的に役者が叫び過ぎているというか、パッションだけで演じすぎているようにも思え、
特に語りのシーンなどは、あれだけのエネルギーで押されると逆に離れてしまう人も多いのではと感じる。
語りはむしろ淡々と、冷静に語られた方が客席を引き込みやすいのではないだろうか。
観客の想像力を刺激するには、演者が何かを押し付けるのは効果的でない場合もよくある。
 
 
しかしほんとに、どちらが正義とも悪とも言えない、人間を描いた戯曲だった。
 
アメリカに亡命し、地獄を実際には体験していないアブラム(=采澤靖起)の言葉が、実に正しい、正義の言葉ではあるが、
その言葉こそがこの戯曲におけるもっとも薄っぺらく、軽薄な、傍観者の台詞である点が皮肉である。