511f768e.jpg夢幻舞台夏公演
『水着でどうよ 〜愛と重力の反比例の法則〜』
作・演出 山口義晴
2007年8月3〜5日
@明治大学駿河台校舎アートスタジオ

8月2日のことになりますが、夢幻舞台の後輩の芝居を観てきました。
話の内容はよくわからなかったけど、ぞっとするほど気持ちの悪い空気をもったいい芝居でした。
コイントスのように真偽が表裏一体の世界を非常にきつく、抉るように鋭く描いていた。真実と虚構の逆転が非常に面白く、効果的。命をもったマイナスドライバーが、一瞬の暗転を挟んで物質としてのドライバーと入れ替わったりとか、ほんとにすごい。

物語を常に中心で回し続けたのはメガネ(=内山貴規)、モデルは石器ねつ造で一時期話題となったゴッドハンドの人。この人物が、真実を虚構に、虚構を真実に変え、やがて崩壊していく様が非常に繊細に演じられていた。石器ねつ造のプロセスが痛々しい。名声を勝ち得、没落した後のメガネの演技がとてもよかった。もう一度観たい。内山くんは彼が一年の時から芝居を観ているが、今回ほぼ出ずっぱりの役を演じきったことによって何か新境地が開けたのではないかと期待。本人が以前言っていた、「嘘っぽいリアルさ」みたいなものに磨きがかかっていた。今度、「しちふく陣」という劇団の『その時、触れるはナイフとフォーク』という芝居に出るらしいので、ぜひ観に行こうと思う。
そしてこのメガネの虚構を真実に変え続ける手助けをしたのが青(=藤田優子)、彼女は全てを強引なコイントスで決めてゆく。幕切れ間際にこの人物が「すべてを思い通りに操り続けた、私の名は大衆」(とてもうろ覚え)みたいな台詞を言ってて、ほんと気持ち悪い台本だと思った。(気持ち悪いというのはいい意味で。)
元気に笑顔を振りまく意思を持ったマイナスドライバー(=鈴木万里絵)はとても存在感があっただけに、全ての真実が明らかになった後の彼女は悲惨だった。ころんと転がるマイナスドライバーはありったけの哀愁を舞台に充満させていた。
錯乱後のメガネの主治医らしき医者(=傘谷隆潔)は医者なのかなんなのかよくわからない感じが見事だった。
幕切れは、カメラ(=柿原一樹)が芝居のタイトルについて観客に申し開きをするというなんともいえないラスト。
虚構と現実をさらに虚構で包んだような舞台だったが、とても印象に残った。