『モーツァルトとクジラ』
原題:MOZART AND THE WHALE
監督:ペッター・ネス
出演:ジョシュ・ハートネット、ラダ・ミッチェル、ほか
製作:2004年 アメリカ
上映時間:94分

思った事を素直に言うってのはなかなか難しい。

まして、人に対して言うとなると、
「これは言っちゃまずいか?」
「これ言ったら嫌われるか?」
とか、いろいろと考えてしまう。

こうして発せられた、フィルターにかかった言葉を、
人はまた自分なりに感じる。

「この人はほんとはこんな事思ってない」
「言葉はきついけど優しいな」

これって普通なんだろうか。

コミュニケーションを円滑に成り立たせる上ではやはり欠かせない事ではあるのだろうけど、こうやって人と距離を保つことで失っている何かがあるんじゃなかろうか。

この映画に出てくる人たちは、
人と「普通の」距離を取らない。
アスペルガー症候群の人々を描いたものだ。

自分の話したい話題だけを延々話し続けたり、
相手が好意からした行動にも、
自分が気にくわないと怒鳴りつけてしまったり。
電話しないでと言われれば、どんなに電話したくても我慢してしまうし、
落ち込んでいる人にさらに落ち込む事実を突き付けてしまう事もある。

彼・彼女らにとっては、素直に物を言わない事の方が難しく、
会話の裏を読むなんてことは無理な要求なのだ。

症例は様々だが、
人との距離の取り方が不器用な人たち。
そんな人の集まりを作ったドナルド(ジョシュ・ハートネット)は、そこでイザベル(ラダ・ミッチェル)と出会う。

二人はたちまち恋に落ちるが、
思うがままの二人だから当然衝突する。
それでも、好きな気持ちが二人を結びつけてゆく。

お互いに、思っている事を隠さず言って、
喧嘩して、
仲直りする。

アスペルガー症候群と聞くと、
病名だからどうしてもマイナスイメージがちらつく。
でもそんな彼らが繰り広げる日常は、
オブラートに包まれまくった社会よりも
なんだか健全にすら思える。

むしろ、思ってる事言わない方がよっぽど病気か?

「普通にしてくれ」

ある日ドナルドが放った言葉から、二人は大ゲンカをする。
ドナルドが求めた「普通」は「普通の人」にとっての「普通」であって、
イザベルの普通ではない。
イザベルにとって、そしてドナルドにとっても、
「普通」は普通ではない。

というか、そもそも「普通」ってなんなのか。

この映画、始めは会話に違和感とか感じるんだけど、
観てるうちにだんだんと、
これがあるべき姿なんじゃねぇか?
とすら思えてきちゃうから不思議だ。

イザベルは言う。

「あなたはすごいのよ。個性的なの。素敵よ、自信を持って。」

そう、人とちょっと違うってのは悪いことじゃないんだ。

病気を扱った映画、というより、
人間を描いた作品でした。

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